今年1月から始まった第2次トランプ政権について、多くの情報や意見が日々飛び交っています。その中にはポジティブなものもあれば、ネガティブなものもあるでしょう。
今回はそんなトランプ政権が掲げる「MAGA」について、一次情報をもとにプロのファンドマネージャーが分かりやすく解説します。また最後には、正しい情報の取り方についてもお伝えしていますので、ぜひご参考にしてください。
投資での資産形成をお考えの方も、既に投資を始められている方も、ご自身の知識と照らし合わせながらご覧ください。
(Fund Garage編集部)
MAGA——Make America Great Again を正しく理解する
想像以上にポジティブだったトランプ大統領就任演説
2025年1月21日、ついにトランプ大統領が米国第47代大統領として就任した。
“The golden age of America begins right now.”
と始まったトランプ大統領の就任演説は、少なくとも、事前に「独裁者誕生」などという表現が使われた日本のメディアが評したものとは随分と印象の違うものだった。いわく「アメリカの黄金時代が今、始まる。この日から、我が国は繁栄し世界中から再び敬意を集めるようになるだろう。我々は全ての国々の羨望の的となり、もはや他国に付け込まれることは許さない」というスピーチに、多くのアメリカ国民は鼓舞されただろう。
「MAGA(Make America Great Again、偉大なアメリカを取り戻す)」というスローガンで拡がったトランプ大統領の一連の姿勢は、少なくとも州毎の選挙人の獲得人数だけでなく、総得票数においても過半数の50.75%を獲得している。だから、第1次トランプ政権誕生時のように、「総得票数ではクリントン候補の方が上だった」というような嫌味を言う余地もなく、米国民の半数以上が支持した大統領の誕生というのが真実だ。
この点については、妙に斜に構える必要もなく、素直に額面通りに受け取るべきだろう。だからこそ、先週の米国市場は荒れることはなかったのだから。
今回の大統領就任演説の大きなポイントを整理すると、概ねこの8項目になる。そして米国への投資家として重要なのは、特に青字で記した1,4,5,8番だろう(次項で解説)。
- 「アメリカの黄金時代」の宣言
- 政府機関の改革
- 移民政策の強化
- 経済政策の重点化
- 安全保障と犯罪対策
- 国民への感謝と団結の呼びかけ
- 「裏切り」の終焉
- 自然災害や社会問題への対応
「アメリカ第一主義」の経済的・社会的意義
「アメリカの黄金時代」の宣言というのは、アメリカが再び繁栄し世界中から尊敬される国になるということだ。つまり「アメリカ第一主義」を強調し、国民の安全と主権の回復を約束するというもの。その一部をご紹介しよう。
<経済政策>
「国家エネルギー非常事態」を宣言し、エネルギー価格を抑え国内資源の採掘を拡大すると同時に、アメリカを製造業の中心地に戻すというビジョンを掲げた。これはやはり激戦州であったラストベルト※1の思いを代弁したものだと言える。この宣言の背景は、コストと価格を急速に引き下げるためであり、つまりインフレ危機はバイデン政権の莫大な支出超過とエネルギー価格の高騰によって引き起こされたという認識があるからだ。
「アメリカは地球上のどの国よりも大量の石油とガスという資源を持っています。だから、私たちはそれを活用します」とトランプ大統領は宣言している。
昨年末私は、カリフォルニアで最大のシェール開発地域であるベイカーズフィールドに行ってきたが、残念ながら活気はいまひとつだった。ただもしバイデン政権下で強化された環境規制がこれで緩和されれば、シェールガスや石油の採掘が再び活発化する可能性はあるだろう。
※1…激戦州のラストベルトとは、イリノイ・インディアナ・ウィスコンシン・オハイオ・ペンシルベニア・ミシガンの6州を指す(地理的な定義としてのラストベルトは五大湖周辺と中部大西洋沿岸周辺地域とされている)。
この地域はかつて鉄鋼・石炭・自動車産業で栄えたが、グローバリゼーションに伴って労働者は都市部や海外に流出、2000年以降急激に衰退していった。現在この地域に暮らしているのは主に低・中所得層の白人であり、トランプ大統領はこうしたブルーカラーに「アメリカ第一主義」を訴えた。いわゆる「トランプ関税」導入も、この「米国に雇用を取り戻す」という主張のもとに成り立っている。
<安全保障と犯罪対策>
軍事力については、「再び世界史上最強の軍隊を作り上げる」と明言している。これは、「愛国心を鼓舞する」という意図のほかに、国内の防衛産業に対する投資拡大を意味し、雇用創出と経済成長を目指す政策とも整合する。
