なんでGPIFの運用収益は実額で論じるの?

前から不思議なのだが、何故年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用収益については、なぜ実額ベース議論をしようとするのだろうか?

見出しで「公的年金2年ぶり黒字 昨年度運用益、株価回復で7.9兆円」と金額で表示すると、あまりに規模が大き過ぎて殆どの人はキョトンとするだけではないのか?リアリティを持たせない作戦なのか?

また運用利回りが年5.86%のプラスという数値が、良いのか悪いのかを議論しないとならないのではないだろうか?時節柄、パッシブ運用の素晴らしさがよく論じられているのだから、その観点で見て、これは良い(優れた)結果なのか? 悪い(誰でも出来た)結果なのか?を具体的に解説することの方が余程大事ではないだろうか?

実はこの運用期間(3月末までの1年間)において、日本株の運用指標であるTOPIXは12.3%上昇、外株のMSCIコクサイは円換算で11.3%上昇となっている。長期金利の指標となる新発10年物日本国債利回りは11.5bp上昇し、米国債の10年物利回りは61.9bp上昇した。これらから判断して、運用利回りが年率5.86%というのは、良いのか、悪いのか。また当然、期中の運用状況なども、結果の±○○兆円という話では無く、精緻なものは出てこないのだろうか?

GPIFの運用資産は現在約145兆円。1%の変動で1.4~1.5兆円の変動が起こる。日経平均で言えば200円動いた程度の変動で、これだけの金額が増えたり減ったりする。分母が巨額ならば変動する金額も大きいのは当然の数学。なのにこの実額ベースの方で議論をする輩が多いから、きっと運用の現場では多くの制約を感じているのではないか。

事実、2015年度の運用が5.3兆円の赤字になったと発表された時は、「5.3兆円もの損失!」と騒がれたものだ。そして訳知り顔のコメントは「5.3兆円の損失でも、長期運用なら大して問題にならない」と意味不明な解釈が為されていたりもした。株の比率を増やすと宣言しても、なかなかそれが進まないのは、そうした運用現場への無言の圧力の影響はないのだろうか?

どうして精緻なパフォーマンス分析をした結果が発表されたり報道されたりしないのだろうか?GPIFは今回ベンチマークを変えると発表したのは既報の通り。今後は、そのベンチマークに対して、どういう運用になったのかを、正確に伝えて欲しいものだ。またそもそも、そのアセットアロケーションの決定自体も良かったのか悪かったのかという点も教えて欲しいものだ。

ファンドマネージャーならば、自分の運用が上手くいっているのか、どうにもギッタンバッコンしているのか、その本音の部分は“必ず”わかっている筈。駄目に見える時に開き直るのでも、良い時に驕るのでもなく、粛々と「良い運用」が出来ているのか、意図した運用となっているのか、それは分っている筈。国民の血税と同じく強制徴収して運用している以上、そうしたレベルの開示が必要ではないだろうか。またそうすれば、徒に政争の道具ともされずに、独立してベストな運用を追究できるであろう。

私もファンドの総額が1,000億円を超えた頃から、実額を見ると感覚がおかしくなるのを感じた。1%で10億円の変動。日経平均が僅か100円動いただけで今なら5億円程度は毎日増えたり減ったりする勘定だ。総額が3,500億円を超えている頃、NYのビルにジェット機が2機突っ込んだ。今後どうなるのか、考えたくなくても考えてしまうのが人情だが、努めて思考回路から実額ベースの変動額を排除するようにした。それが冷静に次の一手を考える唯一の方法だからだ。そういう意味で、運用者としてのパフォーマンス評価の話を、GPIFについても聞いてみたいものだ。

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は7日、2016年度の運用益が7兆9363億円だったと発表した。5兆円超の運用損を計上した15年度から一転、2年ぶりの黒字。資産の5割弱を