FG Free Report AIの現状を正しく理解して投資しよう(1月15日号抜粋)

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「ChatGPT」が登場した2022年以降、身近に耳にするようになった「AI」や「生成AI」という言葉。ところが、「AI=生成AI=ChatGPT」という誤解は少なくないようです。「AI」についての知識をブラッシュアップしておくことが、株式投資を行うにあたってとても大切になります。

今回は、「AI」や「生成AI」とは何か、最新の技術はどのようなものが、そしてそれらを踏まえた上で今後私たち投資家が気をつけるべきポイントを、プロのファンドマネージャーがお伝えします。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

「AI≠生成AI」を理解できてる?

CES2024の主役はやはり「AI」だった

1月9日から12日まで、ラスベガスにて世界最大のデジタル技術見本市であるCES2024(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)が行われた。

そしてもちろん、今年のメインテーマは「AI」であった。

ただ忘れてはならないのは、「AI」とは、「生成AI(Generative AI)」のことだけ、或いは「ChatGPT」や「LLM(大規模言語モデル)のことだけを指して「AI」と呼ぶのではないということだ。むしろ「生成AI」は「AI」の一種(一部)であり、CES2024でもその点がはっきりとした。

「AI=生成AI」ではない

2022年にOpenAIからリリースされ、身近な生成AIとしてすでに世界中の人々に浸透した「ChatGPT」。これは、大規模言語モデル(LLM)に基づいており、膨大なテキストデータから学習し、自然言語処理のタスクを実行する能力を持つように作られている。つまり、専用の「コマンド(命令)」を理解しないと使えない存在だったコンピューターが、時を経て、会話をするレベルで答えてくれるという画期的なものとなったのだ。

しかし、「AI=生成AI=ChatGPT」ではない。なぜなら、ChatGPTは生成AIの一種であり、生成AIはAIの一種に過ぎないからだ。つまり強いて言うならば、「AI>生成AI>ChatGPT」となる。これを分かり易く図にしたものを載せておこう。

生成AIには、

  • テキスト生成AI
    • 大規模言語モデルを使用。
    • ChapGPTは、あくまでもこの中の1サービスにすぎない。
  • 画像生成AI
  • 音声生成AI
  • 音楽生成AI

といった非常に幅広い範囲の技術と応用をカバーしている。だが、大規模言語モデルであるChatGPTが最初にとても華々しく異彩を放ち、それを生成AIとも呼んだために、「AI=生成AI=ChatGPT」という誤解が生じたのかも知れない。

上図のように、「生成AI」がまずしなくてはならないことが、「深層学習(Deep Learning)」と呼ばれる機械学習の一種だ。このプロセスにおいては、常に大量のデータを使ってトレーニングを続けないとならないこともあり、基本的にはアクセラレーテッド・コンピューティング※1化された高度なデータセンター内で稼働している。

それはオンプレミス環境と呼ばれる個々の企業などが単独で所有するデータセンター内に所在する場合もあれば、アマゾンのAWSやマイクロソフトのAzure、或いはGoogleのGCSなどのクラウドサービスの中に所在する場合もある。

 

※1アクセラレーティッド・コンピューティングとは、特定のタスクやアプリケーションを高速化するために特化した専用ハードウェアを使用するアプローチを指す。詳細は、以前の無料記事『アクセラレーティッド・コンピューティングとは?』を参照。

ついにAIは、データセンターからエッジ(端末)へ

このように、「ChatGPT」は典型的な大規模言語モデルのAIであり、まさしく「データセンタAI」である。パソコンやスマホのアプリを開いて、インターネットに繋がった環境で使うのが基本形だ。つまり、「AI」自体はデータセンタ内にある。

しかし、AIは必ずしも大規模言語モデルのように常にネットワークに繋がっていなければならない、というわけではない。

というのも、既に訓練されたNPU※2(ニューラル・プロセッシング・ユニット)やニューラル・エンジンがあれば、ある程度のことまではエッジ端末でも処理が可能なのだ。これを、「エッジAI※3という。例えば音声認識・自動翻訳・画像編集ソフトウェア・クルマの自動運転などに活躍するAIもこの分野にあたる。

こうしたものが一気に開花し始めることを予見させた、或いは既に始まっているものをお披露目したのが今回のCES2024だ。そのひとつの代表例として、百聞は一見に如かず、下の画像をクリックして、エヌビディアが今回のCES2024の為に特別に作ったYouTubeをご紹介するので観ていただきたい。

エヌビディア(NVDA)の祖業は、ゲームのグラフィックス処理に特化したGPUの開発だ。そのGPUが機械学習をする上で非常に優れた性能を発揮することから、徐々に技術が進歩し、エヌビディアをAI産業に無くてはならない半導体の巨人に育て上げたのだ。

