GPIFのESG投資について思うこと

ESG投資とは耳慣れない人もいるかも知れないが、ざっくり言えば、従前流行したSRI投資がより広範囲を対象として進化したもの。ESGが環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の略語であることから、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)の状況を考慮して行うSRI(社会的責任投資:Socially responsible investment)と基本的な考え方は極めて近似しているものと言える。

今朝の日経新聞朝刊によれば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がこのESG投資をはじめ、既に6月末までに3兆円の投資を行ったという。使われたベンチマークは恐らくMSCIが作成する2つ「MSCI 日本株女性活躍指数」と「MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数」とFTSEが作成する「FTSEブロッサムジャパン」の合計3種類の指数と思われる。

アクティブ運用が否定され、パッシブ運用が礼賛される昨今において、「それはベンチマークの設定がおかしいからだ」と主張してきた筆者としては、TOPIXを主たるベンチマークとしながらもSRI投資を標榜してきたGPIFが、投資哲学に適した指数をベンチマークとして採用したことは評価すべきことと思っている。これにより、ファンドマネージャーはアウトパフォームすべきベンチマーク指数が投資哲学と合致したので、無理にTOPIXとの連動制維持のための不要な銘柄を組み入れる必要がなくなった。

ただ注意して見ておきたいのは、単にこれら指数をベンチマークとしたパッシブ運用が為されるのか、或いは、アクティブ運用が為されるのか、ということである。今回選定されたベンチマークは両方ともMSCIとFTSEということで、日本製(古い発想だなぁ)ではない。またMSCIとFTSEにESG投資のノウハウがあるとは言え、その個々の採用銘柄を決めているのは両社のシステムであり、アナリスト達であるということである。それを金太郎飴を作るようにコピーしてポートフォリオを組むのであれば、笑い事ではなく、日本における日本人アクティブ・ファンドマネージャーは、完全に絶滅危惧種の指定を受けるしかない。

ESGでもSRIでも何でもいいが、その銘柄選定のためのリサーチはあくまでもリサーチであり、投資対象として最終的に市場の耳目を集め、多くの買いが入り、優秀な投資成果が挙げられる銘柄でポートフォリオを組めるかどうかは、本来はファンドマネージャーが得意とする投資判断の分野だからだ。これは財務諸表分析や機械的なスクリーニングでは求められる結果ではない。また、複数の銘柄の組み合わせによる有効フロンティアの中で、その投資家にとって最適なポイントを選定するのがファンドマネージャーの重要な職責である以上、単にインデックス投資をするならば、必要なのは事務員だけで良い。または簡単にAIロボットに置き換えられる。

逆に個々のインデックスに組み入れられている銘柄群を投資ユニバースとして、その中からの銘柄ピックで最大の投資成果を挙げるようにするというのならば、それは目的に合致するし、本来的なフィディーシュアリー・デューティーの発想だと思う。例えていうならば、プリフィックスされたお子様ランチを子供に夕食として食べさせるのか、或いは沢山おかずの並ぶバッフェスタイルの中で、自分の子供に適した(栄養価や好みなど)おかずを選択して与えるのか、料理をしていないという点では同じだけど、その出来上がりは随分と違う結果となる筈だ。

たぶん、GPIF側の考えとしては「運用資産規模が大き過ぎて、それを上述のような方法で運用するには、運用のリソースもインフラも足りない」というのが本音の一つだろう。なぜ、そんな事になったのかは、この業界が能々過去を顧みて反省し、今後の為にも手を打っていかなければならないことである。

そのひとつは、手数料自由化の流れの中で「発注手数料が安いことこそ良いこと」を錦の御旗に、執行については高い要求をしながら、払うべきものを極端に絞り込んだからだ。飴が無ければ鞭は痛いだけ。だから多くの外資系証券は日本株から撤退し本国やより肥沃なところに逃げ帰った。ずば抜けて時価総額の大きな東京市場から、アジアの金融センターが香港やシンガポールに移った理由は、地震や原発が怖いからではない。日本での金融ビジネス(マスリテール相手は無い投資銀行ビジネス)が儲からないからである。

GPIFがすることに右へ倣えの機関投資家が多いことをGPIFはより認識すべきであると思う。日本を代表する機関投資家のロールモデルとして、どう行動すべきか、能々考えて欲しいものだと今更ながら思う。