1月中旬からいつものように10-12月期の四半期決算の発表が始まった。目覚ましい決算ならば喜ばしい限りだが、失望を買って急落するケースだってあり得る。中にはストップ安になる場合だってある。売るに売れない売り気配。そんな時はどうしたら良いのだろうか?

狼狽してオロオロするだけの投資家が一番駄目

気持ちは分からないでもないが、一番駄目な反応がただ狼狽してオロオロすること。株式投資をしていれば、決算発表がきっかけのケースだけでなく、保有銘柄がストップ安で売るに売れないなんてことは必ず経験するものだ。どんなに精緻な投資価値分析をしていたとしても、一度もストップ安を経験しない、経験したことが無い投資家なんて居ないだろう。

決算発表絡み以外でよくある「ストップ安」のケースは、新薬開発や治験の見通しが持て囃されて上昇した薬品株だ。でも「副作用が出た」「治験の結果が良くなかった」「厚労省の認可が下りなかった」などの発表があれば、あっと言う間に掌返しに合う。

実は私は薬品株が一番苦手だ。なぜなら上のようなケースは外部からは予見不可能だからだ。「凄い新薬らしく、もう間もなく認可が下りるらしいです」などと言うセールストークは、今でもよく聞く話だが、どうして厚労省が認可するかしないかの情報がリークされると信じてしまうのだろう。こうしたケースの場合、その情報元に「あなたが言ったじゃないか」と詰め寄るしか対応策はない。そして得られるのは「すみません、私も情報元に確認してみます」という誠実そうで埒が明かない返答だけだ。

ただ決算の発表内容を受けての急落ならば、投資家として狼狽する前に出来ることは沢山ある。とは言え、やってはいけないことはクヨクヨと株価をじっと眺め続けること。どんなに見つめていても、急落している事実、或いはストップ安売り気配で身動き取れない現実は変わらない。見ていて気分を悪くするだけなら、株価など見ていない方が良い。

なんで投資したのか、その原点に帰ることから始めよう

Fund Garageのプレミアム会員の方には「エントリーノート」を書くことをお薦めしているが、どんな人でも株を買うにはその銘柄を選んだ理由がある筈だ。ベテランの投資家なら、チャート分析に頼ってテクニカルな視点からだけで投資を決めることもあるだろう。そのレベルの投資家に私がお伝えすることは何もない。きっとご自身で蓄積されたノウハウがある筈だからだ。ここでお手伝いしたいのは、まだまだ株式投資の若葉マークが取れていない人だ。

そこで、まず思い出して欲しいのは、また、もしエントリーノートをつけているならば確認して欲しいのは、どうしてその銘柄に投資することにしたのか、その着眼点だ。例えば「新しいiPhoneが凄く売れそう、或いは売れているから」とか、「円安になることで収益が上振れる筈だから」といった理由などだ。何をどう考えたから、その銘柄にお金を注いだのか、決断した判断材料だ。恐らく前者の「凄く売れそう」的な着眼点の方がより基本的な投資方法で、後者の財務内容の見立てなどの方がやや専門的な投資方法だ。

もし、その当初の投資の着眼点が思い出せれば、或いは記録が残っていれば、その着眼点が間違っていたかどうかをチェックすることが最初にすべきことであり、また次の投資方針を考える上で唯一すべきことだとも言える。

投資の着眼点は間違っていないと判断された場合

決算発表の結果で株価がストップ安している場合、残念ながら投資の着眼点が間違っていなかったという例は実はそんなに多くない。

例えば「新しいiPhoneが凄く売れそう」だと思って手を出した銘柄が、実際にもしiPhoneは凄く売れているにも関わらず、決算で嘆かわしい数字が発表されたとしたら、実はその銘柄はiPhone関連銘柄では無かったのかも知れない。或いは「凄く」と思った度合いが、市場の期待値の方が遥かに高かったのかも知れない。つまり自分は仮に100万台を凄いと思ったが、市場の期待値は1,000万台だったのかも知れない。当然、iPhoneが売れていなければ、しのこの言うまでも無い。

もう一つの例で言えば、実際に円安になったのに期待外れだったのだとしたら、市場は120円ではなく、130円を予想して収益予想を立てていたのかも知れないし、その企業の経理が予め為替予約を行っていて、その為替差益を充分に享受出来ないようになっていたのかも知れない。実際に後者のような例は円安見通しでも、円高見通しの時でもよく起こり得る話だ。だからやや専門的な投資方法だと前述した。

ただ時々着眼点は間違っていなかったのに・・・というケースがある。代表的な例が「期ズレ」と言われるものだ。つまり今期の売上に計上されると見込まれていたものが、何らかの理由によって来期に回されてしまったようなケースだ。実はこのケースも現実にはよくある話だ。

製造期間が短くて市場に投入される商品の場合にはあまり起こり得ないが、受注から製造、そして設置(納品)してメーカー側が収益計上するまでに半年以上掛かる商品などの場合、この「期ズレ」という事態は割とよく起こるものだ。大工さんに新築工事を依頼して、「秋までには仕上げますよ」と言われていたのに、実際には梅雨の長雨や台風のせいで年末ぎりぎりや年明けまで完工がずれ込むなんてことはよくある話だ。正にこれと同じことが、例えば半導体製造装置やクリーンルームの建設などではよく起きる。造船や航空機産業でも同じだ。

