連載15 新入行員諸君!リスク商品でござる(お客様を知る_10)

お客様を知るシリーズ全9回のまとめ

過去9回で、リスク商品を販売する上で最も大切な「お客様を知る」ということについて、どういう観点でお客様の投資特性を把握して行けばいいのかを綴ってきた。

順番に追っていくと以下の通りとなる。
1つ目:「リスク許容度」という観点
2つ目:「Composure」(落ち着き, 沈着, 平静、冷静さ)という観点
3つ目:「市場に参加する心の準備が出来ているか」という観点
4つ目:「お客様ご自身は、自身の金融知識レベルをどう考えているか」という観点
5つ目:「資産運用を誰かに委任したいと思っているかどうか?」という観点
6つ目:「資産運用の専門家のスキルをどこまで信じているか」という観点

1. お客様のパターンは無数にある。

仮に上記6つの各項目について、大雑把に上・中・下の3つのスコアをつけたとしても、3の6乗通りの組み合わせ、すなわち729通りのパターンになる。もし仮に5段階評価をしたとしたら、5の6乗で15,625通りのパターンにもなってしまう。つまりお客様の投資特性というのは、皆それぞれ違うという事だ。だからこそ、お客様一人一人に合わせたテーラーメイドのご提案というのは難しい。

ただ目的意識をもって、お客様のどんな投資特性の一面を知ろうかと思って接することで、少しずつでも見えてくるものがあり、その後の提案内容が格段に向上してくるというのも事実であろう。

2. まずは自分をサンプルに考えてみる

自分自身をまずは6つの項目について分析してみるのが、上記のトレーニングの為に最善の策だ。参考までにここでは私の場合を取り上げてみる。

長年ファンドマネージャーを生業としていたこともあり、「リスク許容度」は極めて高い。それはリスクとリターンの関係を熟知しているからだけではなく、性格的にも中途半端にことをするよりも、する限りは徹底したい質なので、資産運用をするなら高いリスクを取りに行く。またマーケット業務で鍛えてしまった胆力があるので、日々の市場変動に一喜一憂するようなことはない。市場へ参加する準備はいつでも整っている。というのが、前半3つの項目に対する私の投資特性だ。

当然、資産運用に関する知識レベルは自己評価としても高い。低いと思っているといったら嫌味かも知れない。だからこそ、他人を頼ろうとは思わない。事務手続きについても、投資判断についても、喜んで自ら行う。そして正しく専門家を選ぶことが出来れば、市場は決して効率的では無いと考える立場から、高い報酬を払ってでも、ファンドマネージャーやファイナンシャル・アドバイザーが成果を上げる機会は沢山あると考える。すなわち、人に頼るのは嫌だけれども、知識も経験もある自分が行えば、市場の歪みや非効率な部分をついて、パッシブ運用をするよりも高いリターンを確実に上げられると思っているということだ。こうした自己評価を自分自身でまず行ってみると良い。そうすることにより、お客様を各項目について評価する目が養われるだろう。

3. 自分の資産運用を考える

A) ホームカントリー・バイアスの無いリスク運用

上記自分自身の投資特性を元に、自分ならばどんな資産運用をするかと言えば、まずはアセット・アロケーションに収益の源泉を大きく求める。これには「私が愛したファンド達 -2「さくら日本株オープン」」という本ブログの投資エッセイが大いに参考になると思われるが、まずは資産全体のアセット・アロケーションを重視し、適切なリスクを取るようにしている。何故なら、超過収益の源泉の7割程度は、アセット・アロケーションから得られるものと考えているからである。当然、ホームカントリー・バイアスは掛けていないので、外貨建て資産が為替ヘッジなど無しで含まれている。

B) オルターナティブ運用の組み込み

また市場の伝統的な資産のアップダウンから、資産の価値変動を回避するためにも、ある一定割合で非伝統的資産と呼ばれるオルタナティブ運用を利用している。市場が上がった下がったに一喜一憂することは無いが、ポートフォリオの中で、こうしたアセットクラスを保有することには意味がある。このあたりの感覚を養って貰うためには「私が愛したファンド達 -3「さくらCBファンド9404」」が参考になるだろうと思う。要は如何に市場変動リスクを押え込んで安定的な収益を上げることが出来る資産を組入れておくかということである。

C) 個別銘柄投資へのこだわり

とは言うものの、やはり投資の醍醐味は自らリサーチして発掘した個別銘柄が大化けすることに尽きるというのは、偽らざる自分の特徴的な投資特性でもある。現役のファンドマネージャーではもうなにので、企業のインベスター・リレーションズを通じた企業調査は流石に出来る立場に無いが、ハイテク産業の新技術を追い駆ける為に、インターネットなどから情報を得るだけでなく、今でもパソコンは自作を続けているし、スマホやデジカメの買い替えサイクルだけは速い。自動車などへの興味も並大抵なものでは無いし、意図して最新情報を得るように努めている。そうしたことをするだけで、大きなポートフォリオを組むほどの銘柄数を発掘することは出来ないが、自分の好きな個別銘柄を見つけ出すことは出来るものだ。この辺りの感覚を知って貰うためには是非「私が愛したファンド達 -1「さくら株式アナライザー・オープン」」をお読み頂きたい。

実は「私が愛したファンド達シリーズ」を綴ったのは、単なる懐古趣味ではなく、ここで内容をリンクさせるために準備をしておいたものである。何故なら、全て極めて特徴のあるファンドであり、お客様を知るための6つの項目についての理解を得てから再読して頂くことで、きっとこれらお客様を知る上で大切な6つの項目の投資特性についてもよく分かるだろうと考えたからだ。是非、一度読んで頂いた方も、再度読み直ししてみて頂きたい。きっと新たな発見がある筈である。