米国のGlobal Tech Conferenceなどを参考にする

2000年代初めぐらいまで、すなわち日本の機関投資家相手のビジネスの利幅が厚かった頃までは、日本でも頻繁に開催されていたのが「テクノロジー・カンファレンス」などと名前を付けたハイテク企業のIRイベント。外資系証券会社主催で米国の多くの(本当に沢山)ハイテク企業を招聘して盛大にホテルの宴会場とスイートルームなどを借り切って行われていた。

今ならさしずめFANG(Facebook、Apple、NVIDIA、Google)などのCEO、当時はインテルやマイクロソフトなどのCEOが必ず一人は基調講演を行って、テーマ別に複数の宴会場で各社のプレゼンテーションが行われ、希望すればワンオンワン(1対1)のミーティングもすることが出来た。日本で行う場合は、勿論同時通訳付き。こんなイベントが年に数回はあったが、残念ながら、今ではあるのかないのか分からない。あってもその規模はだいぶ縮小してしまった。

だが、米国本国では今でも頻繁に盛大に行われている。ニューヨークかボストン(機関投資家が沢山いるため)のホテルを貸し切って行っている場合が多いが、実は6月初旬も「RBC Capital Markets Future of Mobility Conference」と「Bank of America Merrill Lynch 2019 Global Technology Conference」が既に行われている。因みにNVIDIAのプレゼンテーションについては、同社のWebサイトからWebcastingに飛ぶことが出来る。参考までにURLを記載する。

https://investor.nvidia.com/events-and-presentations/events-and-presentations/default.aspx
下記はそこから飛んだWebcastingの画面


当然ながら日本語への同時通訳は無いが、訪ねてみる価値は間違いなく充分にある。企業の本音が聞けるからだ。内容的には、担当のアナリストが進行役となり、市場が気にしているであろう内容の質問をぶつけて、それに対してCEOなりCFOなどが回答するというものが多い。各社のWebサイト(本国版)からIRページに行って「Event & Presentation」などというのを探せば良い。13日のロンドン時間の午後1時からはイギリスで「Nasdaq’s 40th London Investor Conference」が行われた。

どのカンファレンスでも必ず足元の状況、課題、見通しについてアナリスト、若しくは会場にいる機関投資家などが質問をぶつけるので、今この瞬間の企業側の生の声が国境を超えて聞けるまたとないチャンスでもあるので、是非録音を配信しているものでも視聴されることをお勧めする。ただ悶々と「なんで、どうなるの?」と株価の行く末を途方に暮れて案じていても投資は成功しない。

AMDのカンファレンスでのひとコマを紹介すると・・・

Bank of America Merrill Lynchの「 2019 Global Technology Conference」にはAMDも参加していた。コメントをしていたのはIR担当のSenior Vice PresidentのRuth Cotter氏だが、約40分にわたるコマの中でアナリストのVivek Arya氏がこんな質問をしている。その一例を紹介する。

質問:「今年度がスタートした3か月前と比べて、中国との貿易摩擦などの問題の中で、需要をどう捉えているか、変化はありましたか?」

これに対してAMDとして

「基本的には長期の経営戦略に注力しています。ただ足元ではデータセンターや競合などにも在庫処理問題はあると思います。ただ一般に言われている仮想通貨に関わるGPUの在庫については、順調に消化していると言えます。中国はとても重要な市場でやはりそこでも在庫の問題には触れていますが、産業界全体として対応しています。米中貿易摩擦問題に関しては、業界として、或いはSIA(Semiconductor Industry Association:業界団体)などと協力して動いています。この問題に関しては注意深く監視し、関税の問題でもあるのでリスクを如何に小さくするか、お客様のためにも動いています。一方で、我々は中国以外にも二つのファンドリー・パートナー(半導体製造請負企業)を持っていますので、そんなに悪い状況では無いと思います。寧ろ我々は、これからローンチする新製品のことに集中しています」

というようにコメントしている。

これを受けてアナリストの方が

「基本的に関税に関する問題は、サプライチェーンが既に対応していることで軽減できていて、需要に関しては、マクロ景気がどうであれ、これからの新製品投入がカバーしていくということですね」

と締め括り、次の質問に流れていく。

(より詳細な各企業のこうしたWebcastingで視聴出来るものについては、プレミアム会員向け「Premium会員限定記事」の中で、重要なポイントを翻訳してお伝えしています)

フィラデルフィア半導体指数のアップダウンなどをどう捉えるべきか

米国内といえども、全ての投資家(機関投資家、個人投資家を問わず)が、一週間前に開催されたこうしたカンファレンスでのやり取りを逐一フォローしているわけでは当然ありえない。だからこそ、それを伝える証券マンがおり、フィナンシャル・アドバイザーなどが情報伝達のためにいるわけだ。

また証券会社のアナリストも、バイサイド・アナリストと呼ばれる機関投資家側のアナリストも、仕入れた情報を即座に解析して、判断して、レポートにまとめてと動けるわけではない。言い換えれば、こうした生の情報に触れれば、それは彼らと同じ土俵に立っていられるという事だ。そのインフラは、日本よりも米国の方が確りしているのは確かだが。

さて、多くの企業のWebcastingを聞いて、私なりにふたつに総括をした。

  1. 米中貿易摩擦問題の先鋭化もあり、1-3月期決算を公表した4月から5月に想定していた状況よりは、データセンターの設備投資の戻りは鈍く、在庫の解消も後ずれしているのは確かな様子
  2. ただどの企業も異口同音に、この先に見えている半導体や電子部品の需要は大きいという。それは、爆発的に膨張するデータ量に見合う為に行われるデータセンターの設備投資を背景にしており、クラウドの拡充が必要であり、AI技術の更なる発展があり、5Gを伴う自動運転やIoTなどがまだまだこれから始まることを確信しているからだ。

確かに米中貿易摩擦問題の先鋭化は市場の喉に刺さった、かなり太い魚の骨であることは事実。だが一方で、時代の流れが止まっていないのもこれまた事実。ならば、このエアポケットで投資家がすべきことは何か、答えは自明のものと考える。

Part-3(プレミアム会員限定記事)では、より詳細に掘り下げて、現状をどう捉え、どういう投資行動を起こすべきか、元ファンドマネージャーとしての考えをお伝えする。

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