FG Free Report 生成AIの次に来るもの──NVIDIAとPalantirが握るAI投資の本質 (7月28日号抜粋)

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この数年で、生成AI(Generative AI)は私たちにとってすっかり身近な存在となりましたが、最新のAI技術は文章や画像生成では終わりません。

いま起きている変化を正しく理解することが、AI投資判断の分かれ道となります。

今回は、最先端AI(Agentic AI、Physical AI)技術を取り入れているNVIDIAとPalantir Technologiesの取り組みを例に、成功するAI投資のポイントをプロのファンドマネージャーが解説します。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

AIの進化を理解して、投資を行おう

AI革命のプロセスを理解する

ChatGPTをはじめとする生成AI(Generative AI)の登場以降、社会は大きく揺さぶられ、あらゆる分野で「AIをどう取り込むか」が問われる時代となった。

しかし、このAI革命の実態を「文章や画像を生み出す技術の進化」と単純に捉えただけでは、AIへの真の理解には繋がらない。

市場は依然としてGenerative AIに注目しているが、我々投資家が見定めるべきはその先にあるのだ。

今後AIと共存していくには、これまでAIが辿ってきた進化のプロセスを確認し、現在地を冷静に把握する必要がある。

AIの進化は、大きく四つの段階に分類される。

<第1段階> Perceptive AI(知覚AI)
画像認識・音声認識・環境感知といった、人間の感覚器官に相当する機能を模倣するAI。スマートフォンの顔認証や、スマートスピーカーの音声アシスタントはその典型例。

<第2段階> Generative AI(生成AI)
大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)によって、膨大な過去データから確率的に次の単語や画像を予測し、自然な文章や画像・音声・動画を生み出す。
つまり、生成AIはあくまで確率的=最も尤もらしい次の出力(トークン:AIが出力する単語や記号の最小単位)を選ぶ仕組みなのだ。だから、過去に存在しなかった問い・複雑な論理問題・倫理的判断・因果推論といった分野では途端に弱さが露呈する。実際、ChatGPTが架空の書籍を紹介したり、実在しない情報を平然と生成したりするのは、この限界ゆえである。

<第3段階> Agentic AI(自律AI)
タスクの分解→段階的な判断→理由説明→必要に応じた修正 能力を備えたAI。たとえば、軍事作戦・医療現場の意思決定・複雑な行政オペレーションなどに利用され、人間の意思決定をサポートしている。

<第4段階> Physical AI(物理AI)
仮想空間内で物理法則を学習し、現実世界に作用を及ぼすAI。自動運転・ロボティクス・スマートマニュファクチャリングといった領域に進出している。

AI革命を理解するには、この4段階の進化を一つの線として捉える視座が欠かせない。AIは今や便利ツールや株価テーマといった枠を超えた、社会そのものの構造を問い直す存在となっていることがお分かりいただけただろう。

NVIDIAのPhysical AI:OmniverseとIsaac Sim

このようなAI革命の最前線を走る企業として語るべきは、やはりNVIDIAという企業だ。

ところがこれまでのように、その実像を「GPUの王者」あるいは「半導体メーカー」といった認識に留めておくのは、実はもう時代遅れである。

というのもNVIDIAは、技術・産業・社会をまたぐ「AIインフラの基盤企業」なのだ。そしてその挑戦の核心にあるのが、先ほどの第4段階目のPhysical AIであり、同社が開発する Omniverse(オムニバース) という仮想世界である。

Omniverseは、あの映画『ファインディング・ニモ』や『トイ・ストーリー』を手がけた Pixar Animation Studiosが開発した USD(Universal Scene Description) という3D記述仕様を基盤としている。

このOmniverseの凄みは、現実世界での実験や試行錯誤を、仮想世界で超高速かつ無制限に行えることにある。

たとえばトヨタは、倉庫内のオートメーション設計をOmniverse内でシミュレーションし、作業効率と労働安全性を向上させている。Amazonでは、フルフィルメントセンターにおける数百台のロボットと数万人規模の人間の動線を仮想空間上で再現し、オペレーション最適化を達成している。

