運用レポートの言っていることとやっていることが違う実例

まずは下のチャートを見て頂きたい。某国際分散投資のバランス型ファンドの直近の運用レポートに記載されている2017年8月からのアセット・アロケーションの変化をビジュアル化したものだ。薄い黄緑のような色が短期金融資産等すなわち現金等価物であり、赤が債券、水色が株式である。これを見て、どういういマーケット見通しに基づいて運用しているのかをまず想像してみて欲しい。

筆者が思うに、相当にリスク・コウシャス(リスク回避的)な運用を志向していると見るが皆さんはどうだろうか?債券が6割近い組み入れ比率であったところが、目下40%を切っている。株式はほぼ横一直線に見えるので、20%弱の比率をこの間ずっと維持しているので、債券は殆ど現金等価物に置き換わったと考えて良い。その場合の収益は短期金利相当だ。為替リスクを取っていれば各国投資先の短期金利となるが、為替ヘッジしていれば、円金利相当である。みずほ信託がGPIFにマイナス金利下のコストを求めるような時代であるから、どの程度の収益かは簡単に予想がつく。すなわちゼロだ。

気になったのは、この状況下で運用報告書に記載されている「今後の運用方針」である。曰く「引き続き、欧州や日本等の株式や社債市場など、幅広いリスク資産に前向きです」とある。また続けて「当ファンドのリスクは、市場の下落リスクに備えつつも、市場の下落時にリスク資産を増やすことが可能な水準です」とある。すなわちこう解釈出来る。「幅広いリスク資産に前向きながら、市場が大きく下落することを予想しているので、キャッシュ相当物のウェイトをかなり引上げ、下落に備えています」と。

翻って市場の方であるが、NYダウやNASDAQはこの間も休むことなく一本調子で上げている。日経平均株価でさえ9月の始めから約3500円上昇した。ヨーロッパでユーロストックス50を見ると、ボラタイルではあるが、少なくとも8月頃の水準に比べると現状は6-7%は上昇している。

付け加えておくと、この全期間において、信託報酬料率に基づいて計算された手数料はファンドの損金として毎日天引きされている。

私はこれ以上に踏み込んだ発言は控えるが、投資家がファンドを見ていく上で注目すべき点は、言っていることとやっていることの整合性である。そこに整合性が無ければ、「投資を信じて託するのが投資信託」という大前提の「何を信じたら良いのか?」の部分が揺らぐことになる。実際にいま残高は順調に伸びている実在のファンドなので、敢えてFund Garageとして取り上げてみた。拙著「97%の投資信託がダメなこれだけの理由」にも、こうした見るべきポイントについては、きちんと解説したつもりだ。