振り返ると大変な一週間だった。前回予想した通り、日に日に新型コロナウイルスの感染者数が拡がるさまを見て、世界も市場も大混乱になり始めたからだ。その傍らで10-12月期の各企業の決算発表が本格化し始めた。そして先週末はNYダウが600ドルを超える下落を演じて幕を閉じ、英国がEUを脱退した。そして週明け、今度は春節が開けた上海と深センの取引が再開される。こんな時、実は投資家のすべき(売り買い)ことはあまり多くない。当然、その中に「狼狽」という文字は無い。誤解を恐れずに敢えてコメントすれば、投資をしていれば良くあること。「いや、今回は違う」という賢者も数多いるが、いつも「今回は違う」のである。同じだったことはただの一度もない。そして投資を続けることから決して逃げてはいけない。

日米各株式市場の先週の終値と週間騰落率

NY市場はどう動いて、今どこにいるのか?

まずは冷静に市場を見て置こう。下のチャートはNYダウの日足だ。最後に大きな大陰線を残して終わっている。寄付きが高値となって前日比△603.41ドルの下落。下髭は僅かに46.4ドル分しかない。先週末も新型コロナウイルスの話題で下落はしているが、その幅は僅か△170.36ドルに過ぎない。如何に今週はこの件で市場の腰が如何に引けたのかが分かって頂けよう。

また明らかに昨年10月からの上昇トレンドは崩れてしまっている。安易に「すぐ戻る」と考えるのは危険だろう。ただ繰り返しになるが、投資から逃げてはいけない。ピンチはチャンスでもある。

日本市場はどうなっているのか?

ならば日本市場はどうかと言えば、週末時点の株価は寧ろ反発して終了した。下のチャートだと少し見難いかも知れないが前日比で227.43円高。NT倍率も殆ど変わっていないので、週末の株価上昇は日経平均株価だけでなく市場全体が上げたと見ることが出来る。WHOの緊急事態宣言などで安心したというのだが、国際社会ではWHOへの非難が高まっている。テドロス事務局長(エチオピア出身)が中国から母国への経済支援を忖度して動き過ぎだという理由だ。また台湾をWHOの会議に呼んでいないことも話題になっている。


そうは言っても、いつもの最初の表を見て頂くと日米各市場の騰落率はそう遜色ない状況にある。似たり寄ったりだ。
ただ、先週末のNY市場の大幅下落を受けて、週明け月曜日の市場は見たくない景色で始まるだろうと思う。午前10時過ぎに上海と深センの取引が急落から始まれば、更に見たくなくなるかもしれない。日本市場はほぼほぼ米国市場の動きをなぞる。そして今回はアクセラレーターもついている。だがそれについても、いつもの市場の調整であるから仕方ない。嫌ならば株価を見ないで気にしなければ良い。

気掛かりな米国イールドカーブの動き

一方、今年に入ってから非常に私が気にしているのが米国のイールドカーブだ。昨年末12月31日のそれは水色の点線で示す通り、それなりに順イールド(期間が長いほど金利が高い)になっているのだが、赤色の点線で示す先週末のラインは完全に2年~5年ゾーンがより短い期間の金利よりも低くなっている。

この2年から5年のゾーンが結構な勢いで低下し、併せて10年債金利も先週末は1.50%だ。他にもたくさん話題があるから市場もいちいち拾わないのかも知れないが、少なくとも一昨年ならば「長短金利が逆転」と大騒ぎしたであろう内容だ。世界経済のスローダウンを危惧しながら、市場はかなりリスクオフのムードに入っていることを示している。

ただ一方で、別名「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は新型コロナウイルスの話題が拡がる前ののんべんだらりとした12ポイント台から18.84ポイントまで急上昇している。と言ってもまだ20ポイント以下なので、パニックになっているとは呼べないが、少なくとも「おかしなことになってきたな」という市場センチメントの反応は見て取れる。同様なことが日経平均でも起こっている。週末のヒストリカル・ボラティリティは18.4ポイントだ。昨年12月の平均値は10.85ポイントだから、如何に上昇しているかお分かり頂けるだろう。

実はこの程度にボラティリティはあった方が、日米共に株式市場としては健全だ。ボラティリティが下がってエネルギーなくフラフラと上昇する市場は必ずどっかで「グチャ」と崩れることが、理論的にも、経験則でも証明されている。ダラダラ上昇することに慣れてしまった市場関係者には冷や水を浴びせかけられたような気がするかも知れないが・・・。

