地政学リスクとの付き合い方

今朝の日経朝刊一面(8/10)には「世界の金融市場が米国との軍事衝突を警戒する「北朝鮮リスク」に神経質になっている」と大きく報じている。確かに昨日のマーケットでは「有事の円買い」と呼ばれるような動きや、日本株のみならずアジアや欧州の株も下落した。ただ当事国である米国市場はやや軟化した程度で終わった。こうした地政学リスクとの付き合い方を考えてみる。

1. 結論:下手の考え休むに似たり

少々荒っぽい言い方で結論を先に綴ったが、1990年の第一次湾岸戦争からこうした地政学リスクと称される事象を数限りなく経験している身としては、結論としては、余計なことを考えてポジションを変に動かした方が分が悪いことの方が多い。気持ちは分からなくは無いし、私自身も過去にはポジションを動かすことを何度も行ったが、余程明確に被害やその結果としての経済への悪影響が図れない限り、実際はハラハラドキドキしながらも、手を動かさない方が良かったケースが殆どである。

2. ミサイルが飛んだ途端に、寄り付かずのストップ安からストップ高

一番の教訓となったのは、それこそ1990年の第一次湾岸戦争だ。夏のちょうど今頃、イラクがクウェートに攻め込んだというCNNの報道映像がディーリングルームに流れ、事態は騒然とした。それから約5か月余り後、ついに米軍がミサイルを発射しクウェートをイラクから奪回したことはご承知の通りだが、ビクビクしながらの5か月間のあと、パトリオットミサイルが飛んだ瞬間の日の市場の動きは、今でも鮮明に記憶に残っている。お昼に何を食べたかまで記憶にあるほどだ。

パトリオットが飛ぶぞと言われた朝一番から、日経平均先物は30,000枚の特別売り気配で一度も寄り付きもせずに前場を終えた。市場参加者は場中、ひたすらCNNニュースの映像やヘッドラインに釘付けになっていた。先輩と一緒に食べに行ったランチはチャーハンとラーメンのセット。「この先どうなりますかね」などと会話をしたのを覚えているが、当然何を為す術も無い。

ところが後場に入る直前、CNNの映像が花火のように米軍のパトリオットミサイルが飛ぶ姿を伝えると、それまで特別売り気配で終わっていた先物市場が、寄り付くことなくドテン一気に特別買い気配でストップ高となった。その日の終わりは買い気配のままの比例配分。

3. 噂におびえ、事実に安堵する

その後も何度もこうした地政学リスクを経験するが、最終的には結局直接被害が及んだものに絡むセクターなり、銘柄のボラティリティが急騰するだけで、ワサワサと何かをした方が寧ろポートフォリオへマイナスを与えた。噂に流され、怯えて悲観に傾いたりするのが人情だが、いざ始まってしまえば冷静に事実を分析して元に戻るのが市場の癖なのかも知れない。

4. 北朝鮮の小型核搭載ミサイルが、実際にグアムや日本に着弾したら・・・

もし本当に核を搭載した北朝鮮のミサイルが、実際に米国領土や日本の陸地に着弾し、きのこ雲が上がったら、それは大パニックが起こるだろう。ただ恐らく、同時に北朝鮮という国も地球上から無くなるほどの報復を受けるのも事実で、完全にこの地政学リスクは幕を下ろす。どこでどのような被害が具体的に出るかは神のみぞ知るところだが、必ず破壊されたものを復興する動きがあり、それが市場にポジティブなパートを作るのも事実であろう。

グアムの近海に実際に数発のミサイルは飛ぶかもしれない。実に恐ろしい狂気だと思う。ただそれに小型の核弾頭が搭載されている可能性は、搭載出来るミサイルだとしても、可能性は極めて低いと思われる。何故なら、それが最後の北朝鮮のカードであり、実際に放たれたら、米軍の総攻撃が平壌を完膚なきまでに叩き潰すだろうから。

5. 今は8月のサマーバケーション・シーズン
例年この8月のこの時期は、外国人は殆ど交代でロングバケーションを取ってしまう。余程離れられない仕事を抱えていない限り、ディーリングルームには居なくなる。だから変にフラフラ動くかも知れない。しかし、地政学リスクの具現化に市場がどう反応するかは、ほぼ予見不可能だ。気持ちの良いものではないが、ここは黙って冷静な判断を続けるのが肝要かと思われる。