どんな銘柄をお探しですか? “面白い銘柄”って、なんですか?

Facebook
Twitter
INDEX

どんな株をお探しですか?

以前、業界の仲間と飲んでいて「もう現役のファンドマネージャーじゃないから、久し振りに自分の口座で株を買ったよ」と銘柄を打ち明けた。

それを聞いた仲間の反応は「つまんない。当たり前すぎて面白くない」とのコメント。実はこのコメントこそ、筆者がファンドマネージャーとして4,000億円ものポジションを持って運用していた頃からよく出くわす不思議なコメントの一つだ。

元々は定量分析を行うクォンツ・タイプのファンドマネージャーとしてデビューしたが、1994年に「さくら日本株オープン」を開発する頃から、個別企業については直接現地・現場に赴いて、CEOなどの要人へのインタビューや、社食潜入(会社の雰囲気が一番よくわかる)などの調査をしてから投資するファンドマネージャーとなった。典型的なボトムアップ・タイプの運用スタイルだ。またそれが得意だったし、これが実に楽しかった。

長年調べまくって大好きな会社たちなのに・・・

その時、仲間に打ち明けた銘柄は米株が3つ、シアトルの会社と、サンタクララの会社と、サンディエゴの会社がひとつずつだ。どれもCEO、CFOなどに会ってインタビューをし、カフェテリアでサンドイッチをご馳走になったりした会社。だから、私にとってはとっても親しみのある会社であり、大好きな株主になりたい会社たちだった。

まあ、いつもこういう銘柄選択の方法を取りながら運用してきたのだけど、お客様や関係者からよく聞かれる質問が「何か面白い銘柄はありませんか?」というもので、仕方なく私が答えると殆どの場合、相手の顔に失望感が浮かぶ。

「つまんね、ありきたりだな」というコメントが、口から出てくる前に顔に出る。これは相手が証券マンであっても、個人投資家であっても、マスコミの人であっても、いつも一緒。講演会のQ&Aセッションなんかだったら最悪で、会場内にメモを取る準備をする音がして静寂が訪れた後、ため息とペンを机に放る音が聞こえることがある。時には舌打ちさえも聞こえる時がある。

面白い銘柄って何ですか?

そして私はいつも悩んでしまう「面白い銘柄ってなんだろう?」と。名前を聞いたら自動的に笑いだせるような銘柄という意味でないことだけは確かだと思うが・・・・たぶん、誰も聞いたことが無いような銘柄で、こっそり自分だけが儲かるような大化け株というのが正解なのだろうが、残念ながら、私はそうした銘柄は存在しないと予てから考えている。

インサイダー情報なんてものは、そうそうあるものじゃないし、実際に出くわしたこともない。まあ、避けるようにしてきたからという面もあるが、そんな美味しい話は見たことも、聞いたこともない。

唯一無二な方法が、常にアンテナを高くして新しい技術やトレンドに気が付くようにし、常日頃からそうしたことに関連しそうな企業を地道に調査し続けておくこと。私はそれしか方法は無いと思っている。

ただ現実の話として、件の仲間たちに限らず、多くの人が「面白い銘柄ないですか?」と私に尋ねてくる。私が伝えた銘柄には散々もう投資残高があって、それでもお金が有り余っているから、更なる選択肢を求めているのだろうか?

ただ今までの実感からすると、その人が証券マンだろうが、個人投資家だろうが、その企業の投資価値や着眼点について、そんなに明るいと思ったことは無い。当然、もう充分投資をしてますという大富豪でもない。

昨今主流のボトムアップ調査、何故自ら足を運ばないの?

ちょっと余談になってしまうが、現地調査を伴わないボトムアップ調査って、本当に良いのだろうか?私は現地調査しないでファンドマネージャーとして投資をするのは怖い。だが昨今は往々にして、企業のIR担当者や社長、財務部長、或いはCEOやCFOを自分の会社に呼びつけて面談して済ませるケースが多い。事実、そういう面談を半期に何件セットしたかで、ブローカー評価を決める運用会社が多い。

喩ていうなら、時々ベンツやポルシェなどが不似合いなアパートやマンションの駐車場に止まっていることってありますよね。逆に結構な豪邸なのに、国産のコンパクトカーとかが止まっていることもありますよね。

もし、それぞれのお宅のご主人が、同じような格好をして、車でホテルのエントランスに乗り付けたら、どうなるでしょう?ホテルマンは当然クルマから降りてくるお客様の自宅を知らないから、間違いなく車で判断せざるを得ない。それと同じです。勿論、一流のホテルマンはクルマ如きに騙されないというの事実でしょうが、相手の陣地に赴いてこそ、そこがどんなところなのか、よく分かるというもの。社食やカフェテリアでランチでも出来たら最高のリサーチになります。

会社の外では手揉みして低姿勢だった重役さんが、自社ビルの中を歩いている時は、殿様のように振舞っている時だって実際にあるんです。だからこそ、地道に自分の足で実際に調べに行ってみる。それが私の言うところのボトムアップ型リサーチなんです。

まとめ

そういうことをしながら選んできた銘柄を私は常々口にするのですが、「何か面白い銘柄は無いですか」という質問をされる方の期待を私はいつも裏切ってしまいます。

でも私も聞いてみたいと思う時があります。「貴方は儲かる可能性がより高い銘柄に投資がしたいのですか?それとも他人が気が付かないような、何か斬新な材料が出るかも知れない、ちょっと奇をてらったような、でももしかしたらかなりリスクが高い銘柄に投資がしたいのですか?」と。

私は投資は奇をてらわず、王道を歩くのが一番安全で、手っ取り早いと思っています。

無料のニュースレターに登録しませんか?

ウェブサイトに掲載した旬な話題を随時お送りします

ファンドガレージ 大島和隆

Fund Garageへようこそ。主宰の大島和隆です。投資で納得がいく成果を得る最良の方法は、自分自身である程度「中身の評価」や「モノの良し悪し」を判断が出来るところから始めることです。その為にも、まず身近なところから始めましょう。投資で勝つには「急がば回れ」です。Fund Garageはその為に、私の経験に基づいて、ご自身の知見の活かし方などもお伝えしていきます。