まだホームカントリー・バイアスを言うのか?

今朝の日経朝刊(8/15)を読んでいてふと思った大きなテーマは、株式市場関係者はメディアを含めて、まだホームカントリー・バイアス、すなわち日本株と外国株、という対立軸で物事を考えざるを得ないんだなということ。これは完全にひと時代遅れた発想である。

1. 何でもかんでも、半導体として括るのは、実態を見誤る危険性大

今や自動運転用のGPUメーカーとして光り輝く半導体企業エヌビディア。トヨタを始め、独アウディやテスラ、フォードなどと提携し、その株価もうなぎ登りだ。ただ同社を単純にインテルなどとバリュエーションなどの指標で比較するのはちょっと無理がある。ご存知の通り、半導体には多くの種類があり、噂の泥沼化の主役である東芝などのフラッシュメモリーもあれば、クワルコムなどが手掛けるスマホ向けもあり、そしてインテルが主力のCPUがあり、エヌビディアのGPUがある。これらを一括りで半導体と言ってしまうのはある意味正しいが、逆に言えば、シリコンウェハーの上に回路を描かれたもの、という以外に共通点は無いと言っていいかもしれない。またインテルは設計から製造までを一貫して行う半導体企業であり、CPU設計の開発競争に追われる一方で、半導体製造プロセスの開発競争にも追われている。しかし、エヌビディアやクワルコムは半導体製造工場を持たないファブレス企業だ。その一方で、自動車部品メーカーのデンソーなどは、寧ろインテルのように設計から製造までのプロセスを担う。それは電気製品のそれと、自動車部品のそれとでは求められるスペックが全然違うからと言える。フェラーリを砂漠に持っていったら、あっという間にエンジンが止まるだろう。しかし、ベンツのGクラスや、軍用のハマーなどは何の問題も無い。それは耐熱、耐塵、耐振動などの基本コンセプトが全く違うからである。それと同じことが半導体にも言える。こんな風に見てくると、何でもかんでも半導体、と一括りにして論陣を張るのは、誤解をする可能性があるので要注意。

2. ホームカントリー・バイアスは無くしましょう

日本経済新聞社なので、どうしても証券面が日本市場に重点を置くことは致し方ないこと。メディアに罪は無いのだが、あまりに対抗軸として日本株VS欧米株、とか日本株VS新興国株のような記事を読むと、とても違和感を抱いてしまう。当然主たる取引市場が違えば、売買に絡むルールの違いも出て来るし、セトルメント(決済)の仕方でも方法が違うので、誰も彼もが国境を失くして運用するのは難しいかも知れない。とは言え、グローバルにビジネスをしている企業の株式を、その主たる上場市場で日本株だ、欧米株だとバイアスを掛けるのは一昔前の発想のような気がしてならない。

私が1996年に開発して運用を担当した「さくら株式アナライザー・オープン」或いは「シナプス」などは、そんな視点から30%までは、日本市場に上場していない株式を購入出来るようなファンドとして開発し、事実、私が担当を辞めた2005年3月末までは設定時から常にギリギリまで欧米株式が組み込んでいた。

3. その企業の主たる主戦場で戦うライバルと比較する

半導体などは、既に日本に投資したいと思う企業は無くなってしまったに等しいが、例えば自動車企業などは、トヨタかマツダか、メルセデスかBMWか、はたまたGMかテスラかなど、選択肢はグローバルに広がる。もしテスラが一番伸びしろがあると思っているのに、日本株しか投資しないとしたら、選択肢はトヨタかマツダしかなくなりテスラは買えない。一方で、もしロング(買い)&ショート(売り)の戦略が取れるならば、例えばテスラを買って、メルセデスを売るペアトレードなども、国を跨いでなお可能だ。ホームカントリー・バイアスさえなければ、普通の投資行為になり、運用の幅は思い切り広がる。問題はセトルメント(決済)だけだが、今や多くの証券会社で問題なく対応できるようになってきた。

4. 北朝鮮情勢が不安ならば、海外に行けばいい。

昨年末、ある欧州系運用会社の人に「欧州株のファンドをやりませんか」と問い掛けると、「日本で売れると思っていますか?」とにべもない返事が返り、変人を見るような目で見られたことを覚えている。事実、日本で買える欧州株ファンドというのは数えるほどしかない。当時は先駆的にニーズがあったが、ブームになっていない。結局欧州株という選択肢を取らなかったことを今では後悔しているかも知れない。何故なら、北朝鮮情勢から一番遠いのは欧州だからだ。飛行機に飛び乗れば、12時間から14時間のフライトで殆どの北半球の国には飛んでいける。インターネットも合わせて利用すれば、欧米株のリサーチも特に障害はない。欧州系金融機関ならば正にホームグラウンドだ。だからこそ、日本だ、欧米だ、新興国だという括りで壁を設けず、ただひとつ「株式投資」という見方をすべきなのだ。

5. 為替の問題をどうするか

理論上はグローバルに活動をしている企業の株価には、それ自体に為替変動が長期的には織り込まれるので、為替ヘッジなどは要らないという事も出来る。ただ目先で為替変動の損益を何とかしたいという人は、これだけネットでのFX取引が盛んな時代である。普通にワン・マンス・ロール(ひと月毎に売り為替を繋いでいく方法)などでヘッジを掛けることも出来るだろう。要はちょっと余計にひと手間かければ良いだけだ。若しくは、そうした投資信託を買えば良い。ただ前述の「さくら株式アナライザー」や「シナプス」には、現在全く外国株は組み入れられていないようなのでご注意いただきたい。