円が安全資産と見做されている関係で、昨今の株価下落の中で「円高なので株安になりますね」という論調をよく耳にします。と言っても、113円程度から110円台になっただけなのを「円高だ」と殊更に騒ぐこともおかしな話だと思ってはいるのですが・・・・。

株式市場に長く関わっている(1988年からファンドマネージャーをしてきました)と、この単純な説明にはいつも違和感を覚えます。というのは、為替動向と株式市場の動向には、一貫した相関性は本当は無いからです。相関係数の正負が逆転することがあります。

確かに、1995年に日米貿易摩擦から急速な円高誘導がされた時などは、明確に日本の輸出産業潰しという米国側の意図がありましたので、その局面では円高は輸出関連銘柄を中心に売られる要因となりました。しかし・・・。

1.日本企業は為替変動に強くなった

日本企業の底力はその頃より明らかで、多くの輸出企業が為替変動の影響を極力排除出来るように手を打ってきました。今でも「古い」タイプの見立てでは「1円の円高で○○億円の損失に繋がる」という見方をする場合がありますが、往々にして蓋を開けてみると、その為替差損金額はそうした計算ほどには出ないことが多々あります。

それは、多くの輸出企業が現地調達比率を高めたり、現地生産を増やしたり、ドル建ての取引の影響を小さくするようにビジネス構造のリストラに動いたからです。それでも2000年代の初めは、対ドルの為替変動は吸収出来ても、ユーロ建ては上手く準備が整っていない企業もあり、対ユーロでの為替変動が損益に影響大だった企業はありましたが、それもかなり改善された筈です。

2.外国人投資家はドル建てで運用している

もうひとつ重要なことは、外国人投資家は日本株の評価をドル建てで行っているということです。すなわち通常の日経平均株価の動きで説明される動きではなく、ドル建ての日経平均株価の動きで説明される動きを取るという事です。その結果がどうなるかと言えば、円高になるほど日経平均株価、すなわち日本株のパフォーマンスは良くなるという事です。日経平均株価が20000円として、1ドルが120円ならば、ドル建てでは約166.67ドルになりますが、1ドルが100円ならばドル建てでは200ドルになるということです。単純な算数ですね。だから「円高になると、日本人は利食えなくても、外国人投資家はまだ売れる」という理屈もありますが、日本市場の外国人投資家の占有率が約7割というこの時代、外国人投資家の動きを単純に円建ての日経平均株価の動きで捉えるのは正しくないかも知れません。

3.2003年以降、暫くは円高は株高要因だった

日本がまだバブル崩壊の痛手を処理しきれずにいた頃、ついに日本の銀行の最終的な整理が行われた2003年頃から(公的資金の注入など)、外国人投資家が日本の銀行株を中心に大きく買い越しに転じ、日経平均株価が7000円台から大きく反騰し、2006年3月には17000円台を回復したことがあります。そう小泉政権の頃の話です。

この相場の始まりの頃、よく言われたのは「円高だから株高」です。その理由は上述のドル建て日経平均株価の考え方もありますが「外国人投資家が日本株を買うために円を買うから円高になる」という理屈です。海外市場の取引時間で円高が進むと、その日の株価は上昇しました。

また確かに輸出企業にとって円高はそれでも重石になりますが、輸入関連企業にとってはプラスの材料となります。

「円高だから株安、円安だから株高」というのは、あまりに短絡的な発想かも知れないということは、頭の片隅に置いておかれても損は無いと思います。仮にインデックス的にはそういう動きになったとしても、円高で収益を高められる企業は、個別には数多あるという事を忘れてはいけないと思います。

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