機関投資家の売買の流れを理解して置こう

年金運用、投資信託の運用、或いは生命保険のインハウス運用など、機関投資家と呼ばれる人達の運用規模は個人のそれとは比較にならない程に当然大きい。1,000億円のファンドが100銘柄に等金額投資をしていた場合でさえ、ひと銘柄への投資金額は10億円となる。

(日本取引所グループWebページより)

上記の表は日本取引所グループが公表している東証一部の1日の売買代金上位30銘柄の一覧だ。この表は2020年1月31日分。数字が小さくて恐縮だが、第30位のJR東日本の売買代金は15,508とあり、単位は百万円。つまり155億円ということになる。

もし10億円分の株式を売り切りたいと機関投資家が考えたとしたら、さて、どうやって売り切るだろうか?指値?成行?

正解は当然そのどちらでもない。一日の売買代金が150億円しか無い銘柄を10億円分の売るなり、買うなりの執行をしようと思ったら、これは細かく板付きを見ながら、指値をしたり、成行で執行したり、徐々に行って取引を完了させるのが通常だ。

1990年代まではファンドマネージャーが自ら細かく執行指図を証券会社に発注していたが、以降はトレーダー制が導入され、投資判断と売買執行の分離が行われた。つまりファンドマネージャーはトレーダーに「今日中に○○を100万株売ってください」とオーダーするだけで、後の対応はトレーダーが行う。勿論、市場が急変したり、どうにも一日で執行し切りれないと判断されたりした時は、トレーダーからファンドマネージャーに照会があるが、通常はトレーダーが専門家として最良執行を行う。

もし「ストップ安売り気配」になって大引まで値がつかなかったら

当然、希望する量など売るに売れない。制度としては、最後に買い需要の件数と勘案して比例配分という形で割当株数が決まる。

実は米国株にはこの「ストップ値幅制限」という制度がない。故に値段はどんどん下がるが、売りたい株数が売れ残ることはまずない。そしてそもそもの市場の厚みが違うので「不出来」ということには殆どならない。

問題は日本のこの「ストップ値幅制限」という厄介な制度だ。決算の内容に失望し、ファンドマネージャーが「全部売り切ってくれ」とトレーダーに指示を出しても、ストップ安のところで「特別売り気配」となってしまえば、もう手も足も出ない。最終的に比例配分の結果を聞いて、「100万株のうち95万株が売れ残りました。明日も続けますか?」という結果報告が返ってきてしまう。

普通は仕方ないので「明日もお願いします」ということになるのだが、ひとつ裏技がある。証券会社の自己ポジションで売り決めという特殊な商いをして貰う方法だ。だが当然証券会社のディーラーも値下がりする銘柄をサービスで抱え込むわけにはいかないので、売り捌けるであろう値段を計算して「15%下なら50万株まで売り決めします」などといってくる。これがどこか他の機関投資家の買い需要とマッチしていれば問題ないのだが、そうでなければ売り手が変わっただけで、翌日以降も市場の売り要因として継続することになる。

着眼点は間違ってなかった。でもストップ安売り気配のまま引けてしまった

ここからは投資家のセンスと、そして投資家の投資スタンスが問われることになる。しかしまずは前述したような、機関投資家などの「売り残し」が無いかどうか、様子を見てアクションを起こすのが正解だ。一般的にはストップ安売り気配のままで前日取引が終わった銘柄が、翌日以降に急反発する例は殆ど無い。普通は売り残りが無くなるまではダラダラと値が下がる。値が下がると、新たな「ストップロス」(持ち値の評価損が膨らんで損切りルールに抵触すること)などを誘発することがあり、不安定な状態が続くことがある。この仕組みだけはよく覚えて置いて欲しい。

ただ逆に、当初の値下がりは決算発表の内容に失望した売りによる値下がりであったとしても、ある水準からは「売り需給」の偏りによる値下がりの場合がある。もし当初の投資の着眼点に間違いが無いことが確認出来たのならば、思わず安いところで買い増しが出来る可能性がある。勿論、当初の株数は持ったままなので、評価損は大きくなっているが、絶好のナンピン買いが出来るかも知れない。上手な投資家はこうやって平均の買値を下げつつ、次の上昇波動を待ったりするものだ。

着眼点が間違っていた場合

残念ながら、傷口が大きくならないように覚悟を決めて損切りをするのがひとつの方法だ。ただその企業が利益を出しているのならば、徐々にではあるが株価はある程度は戻って来る筈だ。特に慌てて現金化する必要が無いのなら、個人投資家の場合、そのまま持っている方が良いかも知れない。

ただここでひとつ大事な勉強をした筈だと思う。つまりエントリーの仕方だ。どうやって投資の着眼点を持ち、どうしてその投資の着眼点が間違ってしまったのかを、少々高い授業料になったかも知れないが、確実に学んだ筈だ。それを次の投資に活かすのがベストな方法だろう。損切りをして、損失を確定しない限り、まだ授業料が幾らだったのかさえも実はまだ決まっていないのだから。

いい加減なエントリーをしない限り、長い目で見ると、個人投資家は株式投資で負けることはあまりない筈だと思う。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事