“面白い銘柄”って、なんですか?

昨日、前職の仲間と飲んでいて「バークレイズを退職して、今は自由な身だから、久し振りに株を買ったよ」と銘柄を打ち明けた。

それを聞いた仲間の反応は「つまんない。当たり前すぎて面白くない」とのコメント。実はこのコメントこそ、筆者がファンドマネージャーとして3,500億円ものポジションを持って運用していた頃からよく出くわす不思議なコメントの一つだ。

元々は定量分析を行うクォンツ・タイプのファンドマネージャーとしてデビューしたが、1994年に「さくら日本株オープン」を開発する頃から、個別企業については直接現地・現場に赴いて要人インタビューや、社食潜入(会社の雰囲気が一番よくわかる)をするなどの調査をしてから投資するボトムアップ・タイプの運用スタイルを取り入れたファンドマネージャーとなった。またそれが得意だったし、これが実に楽しかった。

なので、昨日挙げた銘柄は米株が3つ、シアトルの会社と、サンタクララの会社と、サンディエゴの会社をひとつずつ。どれもCEO、CFOなどに会ってインタビューをし、カフェテリアでサンドイッチをご馳走になったりした会社。なので、私にとってはとっても親しみのある会社であり、大好きな株主になりたい会社たち。

まあ、いつもこういう銘柄選択の方法を取りながら運用してきたのだけど、お客様や関係者からよく聞かれる質問が「何か面白い銘柄はありませんか?」というもので、仕方なく私が答えると殆どの場合、相手の顔に失望感が浮かぶ。「つまんね、ありきたりだな」というコメントが、口から出てくる前に顔に出る。これは相手が証券マンであっても、個人投資家であっても、マスコミの人であっても、いつも一緒。講演会のQ&Aセッションなんかだったら最悪で、会場内にメモを取る準備をする音がして静寂が訪れた後、ため息とペンを机に放る音が聞こえることがある。時には舌打ちさえも聞こえる時がある。

そして私はいつも悩んでしまう「面白い銘柄ってなんだろう?」と。名前を聞いたら自動的に笑いだせるような銘柄という意味でないことだけは確かだと思うが・・・・たぶん、誰も聞いたことが無いような銘柄で、こっそり自分だけが儲かるような大化け株というのが正解なのだろうが、残念ながら、私はそうした銘柄は存在しないと予てから考えている。

インサイダー情報なんてものは、そうそうあるものじゃないし、実際に出くわしたこともない。まあ、避けるようにしてきたからという面もあるが、そんな美味しい話は見たことも、聞いたこともない。

唯一無二な方法が、常にアンテナを高くして新しい技術やトレンドに気が付くようにし、常日頃からそうしたことに関連しそうな企業を地道に調査し続けておくこと。私はそれしか方法は無いと思っている。あと、現地調査をしないで買うのは怖い。往々にして、企業のIR担当者や社長、財務部長、或いはCEOやCFOを自分の会社に招いてしまって面談して済ませるケースを見かけるが、あれならしないよりはした方がまし、という程度の結果しか得られない。

喩ていうなら、時々ベンツやポルシェなどが不似合いなアパートやマンションの駐車場に止まっていることってありますよね。逆に結構な豪邸なのに、プリウスとかが止まっていることもあります。それぞれのお宅のご主人が、同じような格好をして、車でホテルのエントランスに乗り付けたら、どうなるでしょう?ホテルマンは家を知らないから、間違いなく車で判断せざるを得ないですよ。それと同じです。相手の陣地に赴いてこそ、そこがどんなところなのか、非常によくわかります。

会社の外では手揉みして低姿勢だった重役さんが、自社ビルの中を歩いている時は、殿様のように振舞っている時だって実際にあるんです。だからこそ、地道に自分の足で実際に調べに行ってみる。

そういうことをしながら選んできた銘柄を私は口にするのですが、「何か面白い銘柄は無いですか」という質問には、いつも期待を裏切ってしまいます。でも私は聞いてみたい。貴方は儲かる可能性が高い銘柄に投資がしたいのですか?それとも他人が気が付かないような材料が出るかも知れない、ちょっと奇をてらったような銘柄に投資がしたいのですか?