連載10 新入行員諸君!リスク商品でござる(お客様を知る_5)

前回に続いて「Composure」という話。

1. ファンドの場合で注意する事項

投資信託は一般にいつでも解約出来ることが前提。ただ、手数料が後取りになっていたり、解約時の財産留保額が多かったり、或いは、私募投資などの場合はシードマネークラスが抜けると、残る人に大きな迷惑が掛かったり、運用が立ち行かなくなったりと諸問題が発生する場合がある。また中には、解約出来ないロックアップ期間が設定されていたり、ヘッジファンドなどでは、解約までに数か月を要したりするものがあるので、ファンドの構造がどうなっているのかをよく確認する必要がある。
またREITなど、不動産物件に投資しているような商品も、投信本来の「いつでも解約できる」という特徴が失われている場合があるので要注意である。何故なら、投資対象自体の流動性が低い(不動産が流動性が低いので、ファンドの形式にして流動性を与えているものがREITの本質なのだから)ものに、一斉に売却トレンドが訪れた場合、解約受付禁止期間が設けられたりする商品もあるので、充分な注意(目論見書に記載)が必要と言える。REITに一斉に売却オーダーが発生するような経済環境になった時、不動産が買値界隈でサクサク処分出来るものだとは、素人でも努々思わないと考えるが。

2. 債券類の場合でも注意が必要

また債券は、それまで時価評価していなかったとしても、売却する時の価格は所謂“時価”になるので、購入時よりも金利が上昇していれば売却損が出るのは当たり前。最後まで持ち切ってこそ、購入時の利回りが約束される。当面日本の金利は低位にあると思われるが、方向性は世界中が金利上昇である。途中売却時のこうしたリスクはよく考えておく必要がある。思わぬトラブルの原因になる。
また債券の場合、通常はオファープライス(業者の売値)とビットプライス(業者の買値)には開きがあって、そこに手数料が含まれている。故に「オファー・ビットが何円とか何銭」とか呼んだりする。一般に購入直後の債券を時価評価すると、手数料分はまずまず回収出来ていないことが多く、仲値で時価評価を観たお客様からさえ「こんなに手数料を取っていたとは知らなかった」となるケースもあるし、お客様の売値、すなわちビットプライス(業者の買値)が仲値で示されている価格より一段安くて(手数料が含まれるため)問題となることもあるので、流動性/換金性という点については商品ごとに充分な商品性理解と注意が必要である。

3. 仕組債の場合の中途解約

これは一般の債券よりも状況がお客様にとって不利になることが殆どである。「リスク商品の基本」でこのシリーズの最初に説明した通り、当該商品に関係業者が多いこと、オプションなどのデリバティブを内在するものなどは、手数料がかなり高めとなっていることが多い。理屈上は仕組債であろうと途中売却出来る。ただお客様の売値が幾らになるかと言えば、下手をすればそれが半値以下になることもザラにあること。これはよく肝に銘じておいて欲しい。それが故、金融機関側は仕組債を積極的に販売するのだから。(ですよね?)

4. 「Composure」が高いお客様への留意点

前述したように、こういうお客様は一旦投資されると、気にせずに放っておかれることが多い。如何に最初に充分な検討を重ねた上とは言え、世の中の情勢、投資環境は時間と共に変わるものだ。一年前の情勢だって今とこんなに違うわけだし、まして2年後3年後ともなれば、今から想像出来るものではない。そうした上で、必要な時に適切なアドバイスをするのが肝要だ。ただこのアドバイスの仕方についても、やはり行動経済学からヒントがあるので、それについてはまた別の項で綴ってみたい。
また基本的にはそんなに投資商品の流動性/換金性を気にする必要は無い人と言えるが、上記のようなケースで一旦ポジションを解消する方が良い場合もある。その際にトラブルにならないように、きっちりと解約時の対応を事前説明しておくことも肝要と言える。

5. ゴルフの仕方に喩えると・・・

この「Composure」をゴルフの仕方で見分けるとすると、どうなるだろうか?一般的に、つま先上がりだとか、左足下がりだとかライを気にして、またゴルフボールの汚れに神経質になったりする人は「Composure」が低い。バンカーなどに捉えられたら一目瞭然である。一方、「Composure」が高い人の場合、ゴルフボールの前でアドレスしてからスイングするまでが割と早い。「これだ」と決めたら、迷わずに振りぬくタイプである。なので大技は効くが、小技で難儀する・・・、あ、それは私のことだったかも知れない。

次回は市場に参加する心構えが出来ているのかどうか?ということについて綴ってみたい。