株式投資で目利きをする場合には、単に出来上がったレポートや記事を見るだけではなく、それなりに突っ込んだ分析、仮説の繰り返しが必要になる。この記事は「半導体」についてある事象(PC自作)をきっかけに何を感じ、どのような投資アイディアに結びついていくのかをお伝えする。

半導体についての理解が必要な部分もあり馴染みにくい記述もあるかもしれないが、このような洞察のプロセスをご自身が深く理解している業界や企業に応用していただき、株式投資に役立てていただければ幸いである。

半導体市況は悪い、が定説

米中貿易摩擦問題再燃と市場右往左往しているNY現地5月9日のフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は1.2%の下落。既に今週に入り6%下落しており、週間では昨年12月以来の大幅な下げとなっている。確かに足元では米中問題が大きく影響しているかも知れないが、産業のコメとも呼ばれる半導体業界の状況を見るには、もうひとつ「天邪鬼」になって、突っ込んだ業界事情を知っておいた方が良いと思う。

それによって、何故韓国サムスン電子が6割以上の減益決算をしたのか、その背景にあるメモリー価格の下落はどうして起きているのか、そしてこの先、投資対象として半導体関連銘柄とどう向き合えば良いかが見えて来ると思うからだ。

米中問題は早晩何ならかの形で決着するだろう。でもそうした問題などとは関係の無いところでハイテク産業の技術革新、言うならばAI、5G、IoT、自動運転、クラウドコンピューティングなど加速していく。

謂わば、半導体の大量消費がこの先益々加速する。ならばどうすれば良いのか。この記事ではややマニアックな内容になるかもしれないが、株式投資で結果を出すためには、単に表面的な事象をとらえるのではなく、その背景までとらえて今後の展望をする必要があるとご理解いただければ幸いである。

そうすれば、なぜインテルが8日に開催したインベスター・ミーティングで、スワンCEOが「今後3年間の業績見通しを示し、売上高と利益はともに1桁の伸びとなるほか、パソコン向け販売は横ばいにとどまるものの、データセンタ向けは2桁の伸びが期待できるとした。」かの真意が分かってくると思うからだ。インテルほどの業界のリーダーともなれば、これは同社一社の問題では無く、半導体業界全体、半導体関連全般に通じるインプリケーションを持っていると思って構わないと思う。

さて、ファンドマネージャーの天邪鬼物語を始めよう。

PC自作で感じた疑問

3月の終わり、私はいつもの手慣れた要領で1台の新しいパソコンを組んでいた。特にハイエンドのゲーミング・マシンが欲しいということでは無かったのと、依頼主(息子)の予算が7万円前後と少なかったこともあり、パソコン・ケースは再使用することとし、各パーツのメーカーには拘りつつも、スペックはやや妥協した。と言っても、最新モデルを組み上げるので、今まで息子が使っていたパソコンよりは格段に性能は上がる

世代が新しくなると格下げしてもこれだけCPUの性能はあがるもの

一番妥協したのが当然CPU。従来はCorei7を利用していたが、Corei5に格下げした。と言っても、実は性能的には最新の9th世代のCorei5の方が当然高い。いくらCore i7と言っても9年前のそれでは、技術レベルが格段に違うからだ。

一番如実にその違いが分かるのが、下表右から2番目の微細化レベル。所謂微細化技術がどこまで進んだかを知ることが出来るが、当時は45㎚、現状は14㎚。故に消費電力も95Wと随分と高い。勿論その他のスペックも対応するメモリーなども含めてだいぶ上回っている。コアの数だって、周波数だって、全ての面で上回りながら値段は下がっている。詳細は今回の話の本筋ではないので、細かな意味合いの説明は割愛させて頂くが、性能向上は一目瞭然である。

翌日配達で供給不足は気にならなかったが、思わぬ障害に困惑する

昨今よく聞く話として「インテルのCPUの供給が遅れている」という話がある。ただ注文をしたAmazonからは通常通り翌日発送でマザーボード類などを含めて、全てのパーツが予定通り納品されたので、この噂自体を殆ど気にすることは無かった。きっとパソコンのOEMメーカーなど、大量消費のB2Bの世界で多少の遅れが出ているものと暢気に考えていた。

しかし、実はその影響をこの組立て時から大きく受けていたことを知ったのは、このGW中に多くの日米企業の決算発表をチェックしている時だった(後述)。そしてこれから類推される問題は、株式投資をする者としては非常に大きなインプリケーションを持っていることに気がついた。想定外の“組立て時の障害”は、インテルの半導体製造の現状を如実に反映していたものだったのだ。

それは通常通りに組み立てても、初期動作確認の段階で「マザーボードが起動しない」という障害だ。普通、パソコンを自作で組み立てる場合、マザーボード(メインとなる基盤)にCPUを設置し、メモリー・モジュールを取り付け、パソコン・ケースに組み込む前に、通電テストをして、問題なくマザーボードのBIOSが読み込まれてモニターに表示されるかをチェックする。これを怠って全部組み立ててから、やおらスイッチを入れるようなことをすると、もし初期不良などの不具合があった場合にどのパーツに問題があるのかを切り分けるのにかなりの労力を要するからだ。そして昨今では、パーツの相性問題とか、初期不良ということは殆ど無いので、ある意味では儀式のようなものとなっている。

