【連載記事】新入行員諸君!リスク商品でござる vol.7「お客様を知る③ リスク許容度」

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はじめに

新入行員/社員の皆さま、社会人になられて丸3週間が経過しましたね。研修もそろそろ佳境を迎えるころなのでは無いでしょうか?そろそろ研修で「リターン」や「リスク」という言葉も耳にはしましたか? もうすぐ実際にお客様を持たれる皆さまに、「新入行員諸君」が少しでもお力になれれば幸いです。

さて、金曜日に更新した「お客様を知る②」はお楽しみいただけたでしょうか? 今回は過去2回続いた「お客様を知る」「リスク許容度」のテーマをまとめた記事となります。リスクという考え方、それも金融業界独特の考え方と、日常生活での考え方には違いがあります。それについてわかりやすく説明していますので、是非お楽しみください。

また、ここまでの内容をお読みいただいてご意見やご質問もあると思います。「正直、ここが全然わからん。」「もっとここを詳しく知りたい。」というご意見も、勿論大歓迎です。(ご意見頂ければ、編集部から主宰に直談判します。

是非ご遠慮なくSNS(TwitterFacebookInstagram)やお問い合わせフォームからご連絡ください!

では、本文をどうぞ。

前回に続いて「リスク許容度」の話。

長期投資ならリスクが取れるって本当?

教科書的には

長期投資ならばリスクが取れる

とよく言われている。しかし本当にそうだろうか?

私も過去に「ライフステージに合わせたリスク商品との付き合い方」について教える某社の通信教育のテキストにはそのように書いた。すなわち若い頃なら、投資期間は長期に亘るのでそれなりなリスクを取ったハイ・リターンが狙える商品を薦めるべきだと。

しかし長期投資だろうと、短期投資だろうと(そもそもその期間の定義自体が曖昧であることは確かだが)、絶対リターンがマイナスになれば、どんなお客様でも笑顔がなくなる。このことを、あとから痛いほど経験で学んだ。

ただ多少の例外があるとすれば、「惜しかったなぁ、あとちょっとだったんだけどなぁ。次は成功させるぞ!」というようなタイプの人だけだ。こういう人は精神的に結構タフである。頭の切り替えが早く、当初の発想を思い出すことで、納得感を得やすい。だからといって勘違いしてはいけない

リスク許容度は高いと言える人でも、失敗(損)をするのが嫌いなのは当然

リスクという言葉の意味

流石にここまでこの連載を読んでくれている人は、

  • 一般生活の中で使う「リスク」
  • 金融の世界で使う「リスク」

この2つが基本的に異なることぐらいは腑に落ちていると思う。だが念のために、再確認をしておきたい。
一般生活の中で使う「リスク」という意味は、日本語訳すると「危険」となる。すなわち損害保険が適用になるタイプの事象である。

しかし、金融の世界で使う「リスク」という言葉の意味は、必ずしも「危険」という一面だけを表していない。強いて言うならば「思い掛けない結果が出た場合の、その振れ幅/出方」とでも言おうか。

「危険」という言葉の語感がネガティブなものであるならば、同程度のポジティブに幸せな結果が出る場合もあるということだ。

サイコロの目の出方で考えてみよう

Q. サイコロを振って出た目の1,000倍の賞金が出るゲームがある。参加料は3,500円だったとしよう。さて、このゲームに参加した場合の損益はどうなるか?

どの目が出るかは6分の1の確率なので、3,500円が理論上の平均値として参加料となっている。(サイコロの目の期待値は3.5なので。)もし4以上が出れば利益が出るが、3以下ならば損失となる。

なので、

  • 1が出れば2,500円の損失。
  • 2が出れば1,500円の損失。
  • 3か4の目が出れば概ねセーフ。
  • 5が出れば1,500円の儲け。
  • 6が出れば2,500円の儲け。

 

これが端的なリスクの考え方で、2,500円損が出るのもリスクならば、2,500円儲かるのもリスクとなる。

すなわち、

理論上の平均値からの振れ幅がリスク

であって、そこにはプラスの時もあれば、マイナスの時もある。このゲームでは、サイコロを一回しか振らない約束なので少々異なる結果となる。だが、実際に投資理論の世界でリスクとリターンの説明をする時は、平均値を中心として3分の2の確率で±リスクの幅に入ると考える。釣り鐘型正規分布に従うというあれであり、±1標準偏差(σ)という計算である。

事故が発生するのは、リターンがマイナスになっている時

前述したように、私の経験から言えば、

絶対リターンがマイナス(元本割れ)になれば、どんなお客様でも笑顔はなくなる

そして、

そこをご納得頂けるまで説明するのがリスク商品販売上の難しさだ

とあるアンケートデータが示すように、一度は資産運用をしたことがある人の3分の1は資産運用をしなくなっている。つまり痛い目を見てしまったという事である。儲かっているのに止める人はまず居ないのだから。

だからこそ、

過去の取引実績をベースに、お客様のリスク許容度を測定してはいけない。

「投信?買ったことあるわよ。良いファンドだ、良いファンドだと熱心に勧められたから買ってみたけど、大損しちゃったわ」というお客様は五万と居る筈。

何故なら、算出方法の変更はあれど、日経平均株価は1989年12月末の38915.87円を30年以上経っても未だに株価は取り返していないのだから。間違いなく、損失を抱えたまま手仕舞った方は沢山いらっしゃる。だからこそ、過去の取引実績は当てにはならない

絶対覚えてほしいリスク許容度のポイント

① リスクとは、「プラスとマイナスの両方に期待収益が振れる話」というのは投資理論の世界にいる人達だけの常識。

② どんなお客様でも、損失が出ることを心から許すことは無い。

③ リスクに対するお客様の考え方、懐の深さは多種多様。過去の取引実績だけでそれを推し量るのは土台無理。

④ 正確な知識を元に、こっちの業界の常識を何とかご理解頂くのが肝要。

どうしてそのお客様は過去にその商品を買い、その商品を保有している間に何を思い、そしてなぜ最終的に手放されたのか、或いはまだ持ち続けられているのかという話は、是非、何としてでも聞き出すべき。

またそうした話の中で聞き出すべき他のポイントについては、次回以降に綴ろう。

おわりに

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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ではまた次回の記事でお会いしましょう。

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vol.8「コンポージャー」

(編集:Fund Garage 編集部)

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