景気堅調で人手が不足だとしても、「デフレ脱却」は無理

今朝(7/31)の日経新聞朝刊一面の見出しはこうだ、「堅調景気の実相(上)人手不足 経済動かす」。本気でそう思っているのだろうか?

1. 景気の気の字は気分の気

昔からよく言う言葉だが、現在の景気状態はその人の気分によってだいぶ違って見えてくる。多分、その気分をパターン分けすると、最も影響力の高いファクターは年齢だ。すなわち、(1) 団塊世代前、(2) 団塊世代、(3) 団塊世代後の50代前後現役最終世代、(4) 30代後半から40代。そして(5) 新入社員から30代半ばなどに分類できる。なぜなら人口動態と、社会保険制度のミスマッチがあまりに極端で、下に行くほど、明るい将来を展望し辛いからだ。

2. 人口動態が逆三角形だから・・・・

本来、日本の社会保険制度の基本発想などを考えれば、(3)(4)(5)の順番にポジティブ、すなわち(3) 団塊世代後の50代前後現役最終世代、(4) 30代後半から40代、そして(5) 新入社員から30代半ばという順番に景気の気の字にポジティブなものを抱きつつ、それが(1) 団塊世代前、(2) 団塊世代という現役を終えた高齢者世代の余生を支えるというのがあるべき状態だ。だが、日本の社会保険制度が考えられた時代と今では人口動態が全く異なることは周知の事実。言うなれば、今の社会保険制度を設計した世代が一番恵まれ、それを支える世代は偏に割を食うという状態に変遷している。それが(3) 団塊世代後の50代前後現役最終世代、(4) 30代後半から40代、そして(5) 新入社員から30代半ばの気の字をポジティブにさせない最大の理由だ。

3. お金が最も回せるべき世代が(3)なのだが

年金の支給が65歳以降に先延べになったこともあり、65歳定年制度を導入している企業が増えてきているという大本営発表は、私もよく耳にする。しかし実際がどうかと言えば、私の知り合いに一番多い職業の銀行の同期(55歳)前後の人々の実態は全く違う。確かにそれを知っていて人生設計をしてきているお固い銀行員が多いこともあり、生活が破綻したりはしていないが、それまで専業主婦だった奥様達が、子供たちに手が掛からなくなったことも後押しして、パートを始めるなどの話もよく耳にする。それまで専業主婦の奥様だった人達がパートにだ。これは決して、理想的な現役最終局面の人生とは見て取れない。

4. 最も生活にお金の掛かる世代が(4)

この世代は仕事も充実し、給与も上昇局面にある一方で、子供の学費などの支出増加で最もお金が掛かり、また通常は一生に一度と言われる最大の投資である住宅購入とそれに伴う耐久消費財の購入で住宅ローン支出なども増加する世代。だが直ぐ上の(3)の世代を見ながら社会人として生きてきたせいか、前述した(3)の世代の現実を前に、景気回復!と政府やメディアに言われても、まだ思い切ってお金を使おうとはしない。この世代は就職氷河期を体験した層も含まれるため、兎に角、慎重な人が多い。若い頃から消費よりも貯蓄を唱え始めた世代でもある。

5. 親の世代から見ると、本当に手堅い世代(5)

新入行員でも、もう夏季賞与が出た筈なのだが、この若い世代のお財布の紐は一向に緩む気配を見せない。(3)の世代が初めての賞与を頭金にして憧れのスポーツカーなどを購入したライフステージでも、そんな意向は全くなく、貯金をした上で、手堅く遊ぶ。息子の友人達(付属中学・高校から私立大学に進学した仲間)の話を聞いてみても、豪放磊落、破天荒、などという単語とは全く縁がない感じ(学業生活は違ったが)。本来、この世代が所謂「独身貴族」であり、正に消費志向のリーダー的な役割を担うべきと思うのだが、ローンを組んで車を買うなどという発想は全く無さそうである。必要な時に、親の車やレンタカーを使えば良いという堅実志向。幸せの価値観が本当に違うようだ。

6. 人口動態の改善が理想、世代間所得移転が次の手か

社会保障制度の大変革が起こって、将来に不安を抱く必要が無くならない限り(つまり現実的にはあり得ない)、まずは世代間所得移転の促進が本当の意味での日本経済回復の原動力になると思う。それを原動力として安心して子供を作れる社会へと向かえば、自ずと出生率2.0回復も夢でなくなるだろうから。全現役世代が安心して可処分所得を増やして、または景気回復して増えた可処分所得を安心して消費に回せる状態が来なければ、どんなに金融をジャブジャブにしてみたところで、デフレは脱却出来たとしても、インフレは無理、ただただ無意味なバブルを作るだけだろう。

そのひとつの証左が、この10年位で日本でも利用者が増えたという、リゾートのタイムシェアだ。多くの場合、現役世代が自ら購入して利用しているわけではない、(1)や(2)の世代が購入している。そして子や孫たちを連れて旅行を楽しんでいる。それはそれでほほ笑ましい3世代の話なのだが、彼らは既に満額の年金を貰い、老人医療制度の恩恵を充分に受けている世代だ。そうした細かい実態を理解せずに、見た目の現象だけで景気を論じても、(3)の世代、(4)の世代、(5)の世代の景気の気の字は上をむかない。新聞の見出しのようには単純な構図にはなっていない。