連載13 新入行員諸君!リスク商品でござる(お客様を知る_8)

5つ目の項目は「資産運用を誰かに委任したいと思っているかどうか?」という観点。

1. 資産運用に関わる事務管理を誰かに任せたいか否か?

株式を一つか二つ持っているうちはまだ良いが、複数の銘柄の株式に、複数の投資信託、そして複数の債券類に銀行預金と段々リスク商品が増えていくうちに、その管理を面倒臭いと思ってしまう人が居る。思うだけなら良いが、何がどうなっているのか(偏りなど)さえ分からなくなってしまっている人が居る。また逆にその管理を自ら色々と深めてみようと思う人がいる。事実それに適うアプリやソフトウェアも開発されていて、資産運用に臨む人々の態度は様々だ。

また市場の上げ下げの中で、いちいちタイミングを計って買ったり、売ったりをすることを煩わしいと思う人もいれば、それを嬉々として行える人もいる。タイミングを計るためには、毎日新聞等で価格を調べたり、日中でもスマホで価格を追ったりしなければならないからだ。その一方で、中には一日に何回もそれを繰り返すデイトレーダー紛いの人も居て、そのまま成業にしてしまうなどという例もある。

リスク商品を買ったり売ったりする行為自体は構わないのだが、それに伴い発生する伝票に名前を書いたり、ハンコを押したりする事務手続きが面倒臭いという人もいる。事実、昨今はコンプライアンスで色々な規制やルールがあるため、お客様から頂戴しないとならない書類やハンコの数は年々歳々増えている。書類を頂戴する側から見ても「こりゃあ面倒臭いわ」と思わず溜息が出てしまう程だ。

まずはこうした資産運用そのものに関わる事務手続きや管理について、それを誰かに任せてしまいたいと思っているお客様か、逆にそれらはすべてきちんと納得して自ら行いたいかと思っているお客様かどうか、という視点が最初の視点となる。

2. 投資判断そのものを誰かに任せたいか否か?

もうひとつの視点は、資産運用の必要性は充分に理解しながらも、投資判断すること自体が億劫で、投資判断自体も誰かに任せてしまいたいと思っているお客様が少なからずいらっしゃるということだ。故に、投資判断自体を任せたいお客様か否かという見極めが重要になってくる。実はこれは次の6つ目の項目となる「資産運用能力に対する信頼度」というものにも強く関わってくるのだが、お薦めする商品を考える上では、かなり重要なポイントなってくる。

実際、金融機関の関係者でなければ、投資判断するというのはかなり煩わしいし、面倒臭いものかも知れない。買った途端に、儲かったり、損したりの日々が始まるわけで、効用はそれ以上でもそれ以下でも無いのだから。車を買った時のように、その後にそれを利用して楽しむという恩恵が無いのが資産運用である。

にも拘わらず、投資判断を適切に行おうと思えば、毎日日経新聞を読んだり、ニュースで海外の市場動向を聞いたり、或いはインターネットで市場動向を調べたり、諸々リサーチしたり、常にアンテナを高く張り巡らせておかなければならない。これは専業者以外にとっては、面倒臭いかと言えば、かなり面倒臭いことかも知れない。

しかし一方で、マイナス水準もあり得る超低金利の昨今、雀の涙ほども利息が付かないことを考えると、ぐっと資産運用の必要性は強く感じるものとなる。いっそのこと丸ごと誰かにお任せすることは出来ないかと考えることは、成業が多忙であればあるほど有り得る話である。「誰か良い塩梅にやっておいてくれないかなぁ」という感じである。

3. 委任度が高い人、逆に低い人にそれぞれ薦めるべきリスク商品やサービスの違い

委任度が高い人と低い人では、その薦めるべき商品やお付き合いの仕方が大きく違ってくるので、上記二つの視点でのお客様のお考えの見極めは、極めて重要である。

A) 事務手続きに関する委任度の違いによるもの

事務手続きを面倒臭いと思うタイプのお客様に、いきなり大量の事務書類へ署名捺印をお願いすれば、恐らく話はそこで終わってしまうだろう。またこのタイプの人に、煩雑な事務手続きを含むリスク商品を、頻繁に買ったり売ったりして貰うことは、お客様に疎ましがられるための最短コースだ。一方、そういう人ならば、個別の投資信託を複数お薦めするよりは、例えばファンドラップや一任勘定、或いはファンド・オブ・ファンズという考え方はありかも知れない。

B) 投資判断に関する委任度の違いによるもの

投資判断を任せたいと思っている人に、毎日毎日電話やメールで市場の情報と称してコンタクトを取ろうとしていれば、きっと遠からずに疎ましがられるであろう。逆に、投資判断は自らしたいと思っている人とのコンタクトを疎遠にしていたら、きっといい関係を築くことは出来ず、頻繁にコンタクトする他行他社の営業マンに奪われてしまうだろう。

投資判断を任せたいと思っている人ならば、投資信託はきっと一番良いソリューションのひとつだろう。最初に大きなポイントを、商品特性と言う形で押さえて頂けば、その後は専門のファンドマネージャーが責任をもって個別の投資対象を買ったり売ったりしてくれるからだ。その取引のボリュームに比べれば、個別銘柄を個々に管理するよりも、ずっと投資信託は手の掛からない商品だ。

またSMA(Separately Managed Account)は銀行では提供していないが、委任度の高いお客様向けには良いソリューションとなるかも知れない(SMAの内容によるので、内容は要チェック)。

4. まずは委任度を見極める

お客様の委任度について実際見極めるのは、ただ漫然と会話をしているだけではかなり難しい。専用のテストでもあれば話は簡単だが、市場の話などをただ続けている限りでは見えてこない。この点に関しては、タイミングを見てストレートにお客様にお聞きしてみるのが早道かも知れない。

例えば、過去の投資経験などをお聞きしながら「伝票類などが多くなってしまうことは特にお気になさいませんか?」と聞いてみたり、「お忙しいことと思いますので、市場のことなどはどんなタイミングでお電話等させて頂いたら宜しいでしょうか?」と聞いてみたり、といった感じだ。聞きたい要素ははっきりと言葉にしておくこと。それによってお客様から「いや、たまに電話でもくれれば良いよ」と言われるかも知れないし、「いつでもいいよ。マーケットが動いていると気になるからね」などと教えて貰えるかもしれない。前者は恐らく投資判断自体を煩わしいと思っている委任度の高いケースであり、後者は自ら行いたい委任度の低いタイプであろうと想像がつく。前者には投資信託などがお薦めであり、後者には直接株式の個別銘柄のご提案の方が刺さるかも知れない。