ただその一方で、近時インテル(INTC)やAMD(AMD)、アップル(AAPL)がNPUに注力し、クアルコム(QCOM)などもスマホ用のCPUであるSnapdragonシリーズにNPUを搭載したものを発表するなど、エッジ側でのエヌビディアの存在が分かり難くなっていたのは事実だ。

そのような中で今回、この特別講演のYouTubeが、あらためてエッジAI分野でエヌビディアの存在感を証明した。加えて、それを明確にした新しいパソコン用のGPUシリーズも発表している。

つまり今、AIはデータセンタの囲いの中から、外にまで飛び出し始めて活躍の場を広げ始めたというのが、正しい現状認識だと言える。

※2NPUとは、AIの推論処理に特化したプロセッサのこと。詳しくは、以前の無料記事『AIの学習と推論とは?』を参照。

※3エッジAIに関する詳しい解説は、以前の無料記事『AIの未来を握る「エッジAI」とAppleの取り組み』を参照。

投資家は、未来を描く能力が問われている

そこでここから問題となるのは、如何にして「AI」関連の投資で成功を収めるかということだろう。

インターネットが爆発的なブームになった、1990年代の終わり。当時は、「第3次産業革命」と呼ばれていた。

そして時が経ち、現在のAIは「第4次産業革命」へと流れを作っている。そんな今、私たち投資家が問われているのは、「未来を描く能力」に他ならない。それも単なる夢語りでなく、現実性のあるものでなければいけない。なぜなら過大に評価し、それが歪んだものだと、赤字企業でも未来に夢があるとばかりに馬鹿馬鹿しいまでのバブルになってしまうし、一方で「それで何が出来るようになるの?」と懐疑的な立場を貫けば、せっかくの好機を逃してしまうからだ。

ならば何を頼りにすれば良いのかと言えば、基本はやはり「ビジネス・トレンド」をきっちりとフォローすることに限る。

これは技術トレンドに近いものでもあるが、ビジネスとして右肩上がりのトレンドが出来上がるためには、そこに人間の欲望に基づく「Wants」の要素がないといけない。それは単純に「こうなって欲しい」「ああなったらより便利だ」といったものから、エンジニア達の知的好奇心や欲求をも含む。

具体例を挙げるとするなら、電気自動車(BEV)が象徴的だろう。BEVがなぜ伸び悩むかと言えば、この右肩上がりのビジネス・トレンドが無いからだ。技術トレンドはあっても、人間の原始的な欲望に基づく「Wants」の要素が無い。言ってしまえば、環境面や政治面からの「Wants」はあっても、BEVにどうしても乗りたい!という人間の根源的な欲望を掻き立ててないからだ。

つまり、これから先の投資には、こうしたAI全体に対する流れを偏りない知識として持ちつつ、投資家がどこまで未来を描けるかが重要であると言えよう。

まとめ

今回は、以下の内容でAIについての理解を深めた。

 

  1. 2024年1月9日から12日まで、ラスベガスにてCES2024(デジタル技術見本市)が行われ、今年の主役は「AI」であった。
  2. 「AI=生成AI」ではない。生成AIはあくまでもAIの一種であり、さまざまなデータ形式(テキスト、画像、音声、音楽)で新しいコンテンツを生成する能力を持つ、多様な技術とアプローチの集合体である。
  3. これまでAIは、アクセラレーティッドコンピューティング化されたデータセンタ内で稼働することが一般的であったが、昨今のNPUやニューラルエンジンの技術革新によってエッジ端末上でも稼働するようになった。
  4. 今回のCES2024では特に、エッジAI分野ではエヌビディアが存在感を見せた。
  5. 現在のAIは「第4次産業革命」へと流れを作っている今、私たち投資家が問われているのは、「現実的に未来を描く能力」に他ならない。
  6. そのためには、「ビジネス・トレンド」をきっちりとフォローすることがいちばんの近道である。

 

「ビジネス・トレンド」をきっちりとフォローする為には、自分自身で可能な限り本物に実際に「触れてみる」ことが大切だ。

とはいえ、実際にはそれはハードルが高いかも知れない。プレミアム・レポートでは可能な限り、これからも会員の皆様に代わって私自身がリアルな「これは凄い」という流れをお伝えしていくつもりだ。

ただご紹介したエヌビディアの動画のようなものは、可能な限り、ご自身でも視聴して欲しい。本家本元が作った動画は、今の旬をきっちりと見せてくれている。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
また、こちらは無料版記事のため、最新の情報個別企業の解説についてはカットしております。
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