間違っていませんか、FDルールについての解釈の仕方?

フェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)の来年4月からの導入を前に、今朝(12月17日)の日経新聞朝刊などを見ても、やや混乱をしているような印象を受ける。

そもそもFDルールは(フィディーシュアリー・デューティー宣言についてもFD宣言と“FD”を使うので紛らわしいが・・・)米国で2000年代の初め頃から厳しくなったものなので、日本の企業ディスクロジャーというものが如何に遅れているのか、或いは日本のIRというものが如何にまだ未成熟化を曝け出しているようなものだが、一番の重要な主旨は、全投資家に公平に企業は重要情報を伝達しましょうというものだ。

逆に言えば、株価に影響を与えそうな情報を、一部の人に限って公表前に伝えることを禁じているルールだとも言える。実にフェアな開示を目指したルールだと言える。逆にこれが米国で導入され始めた当初、正直、運用サイドとしては非常に困惑したものだ。何故なら、今まで教えてくれていた情報が、日本からワザワザ米国くんだりまで渡航しているのに「まだ発表前だから言えなくなってしまった」と断られる話題が多くなったからだ。

また国内企業についても、小職はグローバルに事業活動を展開する企業を投資対象として調べることが殆どだったので、このFDルールが日本国内では未だ正式に導入されていなかったというのは、極めて驚きであったのだが、金融庁のWebなどを見ると、確かにそのように記載してある。それを知るきっかけを与えてくれたのが、今朝(17日)の日経新聞朝刊だ。

さて、早速その記事を見て「本当にそれで良いのか?」と思わせるくだりがそこかしこにある。

1. パナソニックは11月にアナリストを対象とした技術説明会を開いた。
2. 大塚ホールディングスは11月に新薬の開発状況をアナリストらに説明した。
3. アステラス製薬も年間400回ほど、個別面談を開催している。

などなどである。投資家が企業への投資を考える上で重要な情報は、何も資本移動や売上/利益の変動、組織改革など、インサイダー情報に該当するものだけでは無いのは議論の余地がない。そんなことは、逆にちょっと調べれば直ぐにも分かる。逆に例えば、新聞にあるようにパナソニックの「最高技術責任者などが登壇して今後10年を見据えた製品開発の展望や、米テスラなどに供給する車載電池の開発状況」などは、足元の月次収益の動向などよりも、余程長期にわたって株式を保有しようかしまいかを考える投資家にとっては重要な事実だ。新薬の開発状況など当然の極みとも言える。僕らはこうした情報を得るために、ありとあらゆる方法で、エンジニアとの面談方法を探したものだ。大学のゼミの同期をつてに辿ることなどもよくあった。

しかし、添付の図の通り、パナソニックのWebサイトには今日現在、詳細な公表内容は開示されていない。

これは明らかに参加したアナリストと、そうでないアナリスト、呼ばれもしない個人投資家の間に決定的な差異を齎していると言わざるを得ない。つまりFDルールの本質的な精神に真っ向から背いた行為と言って差し支えない。

ただ、背景を考えるとそれも理解出来なくもない。アナリストやファンドマネージャーが参加する企業説明会や決算説明会で、財務情報の数値以外に関心を示す人は年々歳々少なくなっていると言えるからだ。明日の新技術よりも、足元の飯粒の数ということだ。21日に発売になる拙著にも書いたが、ボトムアップ・リサーチと称する企業調査が、企業“訪問”による調査ではなく、企業に“訪問させて”の調査に主たる方法がかわり、それが常套手段で済まされているところが、企業調査たるは何たるかを理解していないとも言える現在、こうした対応をFDルール適用を目前にしても、企業がしてしまうのは理解出来なくもない。

ただ、これは明らかに誤ったことである。

少なくとも、アナリストやファンドマネージャーだけを対象としたイベントや情報開示は、FDルールの精神からすれば、決して今後あってはならない。少なくとも、これだけネット環境が発達した時代においては、如何なる方法だって取れる筈だと私は考える。

新聞はこう纏めている。投資家が「中長期の経営戦略を重視するようになった」、「専門的な情報に対し投資家の関心が強くなった」と。おいおい、それって今の話ですか?というのが正直な感想だ。