投資信託を選ぶ時には二つの方法でアプローチをする。

インフォメーションレシオを含む定量的な数値分析で評価する方法がひとつ。

もうひとつは目論見書や運用報告書、運用レポートなどを読み解いて行う定性的な評価方法。

一般には前者は数値の世界なので客観的な分析と言われ、後者は分析者の主観が含まれるので、合理性に欠ける場合があると言われたりもする。ただ、リアルに現場で運用をしていた立場からすると、この見方はやや短絡的かなと感じることが多いのも事実。

では、インフォメーションレシオとは何か、どうやって算出するのかを検討してみよう。

① インフォメーションレシオとは何か?
ファンドが設定しているベンチ―マーク(目標とする市場インデックス)に対して、どの程度リターンが乖離していたか、そしてその乖離の幅と頻度はどのようなものであったかを数値化したもの。この数値が大きいほど「上手にベンチマークを上回る運用をしている」という評価が与えられる。

② インフォメーションレシオの具体的な計算の仕方。

計算式は:
(ファンドのリターン - ベンチマークのリターン)÷(ベンチマークに対するファンドのリターンのブレ幅 “リスク”)

前項(ベンチマークのリターン - ファンドのリターン)は誰にでもすぐ簡単に計算出来る。単にベンチマークのある期間のリターンが10%で、ファンドのリターンが16%ならば、16%-10%で単純に6%となる。

問題は後項の方である。やはりここで登場するのがリスクの考え方なので、以前のコラムで説明した標準偏差が利用される。

例えば過去一年間の話であれば、前項は一年間の期初と期末のリターンの差を計算し、後項は月次リターンの差の12か月分などの標準偏差が使われる。

簡単に言えば、1年間通期では6%の対ベンチマークの超過収益があったファンドが、その稼ぎ方として、コンスタントに0.5%ずつ上回っているならば、その標準偏差は小さくなるので、インフォメーションレシオは大きくなる。

一方で、5%上回る月もあれば、6%下回る月もあったりしながら、結果として一年間では6%ベンチマークに勝ったのだとすれば、そのブレ幅の標準偏差は大きくなるので、分母としてリスクが大きくなるため、インフォメーションレシオは小さくなる。

これはイメージするだけでもどちらが「ベンチマークを安定的に上回る上手な運用」と感じられるのかは明らかであろう。答えは当然前者である。

しかしインフォメーションレシオの考え方の大前提は、ベンチマークとの相対的な比較という考え方があり、これはファンドがベンチマークを設定しているという前提が必要となり、ベンチマーク自体の絶対リターンは関係が無い。

ここでの問題点はふたつ。
① アクティブファンドは必ずベンチマークを設定しているのか、或いは設定すべきなのかどうかという問題
② ベンチマーク自体が上下にアップダウンが激しいものである一方、ファンドはベンチマークが大きく上がる時にも値上がりしない代わりに、ベンチマークが下がる時にも大きく値下がりしないステディー(安定した)な値上がりのし方をした場合、月々の乖離は大きくなるので、そのベンチマークリターンからのブレ幅分、リスク(標準偏差)が大きくなってしまうという問題

まずは①について考察してみると:
そもそもベンチマークという概念が何時頃から何のために日本に浸透し始めたかと言えば、1990年代の半ばに主として年金運用の世界から導入され、浸透してきた考え方である。事実、私が90年代に開発設定し、ファンドオブザイヤーも獲得したファンドはベンチマークを設定していない。私が開発設定し、運用してきたファンドは全て同様である。

年金基金の運用に代表される多くの資産クラスに国際分散投資しているような場合は、ポートフォリオのアセットアロケーションを決める段階で各資産クラスの代表的なインデックスを計算根拠にしているので、そのインデックスを上回るようにということでそれをベンチマークとすることは理に適っている。つまり、各資産クラスのファンドの運用目的が、ポートフォリオ全体としてのリターンを構成する一要素という前提の場合である。

一方で、多くの個人投資家の方が現状そうであるように、個々の投資信託の良し悪しを評価基準とした上で、単品買いを積み重ねて結果としてのポートフォリオを保有している場合、そもそもアセットアロケーションという考え方が導入されていないので、ベンチマークが必要かどうかは疑問が残る。

ベンチマークがあるファンドを運用する場合は、そのベンチマークのリスク特性にまず近づけることを考えた上で、そこから勝ちに行く分だけリスク特性を歪ませる運用をする。故にその運用者はベンチマーク自体の上下変動自体には頓着することは少なく、仮にベンチマークが10%下落したとしても、ファンドが8%の下落で済めば、たとえ絶対値では損失計上となっていても、ベンチマークに2%勝ったことになり、何の痛手もない。

しかし、多くの単品買いの投資家がそうであるように、市場が下がろうが何だろうが「せっかく専門家に高いお金を払った(信託報酬)にもかかわらず、損をするとは何事か!」というメンタリティになってしまうだろう。

ということは、対ベンチマークでの相対リターンの稼ぎ方の是非を問うインフォメーションレシオの多寡にどんな意味があるのかということになる。

次に②について考察してみると:
私がプライベートバンクでインベストメント・ソリューションチームのヘッドをしていた5年間で痛感したのは、日本では超富裕層と雖も、相対リターンではなく、絶対リターンが嗜好まれ、追及される場合が多いということである。殆どのお客様がそうであったとも言える。ただターゲットは「インフレ率」であり、資産価値がインフレに対して目減りしないことが第一ということで、資産を殖やしたいというニーズとは若干相違があったのも事実ではある。

とはいえ、明らかなのは市場がどんなに下がろうとも、それよりも下落していませんから勝っていますという言い訳は、単品買いのお客様には、いくら説明しても腹落ちしては頂けないということである。

寧ろ②のケースでインフォメーションレシオ的にはベンチマークから乖離することが多く悪い値となるファンドの方が、ニーズにも合い、お客様の心の平穏も保たれることになる。

インフォメーションレシオは国際分散投資のように、きちんと目標とするアセットアロケーションを定めて、ポートフォリオとしてトータルリターンを管理/運用する場合には、評価尺度として有用である。Fund Garageとしてもコアのポートフォリオはかくあるべきと考えている。

ただその一方で、個々のファンドの良し悪しを判断して運用されている場合には、「このファンドは良いファンドですよ。インフォメーションレシオも高いので、上手な運用がなされています」という単純なセールストークには身構える必要がある。もしあなたの運用が国際分散投資など、ベンチマークを定めた運用で無いのなら意味のないセールストークを聞かされているだけなのだから。

お客様の運用ニーズ、運用スタイルを正しく理解した上で、どんな投資信託が適しているかどうかは検討すべきである。そして私は定量分析のデータなども参考にした上で、定性分析を独自のスタイルで重視して良し悪しを判断する。取分け、そのファンドマネージャーや投資信託が、成長フェーズの中でどの段階にあるかなどを重視している。

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