今朝の日経朝刊(12/14)早読み。どの国においても、中央銀行には優秀なエリートが揃う。彼らが頭を抱えて悩んでいるのが「どうしてインフレにならないの?」と教科書通りに動かない世の中だ。彼らの相談相手は、きっと彼らをTier1とするなら、直後のTier2レベルの優秀なエコノミストや経済学者たちであろう。同じ教科書で学んだ人たちが、固い頭で議論したところで革新的な答えなど出て来はしない。一方、同じ手法に固執するのが日本の徴税方法だ。取れるところから分捕る。票田に影響があるところや、取り難いところからは取らない。サラリーマンも所得控除なんて姑息な方法ではなく、正々堂々と全員が確定申告するようにすればいいんだ。米国では元々全員が確定申告制である。日本もそうしない意味が分からない。

1. 【1面】個人軸に2800億円増税 与党税制大綱 法人税は増減ゼロ 27年ぶりに新税

「取り易いところから取る」という徴税の基本原則に則ったやり方。決して、減反政策の見直しや、高齢者医療への斬り込みなど、支出を抑える代わりに票を失うかも知れないハードボイルドなことはしない。自民、公明両党は14日、2018年度の与党税制改正大綱を決定した。年収850万円超の会社員への所得増税やたばこ増税で、約2800億円の増税となる。森林保護や観光インフラ整備の財源とする27年ぶりの新たな国税も創設。個人の増税が際立つ一方、法人税は賃上げや設備投資を進める企業に減税するメニューが並び、増減はほぼゼロだった。

2. 【1面】ディズニー、フォックスの映画・TV事業を買収 7.4兆円

米メディア大手ウォルト・ディズニーは14日、同業の米21世紀フォックスから映画やテレビなどコンテンツ部門の大半を買い取ると発表した。買収額は524億ドルで、負債込みで661億ドル(7兆4000億円)。コンテンツを拡充する背景には、動画をネットで有料配信する米ネットフリックスなど新興勢力の台頭がある。米アマゾン・ドット・コムもネットフリックスと同様のサービスに乗り出し、米グーグル系のユーチューブもネット向けの有料番組配信を始めている。ディズニーは映画「スター・ウォーズ」や人気コミック「マーベル」といったタイトルを持つが、フォックス買収で「Xメン」などが加わる。

3. 【総合1】FRB、低物価「謎」解けず 半年ぶり利上げ 資産高騰 懸案残る

昨日、WSJのニュースとして既報の通り、FRBは13日のFOMCで、6カ月ぶりの利上げを決めた。来年2月に退任するイエレン議長には、2008年秋の金融危機への対応から利上げ路線に転換することは悲願だったというが、なぜ、中央銀行の人間は利上げしたがるのだろうか。日銀も基本的にそうだ。にも拘らず、完全雇用下で物価が低迷する「謎」は解けないまま。故に、今年と同じ年3回の利上げペースを維持するシナリオを公表するも、市場はそれは無理だろと見透かしたようにドルを売る。イエレン議長は14年2月の就任後、5回目の利上げに踏み切った理由を問われて景気の底堅さを一番の理由にあげた。金融危機への対応から脱する「政策金利の正常化」をめざしてきただけに、イエレン氏は金融引き締めと景気拡大の両立に安堵感をのぞかせた。物価上昇率は1.6%に留まり目標の2%には程遠い。

4. 【国際1】欧州中銀、物価上昇に自信 金融政策維持 緩和終了の道筋焦点

一方、FRBとは反対にECBは景気拡大が物価上昇につながっていくという見通しに「より強い自信」があると語る。でも緩和終了の時期などには踏み込んでいない。ECBが示した経済見通しによると、欧州経済は2017年、18年と2%を超える成長が続くが、実態の物価上昇率の見通しは19年までは1%台半ば、20年が1.7%だ。更に足元はまだ物価上昇の勢いが弱く、引き続き「十分な程度の金融緩和」(ドラギ氏)が必要だという。結局、日米欧共に物価上昇をさせたいという中央銀行の思惑通りには金融政策による効果が表れていないということだ。それを認めて白旗を振るか、意地を張るかの違いにしか見えない。本来、物価上昇を伴わない景気回復ほど好ましいことは無い。恐らく旧来型の計量経済学のモデルが、アマゾン・エフェクトのようなものや、最近の消費者嗜好などを取り込めていないからであろう。優秀な学者ほど、実は頭が固い。

