ヤマト運輸はおかしいよ、被害者はAmazon

Amazon(AMZN)という会社は、ウォーレン・バフェットが「インターネット関連株」については「よく分からないから買わない」と言っていた1998年前後の頃から、シアトルのAmazon.com本社を何度も訪ね、日本法人の現社長であるジャスパー・チャンさんが日本に赴任されてからは、日本でも何度もフォローアップをしながら、常にトップピックの投資先としてきたので、非常に身近な大好きな会社の一つ。筆者自身の顧客歴は2001年かららしい(Web上で確認)が、楽天グループで働いている間も、いつも便利に利用させて貰っていた。兎に角、発注から配達までの時間が早い。

更に今では、Amazonビデオ、Amazonミュージック、Amazon Drive(クラウドサービス)など、ネット通販以外のサービスもPrime会員の特典をフルに活かして、日常生活には無くてはならない存在となっている。勿論、電子書籍のKindleも使っている。

これら派生して出来たビジネスの前に、やはりAmazonの最大の魅力はネット通販の部分だ。Prime会員であれば、殆どの商品が送料無料で翌日には配達されてくる。おまけに、多くのもので、量販店で購入するよりも安いし、当然品揃えも豊富だ。最近では飲料類のまとめ買いは、まず間違いなくAmazonに頼む。何故なら玄関前まで運んでくれるから。

創業者ジェフ・ベゾスの考えは、当初からAmazonは物流会社だった。ネット企業と称賛されてきたけれど、またあのウォーレン・バフェットの目くらましにも当初なっていたのも、ネット企業の顔をした物流企業だったからだ。だから赤字を垂れ流し続けながらも物流網を整備していく姿勢の経営方針を評価出来なかったに違いない。因みに、バフェットも2000年代に入って、漸く劣後債から投資を始めたと聞く。

Amazonが日本に上陸した直後は、確か日通のペリカン便がかなり協力したと記憶している。アメリカのUPSなどの宅配便の正確さに比べて、日本のそれは格段に優れているとジャスパーさんが称賛されていたのをよく覚えている。東京の東雲のあたりに日通と共同で開設した物流センターを見学させて貰っているので、それは間違いない。

だが、ある時を境に、配送業者はヤマト運輸がメインになった。恐らく色々とヤマト運輸からが売込み交渉をし、そういう契約が成立したのであろうが、今になって「もうAmazonさんとは付き合えない」的な経営判断は、ヤマト運輸経営陣の経営者としての責任感を疑ってしまう。謂わば急成長する最大顧客のAmazonの勢いに、自社経営を追いつけさせることが出来なくなってしまっただけだ。その結果、会社を守るために、最大顧客の信頼を裏切ってサービス低下という選択をした。その先には、最終顧客が居る。宅配ドライバーの負担軽減のためと、あたかもブラック企業でなくなるための施策と映らせようとしているが、逆に言えば、Amazonを最大顧客としていたからこそ、ここまで急成長出来たともいえる。ある意味「恩を仇で返す」に等しい。

ドライバーの方の労働環境改善は当然だ。ブラック企業と言われ続けて良いわけがない。車を増やすなり、人員を増やすなり、報酬を改善するなり、経営陣がすべきことは山とあるはずだ。その為には、一旦利益を削る覚悟だって必要だろうし、そういう厳しい経営判断こそ、真の経営者のすることだ。飛躍する前には縮むのだから。市場もそういう理由ならば、一時的に損益が下振れすることを容認するに違いない。市場は馬鹿じゃないので。

恐らくジェフ・ベゾスはシアトルで苛々しているに違いない。それは他社に負けるかも知れないということではなく、自社の顧客にサービス低下を強いるしかないからだ。株主の方を向かず、自社の社員には厳しく、目線は顧客にしか向いていない彼の経営哲学にとって、今回の一連の宅配便トラブルは臍を嚙む思いに違いない。何かするだろう。

もしかすると、その資本力に物言わせてヤマト運輸を買収することを考えているかもしれない。そして現経営陣を総入れ替えし、Amazonの哲学に沿った動きをさせられる企業に変容させるかもしれない。他の物流企業を買収したり、新規に作ったりするのでは、ジェフ・ベゾスのスピード感覚にそぐわない。

まあ、それは夢物語としても、必ず何か物流の世界にAmazonらしい何かを仕掛けてくる筈だと思う。現に本国アメリカでそうやって成長してきた会社なのだから。Amazonがヤマト運輸買収なんてことになったら、株価は爆謄するだろうが、新たに宅配便業者を興すとか、ヤマト運輸から離れる戦略を取ることになったら、ヤマト運輸の株価は逆に暴落せざるを得ない。外資系企業のやることは大胆なのはご存知の通り。一旦意思決定してからの動きは速い。その意味では、ヤマト運輸の株は当分触らない方が無難だろう。そしてAmazonの動静からは当分目が離せない。