新NISAやiDeCoなど、初心者でも簡単に始められるようになった投資活動。しかし投資活動を行うにあたって、注意点はたくさんあります。特に、真偽不明な情報の拡散やアテンションエコノミーが問題視されている現代において、投資の情報収集は難しいものになってしまいました。
今回は、そんな情報の扱い方に関する投資家の心得を、プロのファンドマネージャーがお伝えします。
投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。
(Fund Garage編集部)
納得がいく投資活動のために必要なこと
その情報、正しいですか?
「自作自演」「政府内部からの刺客」「シンゾーの声が聞こえた」…
トランプ元大統領が銃撃を受けた時、どれだけのフェイクニュースが世の中に飛び交ったことだろう。
7月21日、バイデン大統領は次期大統領選挙から撤退することを表明し、カマラハリス副大統領が大統領候補となった。彼女は既に、民主党代議員の指名過半数を獲得したと言われている。
現状、両者の支持率が拮抗する中で、やはり気をつけなければならないのは、情報の本質を如何に見抜くかということだ。フェイクとは言わないまでも、如何わしい情報はすでに多く拡散されている。
重要なことは、可能な限り「一次情報」を辿ることだ。
インターネットが普及し、SNSやYouTubeなど巷には情報が溢れている。もちろん、全てが悪いという意味ではない。ただ、正しい価値ある情報は「無料」では本来手に入らないということを再確認すべきだ。
また、日常生活を豊かに便利に、楽しくしてくれる生成AIは、同時に「偽情報」や「誤情報」を出回り易くもさせている。ChatGPTは平気に理路整然と間違ったことを語り、インスタグラムに投稿されている写真や動画は、本物かAI作成の画像か素人目にはわからないものが沢山ある。
今年、CY2024の投資家としての大きなテーマは、「情報ソースを確認する癖をつける」ということかも知れない。またおかしな情報が入った時は、今度はそれを逆手にとって利用する方法を考えることだ。つまり、「逆張り」の発想である。
例えば、年初のアップル(AAPL)株の急落。
これは、バークレイズのアナリストであるティム・ロング氏が顧客向け発信したノートをきっかけに、市場が過剰反応を起こした結果だ。昨今、このようなケースが後をたたない。
彼は、「iPhone15(の売り上げ)は精彩を欠き、iPhone16も同じような状況になると想定する」と述べた。しかし、面白いことに、目標株価は161ドルから160ドルへ僅か1ドル下げたに過ぎない。またiPhone15の当初売上が奮わなかったという部分は、アップルから発表された数字に基づく判断だと思われるが、iPhone16への評価は「彼の推測」でしかない。何故なら、まだ全く新モデルのスペックなどは発表されていないからだ。
私なら、少なくともこんな時、再度アップルを調べ直してみたいと思う。それは売上とか、世界中のアナリスト達も等しく手に入れられる情報の精査という意味ではなく、アップル製品に関する自分自身の感性などに基づく分析だ。
iPhoneを例にとってみよう。私が今使用しているのはiPhone14 Proであり、もともと2年サイクルで新機種に更新してきたのでiPhone15の購入予定はない。しかしここで、iPhone15 Proへの1世代の進化分でさえも新機種が欲しくなるかを簡単にチェックしてみるのだ。アップルストアに足を運んで、実機を手にしてみる。そして、予定通りiPhone16にまで進化した時に、迷わず店頭に買いに行きそうかを考える。
極めてアナログな、そしてシンプルな方法ではあるが、ある意味では投資成果に対しても、最も納得がいく結果が得られるはずだ。もし「これはiPhone16 Proの登場が待ち遠しいな」と思えるようなら、一部のアナリストによる格下げが理由で売られた局面こそ、絶好の「買いの好機」というわけだ。そこに、フェイクも偽情報も入り込む余地がない。
つまり、身近なものにこそ、最も納得がいく投資ができるチャンスがあるということだ。
数字の「見せ方」に惑わされない
投資を成功させる上で重要なことの1つは、数字、すなわちデータを冷静に読み解くことだ。
よく言われる通り、数字は嘘をつかない。ただ、気をつけないとならないのは、数字自体は嘘をつかなくても、その見せ方で「嘘をつかせる」のが可能である点だ。
それは、
- チャートの時間軸の取り方
- 実数目盛と対数目盛のどちらを使うか
- 何と何を比較するのか
など、様々な手法がある。実際、投資信託の目論見書や販売用資料を見ると「必ず儲かりそう」な数値が謳われているが、実際にその通りになるかと言えば、ならない場合が多い。そして、必ず小さな文字で「過去の実績は将来もそうなるとは限りません」などというディスクレーマーが書いてあったりする。
本来、投資家は、自分自身で数字を操るべきだ。さらに言えば、一度決めたルールはそう簡単に変えないこと。
人間は耳障りの良い話を聞きたがるのと同じで、どうしても都合のいい数字を見つけたり、生み出そうとしたりする。だからこそ、同じものを、同じように、愚直に記録し使い続けるというルールを守ろう。
まとめ
今回は、情報の扱い方に関する投資家の心得についてお伝えした。
- SNSや生成AIが不可欠なこの時代、誤った情報に惑わされないためには、情報の本質を見抜くことが私たちに求められている。
- 具体的には、情報ソースの確認・一次情報の確認・数字の確認が重要。
- 特に身近なものに投資する場合、世界中の投資家やアナリストたちが得られるような情報(企業のファンダメンタルズなど)だけではなく、自分の目で製品を確かめることで、より投資成果に納得がいきやすい。
- 投資成功の秘訣は、自身で数字を操ることである。都合のいい数字を生み出すのではなく、「同じもの」を「同じよう」に「愚直」に記録し使い続けよう。
今回紹介したものは、とても基本的でシンプルだと思われる方も多いだろう。「もっとこうしたら絶対上手くいく!」といった虎の巻のようなものを期待されていたかもしれないが、この「基本的な情報整理」が投資成功の明暗を分けるのだ。逆に言えば世の中には、それができていない人が多いということ。
投資活動は、地味だ。その時その場で一喜一憂するのではなく、地道に、愚直に続けられる者だけが、長い目で見て成功する。
編集部後記
こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます。当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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