この先の動向のまとめ

まとめると、まだまだ市場は方向感を見出せないだろうということ。そしてまずは上海と深センの取引再開の状況に注目だ。下落するのはほぼ固い線だが、どの程度となるか。ただ、こうした時だからこそ、確りと企業の決算発表内容を精査し、狙っているビジネス・トレンドがちゃんと右肩上がりかどうかを確認しておこう。結論としては、間違いなく注目のビジネス・トレンドは右肩上がりに続いている。少なくとも1月中に発表された企業の決算発表内容、ガイダンス、経営陣のコメントからはそれらを確信することが出来る。ただ株には個別に上下する理由があるのと同時に、市場全体に上にも下にも引き摺られる性質があることは忘れてはならない。株価変動を見た時、それがどっちの要因に起因するかは確りと見極めて行きたい。

注目の右肩上がりのビジネス・トレンドとトピックス

先週も非常に重要な企業の決算発表が相次いだ。この時期、年に4回はあるが、私の朝は異常に早い。たぶん、鶏よりも早い。

米国株は決算発表がNY本市場の引け後であっても、時間外取引で直ぐに市場が決算インプレッションを示すのも一つの理由。もうひとつは誰かが解説する前に、自分自身の目で決算資料を読み、Webcastingで当該企業のCEOとCFOのコメントを聞きたいからだ。余計な先入観・予断を持たずに決算を調べることが出来る。そしてそのWebcastingの中で、アナリスト達のQ&Aから市場の興味や認識レベルを推し量る。その上で、初めて市場の声なるコメントなどに接する。すると色んなことが見えて来るから面白い。こんなことが出来るようになったのは、インターネットの普及のお陰だ。

先週はお伝えしたように、次のような企業を注目していた。

1月28日 アップル(AAPL)
1月28日 アドバンスドマイクロデバイス(AMD)
1月28日 ジャニパーネットワークス(JNPR)
1月28日 ザイリンクス(XLNX)

1月29日 マイクロソフト(MSFT)
1月29日 ラムリサーチ(LRCX)
1月29日 クォルボ(QRVO)

1月30日 アマゾンドットコム(AMZN)
1月30日 ウェスタン・デジタル(WDC)

それでは、この中から幾つかピックアップしてみよう。

ザイリンクス(XLNX)

この中で正直残念な結果だったのは28日に発表したザイリンクスの決算だ。ガイダンスが市場を喜ばすレベルには到達しなかったからだ。とは言え、惨憺たるものであったわけでは無く、市場の時間軸と収益が一致しなかっただけというのが私の見立てだ。寧ろ、米中貿易摩擦の象徴的な存在であるファーウェイ社との取引が全く無くなっているにも関わらず、よくぞここまで健闘したものだと称賛したいぐらいに思っている。ご参照「ザイリンクスの決算で分かる「5Gはまだまだ始まったばかり」」

その決算内容の中でひとつ気になったのは、自動車関連だ。レベル3以上の自動運転の時代が来るのはまだ先なことは先刻承知だが、ADASシステムのようなものの進捗も想定以下にスローダウンを一時的にしているようで、「(クルマ屋さんのテンポが)遅れている」とのCEOコメントは残念と言わざるを得ない。

アドバンスドマイクロデバイス(AMD)

一方でアドバンスドマイクロデバイス(AMD)の決算内容及びリサ・スーCEOのプレゼンテーションは圧巻だった。株価は一年で150%も上昇しているので、利食いの格好の餌食となったのはご愛嬌として、前々週のインテルが本来言い訳がましくなるべき(技術的な困難なポイント)ところを清まして誤魔化したのと比べると、正に自信満々の痛快な一撃だった。強いて言えば、CES2020の基調講演で語った内容とそう大きくプログレスがあったわけでは無いので、一旦の手仕舞いあったのかも知れない。

ウェスタン・デジタル(WDC)

ウェスタン・デジタルの決算発表も良かった。下記は決算説明用資料からの抜粋だが、これを見てケチをつけるタイプの人は、きっと長期の投資家にはなれない。インテルをはじめとする他社のコメントなどとも整合的であり、何ら不安なところはない。特にOUTLOOKのところのコメントに注目して欲しい。

来週の注目決算

2月3日 アルファベット(GOOG)
2月3日 オン・セミコンダクター(ON)
2月3日 シスコ(CSCO)
2月3日 村田製作所(6981)

2月4日 KLAコーポレーション(KLAC)
2月4日 シーゲイトテクノロジー(STX)
2月4日 ローム(6963)
2月4日 ソニー(6758)

2月5日 クアルコム(QCOM)
2月5日 FireEye (FEYE)
2月5日 住友電工(5802)
2月5日 Zホールディングス(4689)

2月6日 資生堂(4911)
2月6日 テルモ(4543)

正規版のFG Premium Reportでは、
このあと「株主となってその企業と一緒に夢を見たいと思う会社10選」
および「個別の企業に関わるニュース・コメント」が解説と続きます。

 

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