ポートフォリオの概況
Fund Garageが国際分散投資用に提案する「リスク中程度のモデル・ポートフォリオ」の10月末までのパフォーマンスは、ドル建てポートフォリオで設定来が月末178.37%となり、前月末の175.44%から騰落率で+1.67%の上昇となりました。円建てポートフォリオは設定来が164.23%となり、こちらも前月末160.57%から+2.28%の上昇です。こちらは為替が107.95円から108.60円まで円安になったことがプラス要因となっています。
アセットクラス別にベンチマークを見ると、新興国株式が+4.22%、先進国株式が+2.54と主にこの二つのアセットクラスがポートフォリオのパフォーマンスを引っ張ったと言えますが、10月について言えば全てのベンチマークがプラスとなっています。ポートフォリオ全体のパフォーマンスがこの二つのベンチマークと比べて見劣りするのは、当然リスク分散の為にその他の資産クラスにも資金を振り分けているからです。
今回はアセット・アロケーションについてちょっとコメントしてみます。
Fund Garageのポートフォリオの特徴は「誰でも簡単に投資可能な金融商品」で誰でも作ることが出来るところです。ファンドラップやSMAの信託報酬のような無駄な手数料を払わなくても済むと言うのが特徴です。
資産クラスは8つに分けて分散しています。その各資産クラスに何%ずつ投資すれば良いのかを決めるのが「アセット・アロケーション」ですが、身近な金融商品でそれが再現出来ないのであれば、数値上のパフォーマンスがどんなに良くても、それは絵にかいた餅です。その代表例がヘッジファンドをアセットクラスとして組み入れるか否かです。
ヘッジファンドを資産クラスの一部とする国際分散投資は欧米では主流ですが、これを日本で行うとすると、実は投資対象が極めて少なく、事実上はポートフォリオを作れません。日本の金融商品市場は、実はかなり遅れているというか、偏っていると言えます。
もうひとつはどのインデックスをベンチマークとしているかという事です。実はこのベンチマーク・インデックス・データの入手の容易性というのも、国際分散投資をする上では極めて大事だと思います。ただFund Garageの場合でも、ひとつの資産クラスのベンチマークを複数のインデックスを利用して合成しているものがあります。それはその資産クラスの特徴をより正確に表現するためです。ただそれでもデータ入手が容易なインデックスを利用しています。
難しいところは、その各資産クラスを何%ずつ保有すれば良いかをどうやって計算するかですが、まずその前に、なぜ計算が必要かということをご説明しておきます。
分散投資の効能は「異なった値動きをする資産クラスを組み合わせることで、リスクひと単位に対して最善なリターンを獲得することにあります。簡単に説明すると「A証券が値下がりしている時にはB証券は値上がりするか、値下がりはしないか、兎に角別々の動き方をするものを組み合わせる」ということです。これはエクセルがあれば簡単に計算できます。
逆に、沢山の証券に分散投資をしたつもりでも、仮にもしそれらの値動きする方向が一緒ならば、分散投資としての分散効果は得られません。だからこそ、ちょっとした計算をした上でポートフォリオを組まないと、「下手の分散、休むに似たり」という「散漫投資」になってしまいます。
クォンツ運用(定量分析)の経験が無いと、実はこのあたりの感覚は分からないかも知れません。教科書的な勉強で病気の内容は頭で理解しているけれど、臨床経験は無いというお医者様と同じかも知れません。アドバイザー選びには充分注意してください。
「パフォーマンスの9割はアセット・アロケーションが決める」と理論的にも証明されていますが、きちんと「計算された」分散投資を行うことが重要です。時々「何となく沢山の資産クラスを混ぜ合わせただけ」のポートフォリオを「充分に分散された」などと自画自賛している例を見たりしますが、分散投資を適当に行うと、寧ろパフォーマンスの悪化に繋がる可能性があります。だからこそ、慣れるまでは専門家の知見を上手く利用した方が良いと思います。当然ですが、その専門家が本物かどうかを見抜くことも大切です。「似非成りすましの専門家」は金融業界ではゴロゴロしていますから。
だからと言って最近流行の「AI(人工知能)」や「ロボット」が必要で、その方が優れているかと言えば、今現在のテクノロジーの段階ではAIやロボットなどは「単なる宣伝用キャッチコピーのひとつ」程度に考えて構わないと思います。私から言わせて貰えば、現時点でAIが出来ることは、普通に専門の人間がすることと殆ど変わらないでしょう。寧ろ過大な期待を素人に抱かせるだけ罪な存在かもしれません。
