世界株高、高所恐怖症をどこまで耐えられるかがカギ

高所恐怖症が拡がる

2018年に入ってからの株価の上昇が著しく見えることもあり、各所で「株高」に対する懸念が聞こえてきている。ちょうどいい具合に「ブル派」と「ベア派」が分かれている感じだ。強気が多過ぎてもいけないし、弱気が多過ぎてもいけない。その意味では、適度に両派が分かれているところに今回の上げ相場の面白味があるように思う。

まずは下のチャートを見て頂きたい。これは日経平均、TOPIX、そしてNYダウにNasdaq総合、更には香港ハンセン指数の過去5年間2013年からの株価推移を表している。

                                                                                          (Source:Bloomberg)

ご覧頂ける通り、この5年間で一番上昇したのはNasdaq総合指数で128.32%の上昇となっている。対するNYダウは87.54%と同じ米国内の株価指数同士で比較しても、約4割の開きが出ている。一方、日本市場では日経平均株価が119.55%の上昇に対して、TOPIXは109.23%でやはり約1割の差が出ている。この差はどこから来ているかと言えば、旧来型のビジネスよりも、ハイテクなどの技術革新により恩恵を受ける企業の伸長が著しいことが要因だ。これについては、過去5年間の世の中の動向を冷静に振り返ってみれば、疑問を挟む余地は無かろう。

5年前からの時代の流れを考える

5年前と言えばiPhoneはまだ2012年9月に発売のiPhone5か、若しくは2013年9月に出て来たiPhone5S/5Cの時代である。丁度CPUがA5からA6に変わる局面である。通信環境で言えば、商業的に「4G」を名乗るサービスは登場しているが、それは「3.5G」であったり「3.9G」であったりで、ITUが規定する厳密は「4G」規格の通信は未だAndoroidを含めて登場する以前である。

Amazon.comが提供するクラウドサービスについては、昨年の11月25日の日経新聞に丁度面白い記事「アマゾン、クラウドでも存在感 導入企業4年で5倍」というのが出ている。曰く「2013年に約2万社だった国内利用企業は現在十数万社。4年で5倍以上になった。クラウド利用に消極的だった金融機関も取り込み始めている」という内容だ。通信環境の変化(高速・広帯域化)が伴って、クラウドという全く従来になかったコンピューティングの世界が始まった。

今でこそ、自動運転という言葉をキーワードとして米国企業のNVIDIAなどが騒がれているが、2013年当時はまだ誰にもグラフィック・チップの会社程度の認識しか無かった時代である。GPUコンピューティングという考え方も、2003年ぐらいからシリコンバレーでは騒がれていたが、実質的に証券市場の会話に取り込まれるようになったのは、ごく最近のことだ。CPUとGPUと言われて違いを即答できる人はまだそう多くはない。更に言えば、ARMをソフトバンクが買収することを決した2015年当時、その株価の初期反応はストップ安である。ARMが何たるかを市場は知らなかった。

過去の”バブル”と呼ばれる時と比較する

確かなことは、この5年間に世の中のテクノロジーを取り巻く環境は大きく変化したという事だ。それは2000年前後のITバブルの時のように、コンセプチュアルな段階で夢を買った状況ではなく、リアルに新技術が実生活に影響を及ぼす状況の中で、慎重な投資家も後追い、順張りでFANG銘柄やMANT銘柄と呼ばれる銘柄に飛びついた状況だ。故に、5年間も掛けてNasdaq総合は約2.2倍にまで上昇したとも言えるだろう。当然、この間の金融環境は株価上昇にとっては極めてフェイバーな状態を、FRBや日銀などの中央銀行が演出している。決して、ITバブルの時のようにFRB議長自ら「根拠なき熱狂」などと揶揄されながら、蛇口を閉められながらも勢いづいた状態とは異なる。金融環境だけで言えば、プラザ合意後の日本の1980年代後半に似ているだろう。その時との大きな違いは「土地神話」という静的な価値しかないものに踊っている訳では無いという事だ。

地政学的なリスクについては冷戦後以降初めてと言われるほど、核の脅威が高まっていることは事実であり、また中東情勢も混沌とはしている。だからこそ「超呑気な状態」で浮かれることが出来ないでいるのが現実ではなかろうか。

バリュエーション指標で考える

私は特別にブルな訳ではない。単に冷静に過去との違いを見ているだけだ。PERに代表される株価バリュエーション指標で見ると米国S&P500の予想PERが約21倍というのは確かに高いのかも知れない。しかし一方で、日経平均株価のそれはまだ約15.63倍だ。TOPIXが17.44倍になっているのに比べると割安でもある。この理由は前述の通り、技術革新により恩恵を受ける企業が日経平均採用銘柄に多く、TOPIXやS&Pには旧態依然とした企業が含まれているからだとも言えよう。因みに、筆者が常に注目している日経平均のボラティリティ(HV)は16.9と極めて健全なレベルにある。高くも無ければ低くも無い。

もうひとつ面白い事は、1980年代後半のバブルの頃、PERなど伝統的なバリュエーション指標以外に注目されたものにQレシオなるものがあった。これは企業の保有する土地などの時価をも織り込んで、言うなれば「割安感を演出したい」ための指標を野村證券が考えだし、更に株価が上昇する余地があることを演出した。

一方、最近注目されているのはバフェット指数。かの有名な投資の神様とも言われるウォーレン・バフェット氏が愛用しているとされる、ある国のGDPと上場株式の時価総額の総和を比べる指標で、今朝の日経新聞でもそれが世界規模で110%に達していると、まるでQレシオの発想とはことなり「割高感を演出したい」ものとして引用されている。まったく当時と逆である。

夢でなく、現実で動いているのが今

ITバブルの時は、光ファイバー化によるブロードバンドや無線LANの実用化の話、PCとTVの融合、半導体製造の超微細化の話など、今になって現実に身近なものとなった技術に浮かれた。クラウドコンピューティングも、SUNWのスコット・マクネリー氏が1990年代後半に提唱したネットワーク・コンピューティングが具現化したものと言えなくもない。つまり今はかなり現実的なものの見方で市場が動いているといると言える。

株価が上がってくると誰もが「高所恐怖症」に陥るものだ。またそうした慎重論を唱えている方が賢者に見えるのも事実だし、上がったものはいつかは下がるので、ずっと唱えていれば必ず当たるものである。ただ冷静に考えた時、今ここで株価が大きく下押ししないとならない理由を合理的に見つけることは難しいと思っているだけである。