ところが今回、普通に通電してみると、Beep音(機器にエラーがある時に発せられる)が鳴ってしまい、マザーボードが起動しない。接触不良かと思い、何度かCPUとメモリー・モジュールの組付け直しをして試してみるものの、状況は一向に改善しない。ネットでその原因などを調べてみると、どうやらメモリーかグラフィック・チップに問題があるようなのだが、手持ちの正常に稼働するメモリー・モジュールに変えてみても状況は改善しない。

NVIDIA製のグラフィックス・カードGeForceに救われる

当初グラフィックス機能はCPU内蔵のものを使おうと思っていたが、もしかするとその機能を有効化するドライバーソフトを組立て後にインストールしないと駄目(ネットワーク機能などにはよくある話)なのかと思い、ひとまず手持ちの別付けのグラフィックス・カード(NVIDIA製のGeForce)を取り付けて再テストをしてみた。

すると案の定、何の問題もなくマザーボードも起動し、正常稼働することが確認出来た。「なら後からドライバーをインストールしよう」ということで、マザーボードの他に、SSDや光学ドライブ、電源ユニットなどをパソコン・ケースに組み込み、ドライバーソフトのインストール、Windows10のインストールなどを滞りなく完了させた。この段階で既にこのパソコンは通常に使えるようになったのだが、CPU内蔵のグラフィックス機能はどうなったかを確認するために、再度グラフィックス・カードを取り外してテストをしてみることにした。

結果は予想に反して芳しくない結果となった。これは何らかの初期不良の問題かと考えたが、NVIDIAのグラフィックス・カードGeForceを使う限り、全く問題無い状態であったので、息子に了解を取った上で「このまま使ってよ」ということで新しくなったパソコンを引き渡した。そしてこのことは正直、このGWまで完全に忘れてしまっていた。

この間、インテルからはサーバー向けのCPUである第2世代XEONプロセッサーの発表であったり、OptainメモリーなどのPress Releaseであったり前向きな発表が重なったこともあり、寧ろ物事は正常に流れているものと思っていた。

インテル「GPU非搭載の第9世代のCore iシリーズ発表」

しかしこの10連休の中、現地4月25日に発表されたインテルの決算内容を評価するために、同社のリリースを確認したりしていると、予想以上にこの問題は根が深いということが、多くのネット上の記事で気が付かされた。こうなると徹底的に調べるしかないと考え、検索「インテル CPU 供給不足」などとして調べ始めた。

そして驚愕の事実を発見した。「GPU非搭載の第9世代のCore iシリーズ発表」というものだ。インテルのCore iシリーズと言えば、同社のパソコン向けCPUとしては主力のモデ ルであり、いくつかグレードはあるものの、それらは今まで全てGPU、つまりグラフィックス機能のコアを搭載しており、特にゲーマーなどのように画像描画性能に強いこだわりが無い限り、全てCPUの機能の中で賄えていた。更に言えば、近年ではその能力も大幅に改善され、普通にパソコンを使う限り、特別なグラフィックス・カードなどは必要が無いものである筈だった。現に低価格のパソコンにはグラフィックス・カードは使われていない。

そこで私は思い出した。「あの息子のために作ったパソコンのCPU、第9世代のCorei5を使ったが、もしかするGPU非搭載のモデルでは無かったのか?」ということである。冒頭の写真を見て貰えれば分かるが、型番は「Corei5-9400F」とある。正にこの末尾のFこそがGPU非搭載のモデルである証だったのだ。

ひとつの問題は解消した。それは例のパソコンは初期不良品を使ったのではなく、当初からGPU非搭載だったので、グラフィックス・カードを載せなければ動かないのは当然だったのだ。ではなぜインテルはこの段階でGPU非搭載のCPUを発表しないとならないのだろうか?

きっとそれは「インテルのCPU供給が不足」という問題に関係があるのだろうとピンときた。これは今後の投資アイデアを考える中で、きっちりと調べてみる価値があると思われた。

何故なら、インテルのCPUの供給不足こそ、昨今のパソコンやサーバーの周辺部品、代表的なところで言えばメモリーやHDD、或いはSSD(ソリッドステートドライブ:フラッシュメモリー)などの単価下落の大きな要因だからだ。

米中貿易摩擦でもなく、当然雇用統計やISM製造業景況感指数などマクロの話とは全く関係ない本質的な産業内での問題だからだ。逆に言えば、技術のロードマップの問題と言える。株式投資をする上で、きちんと掘り下げて、内容を確認しておく価値がある。きっとそれらがインプリケーションとなって、新たな投資アイデアと繋がる筈だから。

「なぜインテルのCPU供給が不足」となっているのか?

この話には諸説あるようだ。ただ一番腑に落ちた内容は以下のもの。

  1. 想定していた以上にIntelのCPUが売れてしまったこと
  2. インテルが設備投資を躊躇した4-5年前の影響が表面化こと
  3. 微細化技術の遅れで10㎚が立ち上がらず、未だに14㎚で生産していること

これら3つが複合要因となって、決算発表で見る通り第一四半期の売上は前年同期とほぼ同じであったにも関わらず、更にデータセンタ向けが振るわなかったにも関わらず、純利益はアナリスト予想を上回るというちぐはぐな決算となったのだろう。年後半には改善すると言いながらも、通期の予想のガイダンスを引き下げるというのも、同社の何か苦しい内情を伺わせるものである。

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