FG Free Report パランティア・テクノロジーズ〜Agentic AIで社会インフラを支える〜(7月7日号抜粋)

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「PER250倍(2025年7月当時)」という驚異的な数値でAI業界を揺るがしている、パランティア・テクノロジーズ。

しかし、同社のビジネス内容はあまり知られておらず、時には誤解されている現状があります。

今回は、パランティア・テクノロジーズが取り組む「Agentic AI」について確認しながら、同社が持つ本当の強さをプロのファンドマネージャーがお伝えします。

投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。

(Fund Garage編集部)

パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の強さを探る

なぜ今、パランティア・テクノロジーズなのか?

「パランティア?名前は聞いたことがあるが、何をやっている会社かはよく分からない」

この印象は、日本に限らず世界の個人投資家に共通して見られるものだろう。ましてや「PER250倍」と聞けば、違和感を通り越して、もはや“バブル的高騰”と映ってしまっても無理はない。

しかし、この素朴な違和感こそが、実はパランティア(PLTR)という企業の本質を浮き彫りにする導線となる。

「どうしてパランティアがこんなに高く評価されているのか分からない」という感想は、単なる無理解ではない。むしろ、そこには「AI企業=生成AI企業」といった前提認識があり、ChatGPT的なAIの枠組みに収まらない企業をうまく位置づけられないという、知的混乱が隠れているからだ。

では、パランティアのビジネスの中核は一体どのようなものなのか。

それはずばり、「社会を動かす意思決定の現場」にAIを組み込むという構造だ。つまり、国防・災害対応・エネルギー・医療制度・食品サプライチェーンといった多層な現場に、「人間の意思決定を支援するAI」を設計・実装する会社なのである。

生成AIの先にあるパランティアの「AIP」

ChatGPTの登場以来、「AI=生成AI」という認識が、投資家の間でも一気に定着した。その技術進化は確かに驚異的であり、その裏側で動いていたのは、膨大な計算資源を支えるNVIDIAのGPU、OpenAIやAnthropicといったモデル企業、あるいはMicrosoftやGoogleのクラウド構築力だった。

だが、そうした生成AIが「すべてのAI」であるかのような誤解が今、市場全体に蔓延している。そして、その誤解のせいで、「パランティアのAIがなぜそんなに高く評価されているのか分からない」という声が生まれるのだ。なぜなら、パランティアはChatGPT的な「生成AI」をつくっている企業ではないからだ。むしろ、彼らがやっていることは、「生成の先にある意思決定の自動化」、すなわち「Agentic AI」の領域だからだ

生成AIは、膨大な過去情報を学習して、人間が書きそうな文章やコードを再現するが、それは「出力」であり「判断」ではない。つまり、「どう振る舞うべきか」「何をすべきか」という決定そのものは、依然として人間の役割とされている。

しかし現実には、そうした「判断」こそが最もデータが必要で、最も再現が難しい。軍事における目標選定・病院でのICUベッド配分・難民受け入れの優先順位・災害時の避難計画というような、人命に関わる現場の意思決定においてこそ、AIは生成ではなく「行動判断」を支援すべきフェーズに入っているのだ。

ここに登場するのが、パランティアの「AIP(Artificial Intelligence Platform)」である。AIPは、ChatGPTのように情報を生成するのではない。複雑な現実世界のデータを統合し、目的に沿った意思決定プロセスを“AIエージェント”が実行する環境を構築する。ユーザーは自然言語で指示を出すが、その背後ではFoundryやGothamで統合された構造化データが、リアルタイムに分析され、AIエージェントが数百通りの判断パターンを瞬時に評価する。

現在、パランティアが提供している「AIP(Artificial Intelligence Platform)」では、

  • LLM(大規模言語モデル)やマルチモーダルモデルを搭載(生成AIとAgentic AIの融合)
  • ユーザー(軍人・官僚・医師など)が「自然言語で命令」を与えることで、AIエージェントが行動・提案・判断まで行うプロセスを支援
  • H100クラスのGPUによるリアルタイム解析やデータストリーム処理も可能

となっている。

<パランティアのAIの進化>

面白いことに実は、ChatGPT登場(2022年11月)より2年以上前に、パランティアは国家レベルでAIによる意思決定支援を行っていた。

それは英国NHS(イギリス国民保健サービス)との連携だ。患者数・医療資源・物流状況・地域偏差・天候要因などを統合的に解析し、「どの病院に資源を優先投入すべきか」という決定を、AIが助言する。これはまさに、「Agentic AI=人間の制度・判断を支えるAI」の実装なのだ。

そして、このAgentic AIが機能するには、生成AIだけでは不十分だ。実際に国家を動かし、制度を再設計し、人命を守るようなAIを社会実装するという構造的能力において、パランティアは既に次のフェーズを走っていると言っていいだろう

だからこそ、ChatGPTが生んだ生成AIブームの延長線では、パランティアは理解できない。そして、PER250倍が許容されているのだ

パランティアの本当の強さ:社会インフラの意思決定を支援するAgentic AI

「AIが社会を変える」とは、よく耳にする言葉だ。しかし、ChatGPTのようなAIが文章を作成し、業務を効率化することが“社会変革”だとすれば、せいぜいホワイトカラーの生産性改革にとどまるだろう。

しかしパランティアが対象とするのは、「制度」そのものである。すなわち、国防・医療・エネルギー・行政のように、社会インフラに意思決定AI(Agentic AI)を組み込むという試みなのだ。

たとえば、戦争や災害時における意思決定を想像してほしい。どこに部隊を配置するか。どの地域に物資を優先的に送るか。どの通信インフラを遮断・維持するか。こうした判断には、地理・人口・交通・気象・敵動向・法的制約など、今考えられるだけでもこれだけの複雑な条件が絡む。

パランティアのAIPは、まさにそのような状況下で現実的な判断を下すために設計されているのだ。

GAFAや生成AI企業の多くが、APIやLLMを「提供する」ことに注力しているのに対し、パランティアは、制度に入り込んで全体構造ごと最適化する役割を持つ。すなわちこれらは全くレイヤーの異なる仕事である。パランティアが“国家に深く入り込みすぎる”という批判が出るのも、その影響力が本質的に制度構造に及ぶからにほかならない。

社会を変えるとは、制度を変えるということに他ならない。そしてその最前線に立っているのが、パランティアである。

<NVIDIA OmniverseとPalantirの違い>

まとめ

いかがだっただろう。

私たちがChatGPTに慣れ親しむ中で「生成AIがAIのすべて」だと錯覚している一方で、パランティアは「次世代のAI」、すなわち「Agentic AI」へと進んでいる。しかも、そこには極めて高度な倫理設計や制度理解、現場適用性が問われる。パランティアが業界で唯一無二の存在となっている源泉はここにある。

だからこそ、同社は営利企業でありながら、極めて国家的・社会的な領域に深く入り込んでいるのだ。米国国防総省・英国NHS・EUの難民庁など、導入先は公共セクターに集中しているが、それは「民間に売れないから」ではない。むしろ逆で、国家機能に働きかけられる会社が世界で他にないからこそ、国が動いたのである。

確かに、今のパランティアの利益水準をもって「PER250倍」という数字だけを見れば割高感は否めない。だが、もし「社会構造を変革するAI企業」という視点でパランティアを見たならば、それはGoogleやAmazonが、広告企業・小売企業と見なされていた時代と同じような誤解の段階にいることに気づくはずだ。

読者である投資家の皆さまには、「なぜ高いか」ではなく、「なぜ唯一無二か」という視点で、パランティア・テクノロジーズという企業を見ていただければ幸いだ。

編集部後記

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