一時635円51銭安も演じて、大引け542円83銭安の21,181.64円の日経平均

普通、きっと動揺しますよね、これだけ下がれば。でも比較的、冷静に見ていることが出来るのは、非常にテクニカルな売りの出方が為に、株価が下がっているとしか思えないからだ。

リスク・パリティ戦略、或いはリスク・パリティ運用とは?

まずはリスク・パリティ戦略、或いはリスク・パリティ運用と最近頻繁に聞くようになった運用手法についてザっとおさらいをしておこう。

通常の分散投資では、各資産クラス(株や債券、或いはコモディティや不動産と言ったもの)毎の期待収益率とリスク、それにそれぞれの資産クラス同士の相関度合いなどを総合的に勘案してアセット・アロケーションを決定する。これが普通の伝統的な方法。

一方、最近流行のリスク・パリティ戦略では、期待収益ではなく、各資産クラスを保有することによる資産クラス毎のリスクを横並びに揃えようという考え方の運用を行う。従って、リスクが基本的に高い株式は、基本的に低い債券類よりも組入比率が端から低くなる傾向がある。ここでのリスクは基本的にはボラティリティと同義である。

「ぬるま湯相場」からの離脱に不向きなリスク・パリティ戦略

長らく続いた「ぬるま湯相場」、いや「適温相場」の中では、株のボラティリティが上がる局面は、どちらかと言えば、株が上昇する局面だった。故に、株価上昇(ボラティリティ上昇=リスク上昇)に合わせて緩やかに株式を売却することになり、緩々と下がる局面(ボラティリティ下落=リスク低下)でまた保有を増やすというような運用が続いていた。

しかし、本来はボラティリティの上昇は原資産価格の下落時に起こるもの。VIXと呼ばれる恐怖指数の動きを見ていれば、それが素直な反応だという事が分かるだろう。

故に、今回のようなVIXが上昇するような下落局面では、リスク・パリティ戦略で運用している投資資金は、株価が下がる中で更なる売りを出さねばならず、売りが売りを呼ぶ形になっている。それ自体は「そういう運用戦略なんだから」ということで、運用側のロジックは正当化されるであろう。

リスク・パリティ戦略の現状を考える

しかし「適温相場」、言ってみれば「ぬるま湯相場」が終わったと思える現在、このリスク・パリティ戦略のポートフォリオはどういう状態になっているのだろうか。

まず、株式ついては益々そのポジション量をリスクの増加に合わせて減らすことになり、元々債券が多く入っていたポートフォリオが、より「債券運用型」に近い状態になっているに違いない。勿論、コモディティや不動産という選択肢もあるが、不動産はREITでカバーするとしても、コモディティとして実際に投資出来るビークルは、案外あるようでない。またコモディティは基本的に右肩上がりにずっと上がり続ける性質のものでは無く、割と短期間にアップアンドダウンを繰り返す。インフレヘッジが主流となった場合には、コモディティの代表的な指数であるCRB指数などをトラックするように作られたETFなどは右肩上がりになるが、通常は上がったり下がったりというのが、コモディティのコモディティたる所以である。

さて、株のウェイトが減らされて、債券のウェイトが増えたポートフォリオ、この先に「良い投資収益」が上がることを期待されるのだろうか、ファンダメンタルズを冷静に考えてみたら面白い。

ファンダメンタルズから考えてみよう

株価が下がって、株から債券への乗換えが進めば、当然債券価格は上がるが、金利は当然下がることになる。これって、最近市場が気にしていた米国10年債利回りなどにどう影響するかと言えば、当然、不安を失くす方向に作用する。実際現時点3月2日の夕方6時半現在でBloombergで確認出来る米国10年債利回りは2.81%である。あれ?3%や3.5%に上がることを危惧していたのでは無かったっけ?というのが最初の問題点となる。

今朝のNY市場の下げの主因は、トランプ大統領が米鉄鋼メーカーの関係者らとの会談で、鉄鋼は25%、アルミニウムは10%の追加関税を課すと表明し、中国などと貿易戦争が激化するとの懸念が広がったことが大きい。もしそれが今朝の米国市場が危惧した通りになれば、きっと米国経済についても減速要因となり、パウエル議長がタカ派だろうが、ハト派であろうが、そう簡単に利上げを何回も出来る状態にはならなくなるだろう。

それでも、これはこれ、それはそれと、もしFRBが利上げを行い、危惧されている通りに金利が上昇する局面が来るとしたら、金利上昇=債券価格の下落である。リスク・パリティ戦略で各資産クラスのリスク量は揃っているかも知れないが、投資収益は上がるのだろうか?金利が上昇する局面でのんべんだらりと債券を保有し続ける運用者はそうは居ない。何故ならマイナス要因だから。

米国がトランプ大統領の発言そのままの追加関税を課し、それが米国経済の浮揚に水を差すようなことになれば、この秋の中間選挙に向かっては正に自殺行為だ。次の手として何をするのかは想像の域を出ないが、ホワイトハウスとしては、何としても米国景気を浮揚させ続けたままで秋の中間選挙を迎えなければならない。そうなるとすると、利上げも可能な状態を維持し続けることなる。

リスク・パリティ戦略の今後と市場動向

リスク・パリティ戦略のポートフォリオに話は戻って、ファンダメンタルズの状況が上記のようなシナリオならば、この戦略はもうワークしないことなる。もう適温相場ではないのだから。

だとすると、取るべきリスク・パリティ戦略の運用を行っていたポートフォリオが取るべき次のアクションは、リスク・パリティによって増やしてしまった債券を売り、そのお金を再度どこかに振り向けること。さもなければ座して死を待つことになる。それはコモディティですか?それとも不動産ですか?いえ、多分株しかないでしょう。債券部分から放出される大量の資金の受け皿になれるのは、やはり株しか無い。

もし、トランプ大統領が非常に頑固で、中間選挙のことなど気にせず、つまり米国経済の動向など気せず政策を推し進めるのならばこの限りでは無いが、さすがにそうした暴挙に出るとは常識的には考え難いのが中間選挙の年のアメリカである。

え?トランプ大統領は常識的では無い?はい、それが今最大のリスクだと思います。