欧米中央銀行が量的緩和からの脱出を示す中で、日本の遅れが際立つ

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今朝の日経朝刊(9/22)早読み。市場はFOMCで量的緩和の完全終了が決まったことと、年内の追加利上げ可能性(70%)を織り込み、消化した。一方で、欧米の中央銀行が量的緩和からの脱出を示す中で、日本の遅れは際立つ形になっている。緩和により世界に広がったマネーが還流する流れを今後どう新興国市場が吸収出来るのかが、気になるところだ。

1. 【1面】脱・金融危機対応へ一歩 資産縮小、FRBが先行 低インフレ懸念残る
【総合1】FRB「静かな出口」狙う 資産縮小、段階的に 市場への影響に配慮
【国際1】FRB資産縮小 新興国にくすぶる火種 ドル債務膨張 急変にもろさ

米連邦準備理事会(FRB)は20日、2008年の金融危機後の量的緩和策を完全に終え、膨らんだ保有資産を10月から縮小すると正式決定した。欧州も追随する構えだ。後述するが、一方で日銀は21日開いた金融政策決定会合で金融緩和の維持することを決めている。FOMCで短期金利の引き上げを見送る一方で12月の利上げには含みを残し、長らくシグナルを発してきた資産縮小計画については10月に開始すると発表したという流れだ。これを受けて今朝のNY市場では、当初市場関係者はやや違和感を覚え、そして声明を聞く中で株式市場などは値を戻したと言っていい。問題は米国発で世界に広がったマネー頼りに多額のドル建て債務を抱える新興国だ。目先、経済や市場は安定し、各国当局の危機感は薄いが、急激なドル高や米長期金利の上昇に対するもろさはなお火種。新興国発で世界の市場が混乱するリスクは残ると言える。

2. 【総合2】日銀 物価・賃金が誤算 金融緩和の維持決定 経済堅調・雇用は改善

翻って日本、日銀は21日開いた金融政策決定会合で金融緩和の維持を決めた。米国や欧州が金融政策の正常化を探るなか、日銀だけが出口戦略で出遅れた形。同日の金融市場では円が売られ、株高が進行した。黒田東彦総裁は物価は上昇の兆しがあるとしつつ、「必要があればさらなる緩和も行う」と強調。出口がまだ遠いことを印象づけた。日米欧とも物価上昇率の目標は2%に置いている。だが、日本の消費者物価(除く生鮮食品)上昇率は0.5%。1%台半ばの米欧との差は大きい。このため、政策委員会では出口戦略よりむしろ追加緩和を求める声が浮上しているほどだ。

3. 【経済】水素施設整備 後押し 燃料電池車向け規制緩和 EVと並走めざす

これからの日本にとっては、本来こちらの方が重要な話題かも知れない。経済産業省は水素を燃料にして走る燃料電池車(FCV)の普及に向け、水素ステーションを設置・運営する際の規制を緩和する。2018年度までに監督者や設備の要件など約20項目を見直す。意図するところは、次世代自動車で欧州などは電気自動車(EV)への支援を急いでいる中で、日本勢に一日の長があるFCVに長期的な成長があると踏んで環境整備を進めるためだ。トヨタ自動車やホンダなどはFCVを「究極のエコカー」と位置づけ、ホンダで1980年代後半、トヨタで90年代前半にそれぞれ開発に着手し、技術の蓄積をしてきたが、欧州や中国の自動車メーカーが電気自動車(EV)シフトを急ぐ中でも、両社はFCVの旗を降ろしていない。EVの基幹部品である電池やモーターは、メーカーが多数存在するため世界的な水平分業が進みやすい。これに対しFCVの基幹部品は、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる燃料電池スタックや水素ガスを貯蔵するタンクだ。トヨタもホンダも国内の部品メーカーと緊密に連携して自前で開発、製造している。現在は、完全自動運転車の開発も進む中で、日本の基幹産業である自動車業界が生き残ることは、日本経済そのものが生き残ることと同義でもあり、官民挙げての対応が必要になる正念場に差し掛かっていると認識している。

4. 【経済】地価上昇 潜む危うさ(下)不動産投資 迫る天井 緩和マネー 海外に向かう

記事の冒頭からして面白い。「買える物件が見つからない」。東京都内に拠点を置く不動産投資信託(REIT)の運用会社の幹部は話す。REITに組み入れる物件は主に入札で競り落としていくが、今年に入り応札を見送ることが多くなった。想定以上に物件価格が高すぎるためだ。東京・大手町のオフィスビルの想定利回りは7月時点で3.55%まで低下。03年の調査開始以来の最低水準にある。満足のいく利回りは確保できず、管理しやすい大型物件だけで採算はとれず、小規模物件まで探す範囲を広げなければ、物件取得が難しい状態となった。REITは利回り商品として販売し易い商品として、ここ数年で残高を急激に伸ばしたが、ここからは安穏と販売していられる状況ではない。

5. 【企業総合】東芝、臨時総会来月24日 半導体売却契約詰め急ぐ WD新たな法的措置

さて本番が始まった。東芝は21日、10月24日に臨時株主総会を開催すると発表した。米ベインキャピタル率いる「日米韓連合」と早期の締結を目指す半導体メモリー事業の売却契約について株主の承認を求めるだが、早々にも予想通り売却に反対するWDは同日、共同投資する四日市工場(三重県四日市市)での東芝側の単独投資を「合弁契約に違反する」として国際商業会議所(ICC)の国際仲裁裁判所に差し止めを申し立て、契約締結に揺さぶりをかけてきた。当然と言えば当然過ぎる流れであり、この状況に対する備えが東芝に無いということは無いと期待したいが、そう低いハードルでは無い筈だ。強行すれば、最終的にWD側は多額の損害賠償請求を要求してくるであろう。そうなれば、東芝現経営陣に対する株主代表訴訟も視野に入れておかなければならない。今回の臨時株主総会では、遅れていた議題である①17年3月期の決算書類の承認、②取締役10人の選任が諮られる。東芝側は相当程度日本流の事前根回しを関係機関投資家に行うのであろうが、議決権行使内容の開示が求められる現在、旧来型の阿吽の呼吸での白紙委任状は貰えない筈。注目点の一つは、各機関投資家/運用機関が、今回の各議題に対して、どう答えるのかも興味が尽きないところだ。