5. 【国際1】アジア諸国、資金流出警戒 米追加利上げと法人減税

アジア市場でもFRBによる追加利上げに加えて、米共和党の上下両院指導部が法人税率の引き下げ幅で大筋合意したというニュースも伝わって、2018年に向けて米国への資金還流の流れをどう読むか各中央銀行にさざ波が広がっているという。「(米税制改革法案を受けて)米国企業は本国に資金を戻そうとしている。新興国市場の資金供給にも影響を与える可能性はある」という香港金融管理局の徳霖総裁のような疑心暗鬼が広がっているからだ。確かに米共和党の税制改革案には、海外で稼ぐ米国企業に対し本国への資金還流を促す減税措置が含まれるが、その通りに米国企業が動くかどうかは分からない。税金面での有利さと、金利水準という課題が綱引きをするからだ。インフレが無ければ金利は上がらない。だからこそドルが売られている。優秀な各国中央銀行マンは、今まで勉強してきたことと違う市場の流れにさぞ戸惑っているのだろう。

6. 【国際1】プーチン氏、米ロ関係改善に期待 大統領選、無所属で

しかしこの人の大統領在任期間も長い。ロシアのプーチン大統領は14日、モスクワで年に一度の定例記者会見を開き、トランプ米政権下で「関係は正常化されるだろう」と述べ、対米関係の改善に改めて期待感を表明した。また2018年3月の大統領選には無所属で立候補し、国民の幅広い支持獲得を目指すことも明らかにしたという。ただここまで長期なると弊害も出るのだろう。停滞が続くロシア経済については「原油安と(欧米の)経済制裁を克服して、成長はしている」と成果を強調するも年金改革など具体的な政策や数値目標は明言できなかった。やや末期な感じだ。

7. 【企業1】東ガス、中部圏で電力販売 社長「東邦ガスと連携協議」 首都圏外へ初進出

電力とガスの規制緩和とはこういう流れを言うのだろう。東京ガスは中部圏で電力販売に進出する方針を固め、東邦ガスと連携する協議を始めた。東京ガスが電力販売で東京都を中心とした従来の営業区域外に進出するのは初めて。電力の小売り自由化から2年近くが経過し、地域をまたいだ競争は激しさを増しそうだ。競争で価格が低下すれば消費者は恩恵を受けることになる。東京ガスは出力約160万キロワットの自社電源を東京湾を中心に保有し、連系線を通じて送電することを想定している。こうした動きを支えるひとつのデバイスがスマートメーターだ。スマートメーターがスマート(賢く)なればなるほど、こうした流れを後押しできる。

8. 【投資情報】飲料4社、営業利益率改善 国内6.7%、価格競争が沈静化 高付加価値・コスト減奏功

清涼飲料大手4社の2017年12月期の国内飲料事業の売上高営業利益率の平均が6.7%と、08年の金融危機後で最高になる見通しだ。日本の飲料業界はこれまで価格競争の激しさなどから利益率の低さが指摘されてきた。トクホ(特定保健用食品)など付加価値の高い飲料で単価が上がっているほか、ペットボトル容器の自社生産などコスト削減の取り組みが奏功する。ただ、各社が小売店などに値下げの原資として支払う販売促進費は、依然として年間1000億円規模を維持しているとみられる。今後はこうした販促費を業界全体でどこまで減らせるかが、一段の利益率改善のカギとなる。

9. 【投資情報】投信実力点検(3)毎月分配、残高上位が苦戦 新興国通貨選択型は好調

個人に人気が高い「毎月分配型」の2017年の運用成績をみると、米国REITの運用が伸び悩んだ。一方、株式などに投資しつつ、新興国の通貨リスクをとったタイプの投信が上位に並ぶ。リーマン・ショック以降、急速に回復した米国REIT相場が頭打ちとなり、円安も一服で運用成績が上がらなくなってきた。そして減配。一方、残高が100億円以上の投信の上昇率ランキングでは首位が「中華圏株式ファンド」で32.6%、ほかに「国際・キャピタル日本株式オープン(通貨選択型)ロシア・ルーブルコース」の29.4%など、上位5本中3本が「通貨選択型」だった。日本株にルーブルを組み合わせる必然性が不明なファンドだ。成績下位で目立ったのは、米国のエネルギー関連の金融商品で運用する投信や、国内REITを組み入れた投信だった。やはりシェールガスの話のテーマ性のもの、またはどう考えても国内REITの調子が良い筈がないという拙著で書いた見立ては当たっていた。