FG Free Report エヌビディアのFY2026Q2決算を読む(9月1日号抜粋)

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エヌビディアの決算におけるデータセンター部門の伸びは、同社がGPU企業からAIインフラ全体を握る企業へと進化しつつある姿を表しているといえます。

今回はFY2026Q2の決算発表をベースに、技術面とリスク面の両方から、この決算が示す意味をプロのファンドマネージャーが整理していきます。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

詳説:エヌビディアのFY2026Q2決算

エヌビディアのFY2026Q2決算(2025年7月27日締め)が発表された。結果は、

  • 売上高467.43億ドル(前期比+6%、前年同期比+56%)
  • Non-GAAPベース粗利率72.7%
  • Non-GAAPベース EPS1.05ドル(GAAP EPSは1.08ドル)
  • Data Centerが411億ドル(前期比+5%、前年同期比+56%)でセグメントを牽引

であった。

今回は、技術面とリスク面からエヌビディアの今期決算が示唆することについてついて見ていこう。

技術面

Data Centerセグメントが好調の理由

今期とりわけ注目すべきなのは、Blackwellデータセンター収入が前期比+17%と立ち上がり初期から加速している点だ。量の拡大だけではなく、世代交代の速さと、よりラック単位やシステム販売といった高収益製品へのミックス・シフトが同時に進んでいる。

その中心にあるのが、NVLinkを使ったラックスケール戦略だ。

エヌビディアは、AIの学習や推論の負荷が高まる中で、GPUをつなぐ仕組みそのものが競争力になると見ている。さらに、分散したデータセンター同士を結ぶ新しいEthernet製品「Spectrum-XGS」も投入し、データセンター全体を一つの巨大なAI工場のように動かす構想を打ち出した。

総じて、Q2のデータセンターは「数量の増加」よりも「アーキテクチャの質的な飛躍」に本質があると言えよう。まずは、その質を支える技術について確認する。

技術ドライバー:NVLinkラックスケール/Spectrum-XGS/NVFP4

今期の数字を支える技術要素は、大きく3つある。これらはGPU単体の性能競争を超え、AIファクトリーの完成度と採算性を押し上げる要素だ。

◎NVLinkラックスケール:1ラック=1コンピュータ

これは単体GPU→ノード→ラックへと一体最適化する設計(=1ラック全体を一つの大きな計算機として最適化する考え方)により、学習と推論の処理効率を高める。NVL72はその象徴的な製品だ。

エヌビディアは当四半期の発表資料でも「Blackwellデータセンター収入の伸長」と「ラックスケール」路線を明示しており、ガイダンス(Q3売上見通し540億ドル、±2%)の背景として位置づけている。

◎Spectrum-XGS(scale-across):データセンター間をつなぐ配線

これは、単一サイト内の“scale-out”を超えて、地理的に分散したデータセンター同士を結ぶ“scale-across”を狙う技術(=1つのデータセンター内だけでなく、離れた拠点同士を高速につなぐための技術)である。

ラックの内部はNVLink、データセンター間はEthernetで結ぶという二層構造によって、巨大なAI基盤を作りやすくする狙いがある。

◎NVFP4(4-bit):精度と効率の両立

Blackwell世代で導入されたNVFP4という4-bitの計算方式。この技術のおかげで、少ない計算資源で高い性能を出しやすく、推論だけでなく学習にも広がるとされる。同じ電力・同じスペースでより多くの処理ができれば、顧客側の総コスト低下にもつながる。

エヌビディアの高い採算性を裏付けるもの

エヌビディアの決算において、投資家が最も敏感に反応するのは粗利率である。今回の粗利率72.7%は非常に高いが、中国向けH20関連の一時的な要因も含まれている。

というのも、引当金の戻し入れを除くと72.3%となり実態としては70%台前半〜半ばで安定しているとみた方が良い。

重要なのは、この一過性の要因を差し引いてもなお、エヌビディアが極めて高い採算性を維持しているという事実である。しかもガイダンスでは、中国市場をゼロと見込んだうえでQ3の粗利率を73.5%(±50bp)と予想。

従来はGPU単体の価格と製造コストが収益性を左右していたが、現在はNVLink・Spectrum-XGS・CUDAといったソフトウェア群の収益化が、全体のマージンを押し上げている。これは、エヌビディアがGPU単体を売る会社から、システム一式を売る会社へ変わりつつあることの証左だろう。

 

当四半期、エヌビディアは中国へのH20売上をゼロとする一方で、約6.5億ドル分を中国以外の顧客に販売している。そして過去に計上したH20関連の引当金から1.8億ドルが戻入れされ、それが粗利率を一時的に押し上げた。

