投資信託は「プロが運用する、初心者向け商品」という理解は正しいか?

投資信託は「プロが運用する、初心者向け商品」という理解は正しいか?

多くの金融機関の窓口などで、「投資信託は運用のプロがお客様に代わって投資を行う、正に初心向けの金融商品なんです」という説明をよく耳にする。「投信なんて、投資の初心者か、ずぶの素人がお試しに買ってみるものだよ」と豪語されるお客様や金融機関の販売者さえいるのも事実。またインターネットや、メディアなどでも同様な説明をよく聞いたりするが、この説明は本当に正しいのだろうか?

確かにこの説明が投資信託のある一面を表していることは事実であるが、現実的に見てみると、実は二つの大きな間違いを指摘することが出来る。まずひとつめは、運用しているのは必ずしも「プロ」では無いということ。「プロ」の意味を、運用を“専業”としているという意味として定義するなら「プロ」には違いないのだが、一般的に「プロ」という言葉には「プロゴルファー」のように“素人よりも上手”という意味が込めて使われる。もしこの意味を込めるのであれば、「プロが運用する」という説明は間違いである。なぜなら、中には新米ホヤホヤの駆け出しのもいるし、キャリアだけは長いが一向に上達しない者もいる。今では絶滅したであろうと思われるが、嘗ては入社/入行年次や肩書だけでその任に就いたものさえいた。

背景にあるのは、運用者になるのにプロゴルファーで言うところのプロ試験、プロ野球選手で言うところの甲子園選抜や大学野球での実績、或いはダイビング・インストラクターのような教育プログラムや資格試験は存在しないからである。単に身分証明書を添えて金融庁に登録しさえすれば良い。そんなテクニカルには誰でもがなれる職業が運用者、すなわちファンドマネージャーに他ならないからである。百聞は一見に如かず、現役のファンドマネージャーの中には、証券アナリスト協会が実施するアナリスト検定すら合格していない者が沢山いる。

もうひとつは、必ずしも「初心者向けの商品」では無いということである。「投資のプロが、素人の貴方に代わって投資をします」という文脈だけで捉えるのならば、確かに投信は「初心者向けの商品」と言えるかも知れないが、金融機関の販売現場の専門家がその説明書や目論見書を読んでも、その中身がどんな運用なのか理解出来ないような複雑な投信が実際に数多ある。実際の話として、私でも「この投信はどうしたら儲かるのだろう?」と、商品パンフレットや目論見書を読んでもさっぱり理解出来ない投信が、某大手金融機関の店頭で大々的に販売されていた。

その典型的な例がデリバティブを使っている投信や、何らかの運用モデルに従って運用される投信である。「ベテランのファンドマネージャーが、毎月●●社以上の投資対象先を直接訪問して徹底したボトムアップ・リサーチを行い、今後大きな値上がりが期待出来る銘柄に投資します」というようなファンドは、今やアンティーク家具に等しい状況なのだ。アクティブ運用に対しての否定的な見方が増えている昨今では、このタイプの投資信託は既に絶滅危惧種に近いかも知れない。

現在の投資信託は大きく言えば2極化していて、ひとつはローコストを追求したパッシブ運用のもの、もうひとつはデリバティブや定量的な運用モデルに従って運用されるオルタナティブ型などと呼ばれるものである。前者は如何にローコストに市場インデックスに連動させることが出来るかを追求したタイプであり、後者は如何に伝統的な資産クラスとの相関性を排除して安定的に絶対リターンを追求することが出来るかにチャレンジしたタイプである。

こう言えば既にお察しの通り、これらはどちらも初心者向けの商品とは言えない。前者はアセットアロケーションをきちんと計算して、個々人のリスク・リターン特性に最適化したポートフォリオを構築するパーツとして利用するのが本来の姿であり、専門的なアセットアロケーションの必要性は後日改めて議論するとして、それこそ専門家のノウハウが必要な商品である。「卵をひとつの籠に盛ってはいけない」という、教科書の最初のページに出てくる、あまりに基本的なフレーズだけを頼りに、誰でもアセットアロケーションを決めることが出来るなどとは努々思うことなかれ。「下手の分散、休むに似たり」と笑われるのが関の山である。

後者は言わずもがな、ファンドがどんなポリシーで運用されているのかを理解するのには(自分のお金がどうリスクに振り向けられて、その結果としてのリターンを期待しているのか)、かなり専門的な知識が必要とされる。すなわち初心者が安易に取り組めば「あなたを信じて、私の大事な虎の子の使い道、すべて“お・ま・か・せ”」と、ハートマークはつけないまでも、かなりそれに近い状態になるということだ。

まずはこの辺の投資信託の最近の事情を理解してからでないと、投資信託という本来はとても画期的で素晴らしい投資のツールは、延々と日本では資産運用の脇役以上にはなれないだろう。