村田製作所会長兼社長のコラムから

月曜日の朝刊というのは、実は毎週読むところが少なく面白くないのだが、今朝(7/10)の日経新聞朝刊3ページに「部品景気の先行きは スマホ高度化、需給逼迫」なる見出しで、大好きな会社のひとつである村田製作所の会長兼社長 村田恒夫氏のインタビュー記事があったので、そこだけは精読した。

同社を投資対象としてウォッチするようになってから既に20年以上になるが、地味な会社であるにもかかわらず、一貫して世界で市場シェアの高い電子部品を作り続けてこられた稀有な存在だ。大体、半導体の業界などがそうだが、平家物語のように盛者必衰のことわりをあらわすのが常なのだから。つまり韓国や台湾、或いは中国などへその優位性を取られてしまう。

記事でも紹介されているが、同社の強みの一つは日本の製造力に拘り続けていること。勿論海外工場が無いわけではないが、汎用品化する前の段階のものは日本国内での製造に拘り続けている。積層セラミックコンデンサの小さいやつ、電子基板の上にゴマかゴミかと見間違うほどの小さな部品であるが、粘土を土からこねて、薄い板というより膜状にしてそれを何層にも重ねて・・・、という気の遠くなるような細かい作業の結果がびっしりあれに詰まっているのだから驚かされる。日本でないと駄目なんですよと言われると、自ずと頷いてしまう。

もうひとつ印象的なコメントが記事中にあった。ただ、これが実は同社を投資対象として見ていく上で、ファンドマネージャーをいつも悩ませる厄介なものであるのも事実。それは「一般論でいえば、部品ビジネスは市況性が高いので、いい時も悪い時もあるが、業績が悪化したからといって、投資をやめるようでは競争力はつかない。苦しい時でも、長期的な見通しにたって、新製品の開発投資や工場投資を継続することが大切だと思う」(日経新聞朝刊7/4より引用)というくだり。確かに仰る通りで、この継続的な研究開発と設備投資があったからこそ、20年来投資対象として目が離せない存在なのだが、市場参加者の目線が、長期投資と言いつつも、四半期決算や、月次の受注動向でゴチャゴチャとノイズを醸し出す昨今、パフォーマンスを維持する上では、非常に取り組みにくい時がある。

アナリストの立場だと「今期は研究開発や設備投資の償却負担が重たく、やや利益成長は鈍化しますので、上値目途を○○円に一旦引き下げたいと思いますが、投資方針は買いを継続します」なんて、気楽なことを言ったりする。どうしろっていうの?と聞きたくなるようなカメレオン発言ではあるが、要は、暫く値下がりして上値は重いかも知れないが、どこかのタイミングで必ず戻るでしょう。だからコア銘柄として買い継続ということらしい。

一方、ファンドマネージャーのパフォーマンス評価は容赦なく日々のファンドの値動きで評価される。「あすなろ」銘柄を大量に保有していれば、夢が現実になるそれまでの間は基準価額の低迷に責め悩まされ続ける。

横道に逸れるが、決算発表や経済指標の発表に対する姿勢も、ファンドマネージャーとアナリストやエコノミストでは大きく異なる。その発表の事前に動くか、腹を括るかして祈るのがファンドマネージャー、「ビッグ・サプライズでしたね」とか「ネガティブ・サプライズ」などと発表後に驚いたり、感心したり、淡々とコメントすれば良いのが後者である。「○○ショック」などという言い方を後からしたり顔で出来るのも後者である。

別にファンドマネージャーは賭け事をしているわけではないので、綿密に自ら調査もしているし、多くのアナリストの話に耳を傾けて、総合判断をしてポジションを組んでいる。しかしだからと言って、いちいち決算発表などの前に「どっちに出るかわからないから、ポジションを減らしておいて、良ければ買い戻し、悪ければ売りっぱなし」などと言うわけにはいかない。

そして結果発表。「こりゃ酷いや、驚いた」などと感想を言っている場合ではない。薄れ行く買い板(値下がりし始めています)を相手に保有分を売りに行くのか、「一過性のものよ」とほっかむりして時の過行くのを待つか、或いは「ふふふ、これだから素人は・・・。よし、突っ込んだところを買いに行くぞ」と蛮勇振り絞って気合を入れるか、そうした判断を瞬時に行ってアクションを起こさなければならない。

これだけ言うと、単なるマゾでしかないように聞こえてしまうが、逆に「こりゃ凄い!」とポジティブに驚ける時(流石にそう滅多にはないのだけど)、どんどん買いが集まり値上がり行く我が子をウルウルしながら見つめている時の喜びと言ったら、この仕事の最高の醍醐味でもある。

日本の半導体、特にメモリー事業は見る影も失った。それは市況商品化したメモリー価格に幻惑されて、巨大組織の意思決定が、次の研究開発や設備投資を逡巡したり、横並び意識で一瞬遅れたりすることが多くなってからだ。昔は東芝、日立、富士通、NEC、三菱電機などなど、錚々たる面々の総合電機メーカーがDRAMを作っていたが、皆撤退したか売却した。村田製作所のコメントを見る限り、相変わらずファンドマネージャーとしては、ヤキモキさせられるのだろうが、間違いなく凄い日の丸企業のひとつであり続けるに違いない。