東芝はもう間に合わないかも知れない

Wall Street Journalによれば、東芝の半導体メモリー事業の売却計画が膠着(こうちゃく)状態に陥る中、同社の再生に向けた最良の道として複数の債権者や関係者が法的整理を求めているという。

1. いくら何でも時間が掛かり過ぎている

東芝が決算をあるべきタイミングで発表出来なくなってから、もうどれだけ時間(何回目?)が経つのだろうか?名門企業であったあの東芝が、ここまで凋落した姿をさらすのを見るのは本当に辛い。日曜日の夜のサザエさんのメインスポンサーとして、日本の総合電機の中では、日立と東芝が常に一位二位を争う、日本の雄だったのだから。

2. 天災ではなく、人災(経営判断ミス)という認識はあるのか?

でも、もう事既に遅し、事態は最悪な結末へ向かって着実に歩みを進めているとしか見えてこない。でもどうして東芝は原子力発電のウェスティングハウスなど買収したのだろうか?契約書の隅々まで諸条件を専門の弁護士を入れて確認しなかっただろうか?と言っても、これも後の祭りでしかないが。でもきっと経営陣の中には「311のあと、東電が上手く処理していてくれれば、こんなに原発がコケることも無かった筈だ。これは一種の天災だ」ぐらいに思っている人もいるに違いない。いえ、でもこれは明らかに経営の判断ミスです。

3. スピード感の無さは甘えの構造か?

一番心配なのは、この処理全般に、会計の不正問題が発生した初期の段階から今日に至るまで、傍から見ていて全くスピード感を感じないことだ。東芝経営陣に、東芝社長に、先頭を切って走る会社のトップという責任感の下でのスピード感を感じない。どこか「取引銀行が助けてくれる」「東芝クラスの大企業が潰れるわけがない」といった奢りと、「そんなみっともない真似が出来るか?」といったプライドが経営陣の動きを鈍らせているように思えてならない。

4. ドッグイヤーの業界の中で他社は動いている

半導体はハイテク産業の要。すなわち、「インターネットの世界はドッグイヤーで進む」と言われる超ハイスピードの日進月歩の世界の要。今はまだ「半導体事業という虎の子を売ることで、現金を作って債務超過を免れられる」と思っているのだと思うが、本当に間に合うのだろうか?先頃、Samusungが大型の設備投資計画を発表した。恐らくこれと前後して、大量の半導体製造装置などの発注が東京エレクトロンや、アプライドマテリアルズや、或いはASMLなどに行われた筈である。事実、既に半導体製造装置メーカーのラインは逼迫しているのだから。

5. 多分未決済箱は満タンな筈

一方、売るの売らないのと議論が停滞して久しい東芝サイド。けんか相手がJVのWestern Digitalだから、恐らく次期設備投資や研究開発の話などは頓挫しているか、或いは何も決裁されていない状態で徒に時間だけが過ぎていっているだけだろう。そしていざ発注を掛けた時には、納期が○○か月待ちとなっているかも知れない。それではもう遅い。

6. 半導体ビジネスは難しい、価格下落と製造コスト引下げの猛レース

半導体の価格は基本的に時間経過と共に値下がりする。他社も参入して製品が普及することと、製造に慣れて歩留まり率が向上してくることで値下げをするメーカーが出てくること、そして次の世代のサイクルが見えてくる中で、半導体は謂わばコモディティ化して価格は必ず下落する。この価格下落カーブのちょっと下に常に自社の製造コストを保てるように努力し、他社よりちょっと多目に利潤を取れる水準を、早目の減価償却や、生産歩留まり率の向上などによって他社より有利にゲームを展開する。そしてある程度の段階まで来たら、また次の世代向けの設備投資を行って、常に他社に先行していく必要がある。それが出来ない限り、製造コストが常に市場価格を上回ることになり赤字事業化、そして閉鎖・撤退へと突き進む。一度先行他社の背中を追い駆けるようになると、今までの例では、だいたい半導体事業は破綻している。

7. 半導体事業売却完了までに残された時間は本当にあるのか?

超悲観的な見方と笑われるかも知れない。しかし、半導体事業売却の話が出てから、そしてWestern Digitalとの仲違いが公になってから、既に久しい。これから正式に売却先が決まったとして、一気に巻き返しを掛けたとして、この半導体事業はまだ勝ち組に居るのだろうか?国策紛いの買取をしたところで、今度はそこで話が行き詰まるかも知れない。同じようなビジネスモデルのジャパンディスプレイの現状がそれをよく表していると思う。東芝社長のすべき決断は、かなり重いものとならざるを得ないのかも知れない。