「株式投資はその企業の所有権に投資をすること」、どこの講演会に行ってもいつも同じことを言っています。

 

つまりその企業の部分所有者になるということです。

部分所有って分かり難いかも知れませんが、或る意味では分譲マンションの一戸を買うことと同じだと思ってください。
そのマンション全体が企業であり、そこに住む全ての人達とそのマンションを共有することであり、だからこそマンションの管理委員会や自治会で全体の補修工事の計画や日々のゴミの出し方の相談なんかをされますよね。

株を買うということは、基本的にはそれと似た行為で、株主全員でその企業を所有することを意味します。最上階の5LDKやペントハウスの住人も居れば、1DKや1Kに住む単身者の方もいらっしゃるかもしれませんが、みんなで一つの棟(タワー)を所有するという事では同じことだと言えます。

 

分譲マンションを買う時には何を検討されますか?

単に間取りや陽当たりなどだけでは無い筈です。

立地や管理運営主体(デベロッパー)についてもそうでしょうし、
共用部分やエントランスのデザインなども勿論検討対象でしょう。

そして最も大事なのが「値段」。

投資に見合うだけの価値があるのかないのか、長い住宅ローンを組む価値があるのかないのか、そこには多くの検討要素がある筈です。
その為に、相当深く細かく調査し、他の物件と比較検討される筈です。「東京都港区にある南向きの3LDK、多分値上がりしそうです」といった程度の情報だけで大枚を投じる人はまず居ないと思います。

 

でも時々、いや割と頻繁に耳にするのは、株式投資についてはその程度の情報でアクションを起こされる方が多いという現実です。
それは実際のマンションが建つ前に、モデルルームやショウルームを見ただけで購入を決断するというのとは全然訳が違います(個人的には現在のデベロッパーのマンション販売方法を問題無しとは思いませんが・・・)。

別の言い方をすると、その投資家の方と投資対象の極端なミスマッチです。
私から見ると「この企業がどういうビジネスをして収益を挙げているのか、この人は本当に理解されているのかな?」と思う例があまりに沢山あります。
端的な例で申し上げれば、パソコンにもスマホにも縁遠そうな高齢な方がSNS関連企業などの株を買われている場合です。

 

私は現役のファンドマネージャー時代、「わからないもの、知らないものには投資をしない」ということを自らの掟として定めていました。

お客様からお預かりした大切な資金を運用する以上、自分で充分な説明が出来ない投資はしないことが倫理義務だと思っていたからです。
だからこそ、仮にそれが米国企業であろうとも、必ず投資の最終判断を下すまでに当該企業の本社を訪ね、最低でもIR(インベスター・リレーションズ)担当者、出来ればCEO(社長)やCFO(最高財務責任者)、或いはCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)などへインタビューをし、その企業が何たるかを知ることに全力を注いできました。

 

「そんなことは、あなたが専門のファンドマネージャーだったから出来たことで、素人の個人投資家にそんなことは出来ません」という反論が直ぐにでも聞こえて来そうです。
仰る通りです。あれは職業としてファンドマネージャーをしていて、大きな運用会社に所属していたからこそ簡単に出来たのだと思います。
でも種明かしをすれば、これは投資判断の最終的なチェック、駄目押し的な側面が強く、実はそれに至るまでに、つまり現地に赴くまでに既に投資判断の9割近くは決まっていると言えます。

コンサートの本番では、仮に指揮者が居なくても、それまでの練習の方が重要で、演奏は殆ど問題なく行うことが出来るのと同じことです。

 

ただ一方で職業投資判断者ですから「常に人より一歩先の情報をより深く手に入れておく必要もあったことから続けていた」という面もありますが、これは一般の個人投資家の方には必要ない要素とも言えます。

 

肝心なのはその段階に入る前のプロセスです。

まずはその企業の商品やサービスに触れてみるのが企業調査の第一歩であったことは言うまでもありません。その一例が「紙おむつを履いてみた」話ですが、それ以外の例としても、Windows95の頃から現役のファンドマネージャーを引退した今でもなおパソコンは自作を続けていますし、ハイテク関係の新製品は可能な限り手に入れて試す様にしています。

アマゾンは日本でのサービス開始からのヘビーユーザーですし、Facebookを始める前はミクシーも使っていました。週末、家内のお供でデパートやスーパーに頻繁について行くのも市場調査の一環ですし、スキューバーダイビングのインストラクターとして、積極的に若い世代の人達と接する機会を作っているのも、違う世代の流行や価値観に常に聞き耳を立てるためです。

そんな中でよく私が不思議に思うことは、「この企業のビジネスは良くわからないなぁ」と私のような元ファンドマネージャーでさえ思うような企業でも、IPOなどで公募価格よりも結構高い値段で初値取引が行われたりすることです。

つまり「その株を買うこと」に人気が出ているということです。
誰が買っているのだろう?と思うことが良くあります。
ただ残念なことに、そうした企業の株価は初値界隈がほぼ高値となり、その後は右肩下がりに値下がりを続けていることが多いということが、私の疑問に答えを投げ掛けています。

 

かのウォーレン・バフェットでさえ、今から20歳近く若い頃(60代後半)に遭遇したITバブルの中で、「インターネット関連は良くわからない」と言って、amazon.comの株には手が出せなかったという有名な話があります。
その後、彼なりに色々と調査分析して同社の劣後債から投資を始めたと聞いていますが、これこそ「知らないものには手を出さない方が良い」と投資の大名人からの貴重なメッセージだと思いませんか?

 

ウォーレン・バフェットと私を同列で語るのはおおいに引け目を感じますが、私も殆ど手を出したことが無い(だから私のポートフォリオは常に歪んでいました)セクターがあります。

それは薬品株と銀行株。薬品株は新薬の開発状況や売れ行きで株価が変動することが多いのですが、正直、自分で飲んだり塗ったりしたことが無い薬の効能は良くわからないからです。

また自分は長年銀行籍のファンドマネージャーであったにもかかわらず、銀行の収益の内情は本当に良くわかりませんでした。90年代の不良債権の現実なんて、直接その処理に関わっている元上司や先輩たちから直に聞く話と、当時著名な銀行担当アナリストの見解が全く正反対なんてことが頻繁にあったからです。これも実話です。

 

そんな中で、唯一投資したことがある薬品株があります。それはバイアグラで一気に盛り返したファイザー(Pfizer)です。このエピソードは面白い話なのですが、ちょっとブログに書ける内容では無いので、機会があれば直接お話したいと思います。
誤解無きよう念のため言っておきますが、至って真面目な話です。ニューヨークにある同社本社を訪ね、直接関係者から話を聞いて、初めて私にも理解し得る成長ストーリーだと、「なるほどそれならガッテンだ!」と納得が行って、最終的に投資判断に至りました。
結果は言うまでもなく大成功でした。
でも、仮に失敗していたとしても、どの点の投信判断が間違っていたのかを理解することが出来たと思います。

 

知らないものに投資しても、儲かってしまえば「勝てば官軍」なのは事実です。
肝心なのは、絶好調の頃のイチローでさえ10割打者にはなれなかったのと同様に、絶対に100発100中は有り得ない以上、失敗した投資から学ぶことが大事です。

その時、もし知らないものに投資をしていたら、何をどう間違ったのかを自ら検証することが出来ません。そこがポイントなのですから。

 

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