トヨタとマツダの相互出資を歓迎する

トヨタとマツダが相互に株式を持ち合い、将来2020年の電気自動車発売に向けての共同開発等を開始する。この動きは両社にとってハッピーだし、シナジー効果も大きく、投資家としても歓迎したい。

1. 欧州では、ベンツもBMWも必ずしもプレミアムではない。

かつて独シュツットガルトにあるメルセデスベンツの本社には頻繁に通ったが、意外な発見をしたことがある。ヨーロッパに行くと、ベンツやBMWの中大型車が、マニュアル・シフトで内装もかなり簡素(パワーウィンドウすら、全窓に対応していない)なタクシーとしてガンガン利用されているのを見るため、それはプレミアム・セグメントとしての認識しかない日本人には最初相当に驚きをもって受け取られる意外な事実だが、それ以上に意外な発見がメルセデスベンツの従業員と話していてあった。

2. 意外と知られていない、マツダの欧州での人気

とは言うものの、個人が普通に乗ろうとする乗用車仕様にまで車を仕立てると、そこはやはりベンツやBMWは高級プレミアム・セグメントの一員となってくる。結果、メルセデスベンツの社員といえども、そうそうおいそれとは手が出ない値段になってしまうそうである。ある時、ベンツの新型車の覆面テストを見せて貰う為に、ベンツのテストコースまでIR部門のアシスタントの運転するCクラスで二人きりのドライブを楽しむ機会があった。そこで道中、つまらないことを聞いてみた。「これはあなたの車?社割とかあるの?」と。すると意外な答えが返ってきた。「これは社用車よ。社員向けの優遇制度は勿論あるけれど、それでも私のような若い女性社員にはCクラスでも手が出ないわ」というものであった。私は社員でもやっぱりそう簡単には手が出ないんだと驚いたが「じゃあ、他だと何が欲しいの?」と続けると「マツダが良いわ。ベンツはまだ手が届かないけど、マツダはデザインも良いし、性能も良い。ドイツではベンツの次に人気なのよ」と真顔で答えてくれた。

3. 欧州に根を張り、ディーゼルにも強いマツダとその反対のトヨタ

ここ数年こそ、マツダの目を見張るようなデザインは、日本市場でも人気となっているため、マツダが人気だと聞いても大して驚かれないかもしれないが、当時のマツダは主力が日本で言うところのカペラだったりした頃で、日本国内での人気はお世辞にも褒められたものでは無かった。ただ、明らかだったのは、トヨタやホンダ、或いは日産が大型車に注力する傍らで、比較的小型のヨーロッパ市場で人気のサイズに注力していたことだ。またマツダはそのヨーロッパ市場での影響もあり、早くから欧州で人気のディーゼル車に力を入れてきた。世界戦略車のビッツ(現地名ヤリス)にプジョーからディーゼルエンジンの供給を受けたトヨタとは大きな違いである。と言っても、マツダのディーゼルエンジンの燃料噴射装置コモンレールは、ボッシュ製では勿論なく、トヨタグループのデンソーが提供していたのだが・・・。

4. マツダだけが持つ技術、それはロータリーエンジン

トヨタはハイブリッド車では確固たる地位を築いたが、マツダは自社製では全く追いついていない。だが世界で唯一マツダだけが市販用量産エンジンとして確立した技術があるのが、かのロータリーエンジンである。このロータリーエンジンが案外とハイブリッド車のエンジンとして技術的に可能性が高いということは有名な話。更に言えば、ロータリーエンジンはガソリンではなく、水素エンジンとしても可能性が高いエンジンなのも事実。何かここに今回の資本提携の意図が見え隠れするように思うのは私の思い過ごしだろうか?スバルは有名な水平対向エンジンを持っていたが、トヨタと資本提携するまで、かなり厳しい時を過ごし、今では完全復活したかに見えるのだから。

5. トヨタグループの技術力の裾野は広い。

前述したように、マツダのディーゼルエンジンを支えるコモンレールはデンソー製である。また多くの部品でトヨタ系列の自動車部品メーカーのものが使われている。トヨタグループはグループとしての結束力は高いが、かと言って、グループ内だけで話を完結させず、各社独自にしのぎを削って他社への食い込みを果たすことで、その技術力を上げてきた。またパナソニックとの関係のように、グループ企業という括りにはならないが、トヨタに協業する企業の裾野は広い。今回のマツダとの資本提携では、トヨタはマツダ自体から多くのことを吸収出来る筈だし、マツダはその巨人トヨタの多くのリソースにアクセスすることが出来るようになる。双方にとってとてもメリットのある資本提携だと思う。

6. 電気自動車は良いが、AIにはまだ極端に期待すべきではない

具体的に電気自動車の発表タイミングを公表している以上、これは計画通りに進むと思っていて間違いないと思うが、ことAIに関しては、何を人工頭脳を使ったものと期待するか、言い換えるとAIとは何かの定義の仕方の違いで、期待の仕方も落胆の仕方も大きく違ってくるだろうと思っている。AIの基本は自己学習と推論。AIが人気のキーワードになって、マイクロソフトもAI半導体の開発に参入などと言われるようになって、やや報道に過熱感を感じるがAIの基本はそれ以上でもそれ以下でもない。まだまだナイトライダーに出てきたキット2000並みの電子頭脳のスーパーカーが出るところまでは来ていない。それは自動車に採用するには、電機業界のそれでは考えつかないほどのフェールセール機能が求められるからでもある。その意味でも、電気自動車を資本提携の目先の果実と置いている今回の提携は、投資家サイドから見ても大変歓迎出来るものだと思う。