レントゲンやCT或いはMRIなどの画像検診のデータを、充分にディープラーニングしたAIに解析して貰うのは、慣れたベテランの放射線科医師の診断よりも確度は上がるかも知れません。でもそれに基づく手術まで、貴方はAIロボットにして貰いたいと思いますか?或る意味では似た話です。
Fund Garageの有料会員向けのレポートの中で現時点の「AI(人工知能)」の事を解説しています。何れの将来には「シンギュラリティ」のような世界もあるかも知れませんが、現時点のAIはすべて「他律式システム」(人がプログラミングする)であって、自らAIが新発見をしながらプログラムを書き換えつつ進化する「自律式システム」には至っていません。自律式システムが開発出来るかも空想の世界を抜け出ていません。つまり現時点のAIは「人智を与えて(人がプログラミングする)、膨大な作業をシステムにさせる」というものです。ただ画像認識や音声認識の精度が上がってきたことで、従来は定量化出来なかったものまでがデータ化されて計算対象になってきたというのが今現在の「AI(人工知能)」です。
一方で、アセット・アロケーションなどを決める金融工学の世界で、定量的な有効で優秀なモデルを作ることは、必ずしも利用するデータの種類や量と正の相関関係を持っているとは言えません。平たく言えば、データ数を増やせば増やすほどに、パフォーマンスが良いモデルが作れるかと言えば、そうでもないということです。となれば「AI(人工知能)」を利用した投資判断は、まだ「ある水準以上のファンドマネージャー」程度に考えて良いかと思います。
ただそれも、前述したことと同じで、金融業界には「似非成りすまし」が多いので、本当に優れたAIであるかは検証してみる必要があることも確かです。正直「普通に手でやった方が良いんじゃない?」というAIやロボットと読んでいるものがあるのが事実ですから。
Fund Garageでは、お客様の投資特性に合わせたモデル・アセット・アロケーションをご紹介しています。最終決定は、更にご相談の上で決定します。
10月の市場概況と足許の状況
先月「日経平均株価は9月24日に22,098.84円という最高値を付けています。8月末の終値が20,704.37円ですから「よく上がったなぁ」という声が出ても当然なのかも知れません。」が、タイムマシーンに乗って過去のデータを紐解けば、単純に高いと高所恐怖症になる必要は無いですよということをお伝えしました。
実はその見立ては正しかったようで、10月29日には日経平均株価は22,974.13円まで上昇し、23,000円台回復まであと少しというレベルまで来ています。
一方、米国市場も10月28日にはNYダウが最高値を更新し、月明け11月1日にはS&P500指数とNASDAQ総合が最高値を更新しました。
俗にSOX指数と呼ばれるフィラデルフィア半導体指数も元気よく最高値を更新しています。過去5年間の値動きは下記のチャートの通りです。
フィラデルフィア半導体指数とは、半導体の設計・製造・流通・販売を手掛ける企業の株式で構成される単純平均株価指数のことで、1993年12月1日を基準値100とする半導体関連の代表的な指数です。構成銘柄をリストアップしたのが下記の表です。
ご覧頂ける通り、今の市場が最も注目している大きなビジネス・トレンドである、AI、5G、IoT、エッジコンピューティングなどなどのカギを握る企業がずらっと並んでいます。残念ながら、台湾企業であるファンダリー・ビジネスのTSMCは入っていますが、日本企業は1社もありません。これがある意味では、今の日本の現実だと言えます。
7-9月期の決算発表が米国企業から始まりましたが、実は上記30社の決算は一律ではありません。例えば、21番のテキサスインスツルメンツの四半期決算は惨憺たるもので、同社がコメントで「特に自動車と通信関連が弱かった」などとコメントしたので株価はひやりとさせられる部分がありました。
そもそも今の時代の流れの中で、最も強い筈のこの両分野が弱いわけがないと違和感しきりでしたが、案の定、それは同社固有の問題で、寧ろ技術的な問題で躓いている筈のインテルでさえ市場予想を上回る好決算を発表して市場を沸かせました。データセンターの設備投資が回復してきたということからです。
また半導体製造装置メーカーの決算発表も疑心暗鬼の市場を安心させるのに一役買いました。10月や11月は四半期決算発表のシーズンなので、これらを注視することが投資を成功させる上でも重要なのは間違いありません。
また、このフィラデルフィア半導体指数の構成銘柄が示す様に、残念ながら日本企業はメインプレイヤーでは無くなっています。ならば、米国企業の動向から内容を推し量るというのが有益な方法だと思います。
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