インバウンド消費期待とGDP増への期待?

今朝の日経朝刊(8/16)から読み取れるひとつのストーリーは、日本の将来がやはり必ずしも明るくないということだ。編集側にその意図は無いと思うが、全体を通じて滲み出るのはそういう結論だ。

1. 何でアリババのスマホ決済上陸が一面トップになるか?

日経新聞朝刊本誌の一面トップの記事と言えば、通常は日本経済に与える影響や日本に取って大きな話題になる話の筈。今日のその場所を飾ったのは、日本の有機EL部材が頑張っているというような企業面の記事ではなく、恐らく日本人が使うことは無いであろう中国アリババのスマホ決済システムの話である。スマホ決済で私がよく使っているのは、Android(SONY EXPERIAの為)、SUICAとEDYだ。iPhoneユーザーはきっとアップルペイであろう。なのにアリババである。記事には日本人向けに5万店で17年末に稼働させるというが、果たして現在の3万店で、どの程度の日本人利用者があるのだろうか?記事の後半にもあるが、中国企業が海外展開する場合、気になるのは個人情報の管理である。日本人のメンタリティーとして、そう簡単にアリババのそれが普及するとは思えず、あくまで中国人のインバウンド消費の補助となるに過ぎないと思われる。投資情報の17ページにはドンキHDも総売上高の増加が6%増の中、訪日外国人による需要でやはり売上高2割の増加を見込んでいる。

2. 社説はGDP成長の為に政府に構造改革を求めるが・・

社説の二つ目の記事にはこうある。「内閣府が発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比年率4.0%増えた。1.0%未満とされる日本経済の潜在成長率を大きく上回った。6四半期連続のプラス成長だが、高い成長率は好条件が重なったうえでの「追い風参考記録」といえる。政府は気を緩めず、経済の基礎体力を高める構造改革を果断に実行しなくてはならない」(日経新聞朝刊8/16より引用)。私も追い風参考記録という点については異議を差し挟まないが、だか経済の基礎体力を高める構造改革を果断に実行しろというのは、今のインバウンド消費を伸ばせという意味にしか取れないのは天邪鬼過ぎるだろうか?

何故なら、GDP(国内総生産)とは「GDP=個人消費+民間投資+政府支出+純輸出+在庫品」という式で表すことが出来るが、その内6割を個人消費が占める。確か米国では近時7割程度まで上がっていたと思うが、人口が減れば、個人消費は自動的にその分だけ減少していく。2050年には日本人の人口は約25%の3,300万人減少すると言われている。極めてラフに言えば、60%✕25%=15%は人口減少により自動的にGDPが減ることになる。それでも辛うじて第4位のドイツをまだ上回るが、逆に言えば、その先は団栗の背比べ状態となる。経済の構造改革も大切だと思うが、国にもっと強く期待すべきは人口増をはかる政策の積極化ではないだろうか。失業率の低下や有効求人倍率の増加を素直に喜んでいるが、それは単に労働人口が年々歳々減っていっているからとも言える。統計は正しく見るべきだ。

(総務省統計局のデータより引用)

3.有機ELの製造素材で攻めることも素直には喜べない天邪鬼

企業総合の記事「有機EL 素材で攻める」という記事、最初に一読した時には素直に良かった、頑張れ日本!と思ったが、いやちょっと待てよである。液晶でサムスン電子やLGディスプレイの後塵をすでに拝している日本のパネルビジネスにおいて、有機ELで役に立つのは素材だけ。ジャパンディスプレイはもう駄目だ(とは書いていないが)と認めた上で、韓国メーカーの謂わば下請けの地位に甘んじる。

日本が液晶パネルビジネスが優位にあった頃、ガラスパネルには米国コーニング社などの影がちらついただけで、基本は一気通貫で日本製であった。勿論製造装置には米国勢も強かったが、少なくとも素材で外国優位な部分は殆ど無かった筈である。更に遡って、半導体製造がまだ優位だった頃、シリコンウェハーの元であるシリコンインゴットから、露光剤などまで日本勢は圧倒的に優位に立っていた。そして月日が流れて、日本は有機EL分野では素材でしか輝きを持てないというのは、何とも寂しい話である。

4. 低格付け債の売りはあまり気にすることは無いと思われる

確かに始まった低格付け債の売りであるが、これが株式市場の急落予兆とするのは、まだ時期尚早な気がしている。CoCo債の取り扱いについては、前職時代も相当に私のチーム内で議論をしたが、お客様に販売することは控えた。何故なら、上場株式と違って、債券の終焉は突然やってきて、通常ゼロになる。CoCo債の内容を吟味したことがある人ならばご存知の通り、クレジット・イベントはある日突然発表され、それをもってゲームオーバーとなるのである。
債券とはそうしたもので、じわじわと倒産価格まで下がり始めるというより、そうしたクレジット・リスク表面化の情報が出た途端にドカンとまず下がり、破綻すれば優先順位は株より高いとはいえ、回収までには時間を要し、当然全額は戻らない。日銀の金融緩和政策で行き場の失った地銀マネーがそこに流れているのだとしたら、現状は手放したくなる大きなタイミングであって当然だ。ましてや金利上昇がベース・トレンドの債券市場なのだから。