さらに、ロボティクス分野においては Isaac Sim(アイザック・シム) が重要な役割を果たす。これはOmniverse上に構築されたロボット専用シミュレーションプラットフォームであり、ロボットアーム・倉庫搬送ロボット・配達ドローンなどが、仮想環境内で数千万回のテストを繰り返すことが可能だ(現実世界で1分かかる作業も、仮想環境では10倍、100倍の速度で実行できる)。

この技術が何を意味するか。それは、実世界に投入される段階ではすでに例外事象への耐性を備えた、高度な制御性能を持つことが保証されるということだ。

このようにして、NVIDIAは従来の「半導体メーカー」から、物理世界をデジタル空間で設計し、最適化し、現実へ実装するための基盤を握る企業へと進化した。

それはGPUの販売という一過性の需要ではなく、「産業構造そのものの再設計」に関与するポジションに立っていることを意味する。

PalantirのAgentic AI:Ontology技術

AIが社会実装されるとき、必ず突き当たる問題がある。それは、「AIは間違える」という事実にどう向き合うかということだ。

AIモデルの進化とともに、特に生成AIの領域では「ハルシネーション(hallucination)」という言葉が広く知られるようになった。これは、AIが事実ではない内容をあたかも真実であるかのように自信満々に生成してしまう現象を指す。

こうした流れの中で、一部の企業や開発者が唱えるのが「ゼロハルシネーション(zero hallucination)」という理想である。すなわち、AIが一切誤りを出力せず完全に事実のみに基づいて応答と判断を行う状態を指す。

だが現実には、ゼロハルシネーションは構造的に達成困難である。なぜなら大規模言語モデル(LLM)の多くは、膨大なデータに基づいて生成を行うため、必然的に「最もらしいが誤っている」出力が発生するリスクを常にはらんでいるからだ。

こうした「ゼロハルシネーション幻想」が支配する現場に、まったく異なる思想を持ち込んだのがPalantir Technologies(PLTR)である。

というのもPalantirのAgentic AIは、「間違えない完璧さ」ではなく「なぜそう判断したのか」を説明することに重きを置いて設計されているのだ。

たとえば、

  • 医療分野:診療報酬制度や患者情報保護のルール

  • 行政:予算や監査の制約

  • 防衛分野:厳格な交戦規則

というように、実社会には制度が存在する。

PalantirのAIは、こうした現実の法律やルールをあらかじめ組み込んだ上で推論する仕組み=「オントロジー(Ontology)を備えており、「なぜその提案を出したのか」「どのルールに基づいて判断したのか」「誰の権限の範囲で処理されたのか」を後から検証できるように設計されている。

まとめ:AI投資のポイント

AIは、いかに高性能になろうとも、間違える。ただし、これは欠陥ではない。

確率的言語モデルである限り、過去に存在しないパターンや、例外的・突発的な状況、あるいは倫理的にグレーな判断を求められたとき、AIは必ずしも正解を出せるわけではない。その限界を前提にして設計しなければ、AIは社会にとって「制御不能なブラックボックス」となってしまう。

だからこそ、いま求められているのは「間違わないAI」ではなく、「間違ったときに社会がどう受け止め、補完し、修復できるか」という責任設計の発想なのだ。

この発想を実現可能なものとして実装しているのが、今回ご紹介したNVIDIAとPalantir Technologiesである。

  • NVIDIA:OmniverseやIsaac Simといった物理空間の高精度シミュレーション環境を提供することで、実環境での運用前に仮想環境内で検証する技術を磨いている。
  • Palantir:Ontologyを埋め込んだAIプラットフォームを提供しており、「いつでも説明可能・いつでも監査可能・誰が責任を持ったのかが可視化される」体制を構築している。

つまり、NVIDIAは物理世界の制御を支える基盤インフラとして、Palantirは制度と責任の可視化を担うインフラとして、それぞれ社会的信頼のアーキテクチャを支えている。そしてその中心を担うのが、Agentic AIPhysical AIなのだ。

さらに、こうした構造の進化を真正面から受け止める立場にあるのが、私たち投資家である。

その産業構造が本当に「持続可能か」「社会に受け入れられるか」「制度と倫理を乗り越えられるか」という問いは、常に投資判断の際に持っておきたい。

編集部後記

こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
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