アウディの自動運転、レベル3は賭け過ぎる気がする

アウディ(AUDI)が市販車でレベル3の自動運転車を2017年秋にドイツで発売するという。「中央分離帯のある高速道路で時速60キロメートル以下の走行時という制限」というものだが、どうにも実感が沸かない。時速60キロメートル以下で走っている高速道路とは、如何なるものか?

ドイツにはご承知の通り、アウトバーンと呼ばれる速度無制限の高速道路が存在する。実際に、フランクフルト、ミュンヘン、シュツットガルトなどの都市を回るのに、空港でレンタカー借りて何度も実際に自分で行き来していたことがある。発見したのは、速度が無制限になっているのは、だいぶ田舎に出てからだけで、都市部や街中エリアでは時速100キロの制限が多く、また日本などとは違い、結構真剣にその100キロ制限のエリアに突入する時には、ドイツのドライバーは真剣に減速をし、走行速度を制限以下まで落とす。ただ、60キロ以下のエリアというのは、あまり記憶がない。実際にどこでその自動運転機能が使えるのだろうか?アイコンでしかない気もするが・・・。

レベル4やレベル5の自動運転については、私はそう簡単に展開することは出来ないであろうと考えている。仮にそれが部分的な、或いは上記のような条件付きだとしてもである。何故なら、まず普通に考えて、相当なインフラの改善/準備が必要な筈だからだ。その第一が位置情報を車が把握するためのGPS機能と、殆ど全車両が車車間通信機能を搭載しているというような状況の示現だ。GPSは機能については、2次元平面的な測量のみならず、3次元的に首都高速の上に居るのか、その下の246(青山通り)を走っているのかの正確な区別に加えて、GPS電波の届かないトンネル内をどうするのかという課題もある。バイクが近くをすり抜ける時、何センチまでなら横にずれても、並走する他車に接触しないですむのか?センサー類で制御するにしても、際どい最終判断は「止める」以外にないのかなども含まれる。

交差点での出会いがしらの衝突を避けるためには、GPSよりも車車間通信などが有効になろう。その為には、IoTではないが、常に各車がネットワークにアクセスしている必要があるが、パソコンやスマホのそれのように、落ちたり、フリーズしたり、エラーが出ては絶対にいけない通信機能だ。

センサーの正確さ、耐久性、万が一壊れた場合のフェールセーフも検討されつくす必要がある。6個のカメラやレーザースキャナーで周囲の状況を検知し、車線変更や突然の障害物回避を自動で行うというが、冗長性はどの程度あるのだろうか?つまりひとつのセンサーが突然走行中に壊れた場合、若しくは壊れた信号を送らずに壊れた場合などである。

そして何より心配なのがヒューマンエラーである。レベル3では、中央分離帯が無くなったり、或いは時速が60キロを超えるような状態で走行しないとならなくなったりすると、車の要請に応じ手動に切り替えるといった必要があるという。本当にドライバーは即座に臨戦態勢に戻ってステアリングを握り直す対応が出来るのだろうか?

私が頻繁にダイビングに行くことはご存知の方も多いと思うが、高速道路や自動車専用道路では、頻繁にレベル1「自動ブレーキなどの運転支援機能」のついたレーザークルーズ・コントロールというのを使っている。これはステアリングこそドライバーがコントロールするが、ある一定速度で設定しておけば、前車との距離を測定し、ブレーキ制御やシフトダウンを自動で行ってくれて衝突を回避するシステム。突然の割り込みなどにもきちんと対応するので、のんびりと走りたい時にはうってつけの装備である。ただ、正直言って疲れている時は、寧ろ緊張感の無さから眠たくなる。だからこそ使うのだが・・・。とは言え、ステアリングは自分が握っているので、強い減速感があったり、アラームが鳴ったりすれば、勿論、普通に自分でブレーキを踏むところまでは覚醒する。

しかし、もしステアリングも手放しして良いとなると、グッタリと落ちて寝てしまうドライバーは出ないのであろうか?いざとなれば、運転席をシェークするなりして、無理やり覚醒させるのだろうか?一度ノンレム睡眠に落ちてしまうと、そう簡単に起きない人がいるのは事実あろう。

勿論、家電メーカーではなく、自動車メーカーが導入するシステムであるから、相当な検証と確信をもって、フェールセーフなどの危機対応は織り込み済みであると思われるが、正直、若干心許ない気がするのは私だけだろうか?対前方衝突回避システムのメディア向け発表会で、ボルボのそれが、多くのメディアを前に、自信満々に段ボールで作った壁に激突した話はあまりにも有名である。また中央分離帯があっても、先日の事故のように、対向車線へ中央分離帯を乗り越えてフライング・アタック(?)を掛けることも可能だということも明らかになった。

運転手の目の動きを監視して、ドライバーが覚醒しているか否かを判定するシステムもあるのは知っているが、最後の最後、誰(ドライバー?車?)がどう自車の制御を行うかはこの手の進歩の最重要検討課題だと思う。

ETCの導入が始まってから20年近いにもかかわらず、相変わらずゲートに突進して封鎖しているドライバーが居ることを忘れてはならない。ついうっかり、或いは、良く知りませんでしたは言い訳の常套句だ。私はこの分野でのAIについては、モーターショウ・レベルでの技術開発と、実路面でのそれとでは、相当に開きがあり、まだ時間が掛かるものと思っている。

でも、自動車の安全装置開発って本当に凄い。何が凄いって、その技術者達の意地というか、執念というか、自分達の技術に絶対的な革新が持てるまで努力する姿勢とか。定期的に某社のそうした技術の開発部長さんお二人(第一部と第二部だったか)と飲みながら意見交換していたが、都度感心したのはその実直さ。そんな話はまた機会をあらためて。