ご存知ない方も多いと思われるが、現在の米国のいわゆる「軍備(空母、潜水艦、航空機など)」はギリギリの予算と人員で運用がされていることもあり、実は決して充分だとは言えない状況だ。また国際的な意図としては、敵対国へは威嚇だが、同盟国にはアメリカの主導権を再確認させる狙いがあるだろう。
そして同時に、他国(特に中国だと思われるが)、AIや極超音速技術などの分野においてアメリカを追い越すリスクに対応する意図もうかがえる。なぜなら、トランプ政権の安全保障政策の中核はやはり技術的優位性の保持にあるからだ。
伝統的な軍事力の拡充に加え、AI・宇宙・防空技術といった新技術への優先的投資と、軍事技術やサイバー防衛を支えるための高度人材の育成が課題となると思われる。さらに、これが結局「Stargate project※2」の発表へとスムーズに繋がるのだ。
ただ一方で、「再び世界史上最強の軍隊を作り上げる」というアメリカが安全保障のリーダーシップを強化する意思を表明した以上、日本に対して具体的な期待や圧力がかかる可能性は否定できない。その時、かつての安倍内閣と違い、現在の石破内閣がアメリカと中国との間に立って安全保障協力を調整するのは、相当に悩ましい状況に置かれる可能性が高い。
※2…「Stargate Project」についての分かりやすい説明は、公式YouTubeを参照。
保守?リベラル? 偏向報道にご注意
トランプ大統領の就任演説から1週間が経ち、徐々にその内容が咀嚼され始めているが、ほぼ半数の米国人は民主党カマラ・ハリス候補を支持していたことを忘れてはならない。過半数を獲った方がマジョリティなのが民主主義の大原則ではあるが、基本的に、2人いたら1人は反対を向いているということだ。
なぜこのような話をするかと言えば、たとえば民主党寄りとされるCNNやNYタイムズなどの報道を見ると、決して今回のレポートと同じトーンで第二次トランプ政権の始まりを捉えていないからだ。また日本メディアで得られる情報も、リベラル系に偏っている場合が多いので注意が必要である。
つまり、その報道の基本的なスタンスを理解した上で記事を読んでおかないと、我々は知らず知らずのうちに刷り込まれ、バイアスが掛かるようになってしまうということを意味する。
〜〜
先日(7月24日)、無料メルマガとして「【FG 臨時レポート】隠蔽されたクーデター─国家情報長官が暴露」を配信したが、ご覧いただけただろうか。その冒頭で、
「私は政治運動家でもなければ、陰謀論者でもありません。40年にわたり市場業務に携わり、いま日本の個人投資家のリテラシー向上のお役に立てればと情報提供をしている者として、この事件が「本当に投資判断に無関係なのか」を問い直す必要があると感じています」
と記載しなければならないほど、この手の問題を掘り起こすとどうしてもハレーションが起きる。
ただ、今回はそれを覚悟で敢えて無料メルマガとして配信させていたいた。なぜなら少なくとも、自分自身の目と耳で長年確認してきた「アメリカのリアル」に照らして見れば、こちらの方が違和感がないからだ。間違いなく、このホワイトハウスによる公式発表こそ、現在のアメリカ合衆国政府の正式な見解だからだ。
それでもなお、「リベラル系メディア」はこの件に対しては沈黙を守り通している。読者の皆さまにおかれては、どちらが投資対象国の「一次情報」なのかを立ち止まって確認していただきたい——メディアのそれは間違いなく、「二次情報」の位置づけになることがお分かりになるはずだ。
まとめ
- “The golden age of America begins right now.”と始まったトランプ大統領の就任演説は、「独裁者誕生」などと日本のメディアが評したものとは随分と印象の違うポジティブなものだった。
- トランプ大統領が掲げる「アメリカ第一主義」とは、雇用創出・経済成長・国防強化を目指すものであり、経済的にも社会的にも意義深いと言える。
- メディアの報道は決して「一次情報」ではない。保守か、リベラルか、といったその報道の基本的なスタンスを理解した上で情報に触れる必要がある。
編集部後記
こちらは、Fund Garageプレミアム会員専用の「プレミアム・レポート」の再編集版記事です。
公開から半年以上経った記事になりますので、現在の情勢とは異なる部分がございます。当時の市場の空気と、普遍的な知見の皆様にお届けできれば幸いです。
また、こちらは無料版記事のため、最新の情報や個別企業の解説についてはカットしております。
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