リスク面

中国への輸出規制の影響がエヌビディアにもたらすもの

エヌビディアの決算を語る上で、中国市場と輸出規制の影響は避けて通れない。とりわけ2023年以降、米国商務省の規制強化によって高性能GPUの対中輸出が制限され、H100やA100に代わって「H20」など制限準拠モデルが投入された経緯がある。

短期的には、中国市場を失うことによる売上減少を懸念する声は根強い。

しかし実際の決算数字を見ると、今四半期は中国向けH20売上がゼロだったが、それでも全体業績は強かった。つまり、目先では「中国ゼロ」そのものより、「規制の不確実性が他地域にも広がるかどうか」ということが論点となってくる。

この規制リスクは、主に2つある。

第一に、米国政府による対中輸出許可の個別判断だ。企業は常にライセンス申請と許可のタイムラグに左右され、年度途中での売上計画修正を余儀なくされる可能性がある。

第二に、各国の主権AI政策との整合性だ。「ある地域ではBlackwellやNVLinkラックスケールが制限なく導入される一方で、中国市場では完全に空白が生じる」いう現象が起こる可能性がある。

欧州・日本・米国・中東などで大型案件が進んでおり、エヌビディアは中国依存を下げる方向に動いている。見方を変えれば、中国規制は同社が地理的な分散を進めるきっかけにもなっているということだ。

競合環境──内製ASIC・AMD/カスタムシリコン・ネットワーク覇権

FY2026Q2の数字を支えているBlackwellやNVLinkラックスケールは、単に性能の高さで優位に立っているのではなく、競合が追随しにくいエコシステムの広がりによって守られている。しかし、同時に各方面からの挑戦も強まっているのも事実であり、その性質は大きく以下の三つに分類できる。

◎内製ASIC

まず最大の競合は、クラウド大手による内製ASICだ。GoogleのTPU、AmazonのTrainium/Inferentia、MicrosoftのMaiaなど、各社が独自に設計したチップでGPU依存度を下げようと試みている。これらは大量導入されれば武器となるが、実際にはCUDAを中心とした開発者エコシステムの厚みに欠けるため、エヌビディアの完全な代替には至っていない。

◎AMDとカスタムシリコン

次に、AMDやカスタムシリコンが挙げられる。AMDは一部のHPC案件で存在感を見せているが、ソフトウェア面ではまだ弱い。Broadcomなども専用設計で食い込もうとしているが、エヌビディア全体を置き換えるには至っていない。

エヌビディアはこれを逆手に取り、開発者の習熟投資をCUDAに固定化し、時間とともに切り替えコストを引き上げている現状だ。

◎Ethernet vs NVLink

最後に見逃せないのが、ネットワーク領域での覇権争いだ。

近年はBroadcomやCiscoがAIデータセンター向けネットワークスイッチに注力し、Ethernetの標準化を武器に存在感を増している。

これに対しエヌビディアはNVLinkとSpectrum-XGSを組み合わせ、ラックスケールからデータセンター間スケールまでを統合した設計思想を打ち出した。

結果として「NVLinkで内部を専有し、Ethernetで外部を接続する」という二階建て構造が形成されつつある。しかし現状は、GPU性能をフルに引き出すにはNVLink接続が不可欠であり、結果的に顧客はネットワークまでエヌビディアに依存する構造となっている。

まとめ:投資家への示唆:短期ノイズと長期物語の再確認

FY2026Q2決算に対する市場の初期反応は、時間外での株価▲3.1%下落であった。

しかし確認してきた通り、実際には売上・利益率ともに高水準で、会社見通しも強い。つまり、短期ノイズに引きずられた市場と、長期物語を読む投資家の視点の間に大きな乖離が生じている状況が浮き彫りになったのだ。

長期で重要なのは、

  1. Blackwell世代のフルスピード量産
  2. NVLinkやSpectrum-XGSを含むネットワーク戦略
  3. 主権AI・産業AI・HPCにおける地域分散

これらはいずれも、短期的な数値の上下動ではなく、構造的な成長基盤として投資家が注目すべき要素である。

もちろん、輸出規制やライセンス不確実性・内製ASICやAMDという競合の存在・ネットワーク標準化を巡る主導権争いというリスクは存在する。

ただそれらは同時に、エヌビディアの本当の強みは「GPUの速さ」ではなく「代替の効かない総合エコシステム」にあることを映し出しているのだ。

投資家が注視すべきは、競合製品のベンチマークよりも、エヌビディアがエコシステム依存をどこまで深化させ、ネットワークやソフトウェアを収益源に組み込めるかという構造変化である。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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