【連載5】新入行員諸君!リスク商品でござる「リスク商品の基本その4」

ここまでリスク商品の基本として話したことは

(1) リスクとリターンはトレードオフの関係、手品は無い
(2) リスク商品には必ずコスト(金融機関の収益)が掛かっている
(3) オプションは商品組成に便利なツール、ただ手数料がより分かり難い

といったようなことを徒然なるままに語ってきたが、お分かりいただけただろうか?
ここでまとめの意味で整理をしてみる。「リスクとリターンはトレードオフの関係」という意味を端的に表している英語があり、商品ラインの外人がよく使う表現が「risk-reward」という言い方なのでご紹介しておこう。「risk-return」とは言わず「reward」という単語をよく使う。「reward(リウォード)」とは「~に報いる、褒美[報酬]を与える」という意味なので、「risk-reward」と言えば、「リスクを取ったが故の報い、褒美」ということになるのだが、トレードオフなどと言う小難しい単語を入れずとも端的にその関係を表していると言える。

少し話は脱線する。よく聞く話として「外資系はあくどくガッポリ手数料を取るだけ取るでしょう?」というのがあるが、実は全くその逆、日系の方が取れるところでとことん抜こうとする傾向にある。「どうせ客には見えていないのだから」という感じかも知れない。新商品のディスカッションでよく出た話が「そんなに手数料をとっても大丈夫なのか?」「それではrisk-rewardがバランスしないのではないか?」「本当に日本ではそんな手数料ファット(デブ)な商品が売れるのか?」という質問。日本の業界状況など日本固有の状況を説明するのにいつもかなり苦労した。事実、調べてみると欧米のみならず、アジアや中東などを含めて、同一商品ならば手数料は日本が一番高い。だからこそ、金融庁森長官は「フィディーシュアリー・デューティー」という事を、殊更に今強調されるのかも知れない。

手数料が必ず掛かっているのが金融商品である。故に、「risk-reward」は商品スキーム自体では均衡していたとしても、実際には「risk-(reward-手数料)」であるために、実は手数料分だけは最低限均衡していないことに販売する際は充分留意して頂きたい。この超低金利の時代に、もし仮に期待リターン(reward-手数料)が二桁を示すような商品があるとすれば、それはまやかしか、相当な内在リスクのある商品だと言っていい。勿論、結果オーライとなることはあるが、3勝1敗でトータル・マイナスというのも良くある話だ。

ただ、始めから手数料がきちんと明示されている場合は、当然お客様にも説明出来るし、お客様もご納得(の筈)の上での取引なので、表面上は何があっても大きな問題にはなり難い。トラブルが無いとは言わないが、契約書や目論見書に書いてある話なので、単に言った言わないの議論とはならない。ただ、こういうトラブルの終息面談の為に借り出される時は、商品サイドの責任者としては金融マンとして最も自己嫌悪に陥る時でもある。相手が強欲なだけなら良いのだが・・・。契約書や目論見書の該当箇所を示しながら強弁しないとならない時は、本当に辛い。

一方、オプション内在の商品の場合は、見えない手数料で「risk-reward」の関係が歪んでいるので、これは販売時に営業サイドがお客様との適合性の原則に鑑みて、慎重に対処して貰いたい。

考えてみて頂きたい。新入行員の皆さんにとってはお爺様かお婆様にあたる世代の人に簡単にオプションを説明出来ますか?スマホの使い方ひとつについても、テレビの録画予約の仕方ひとつについても、孫の貴方が手取り足取り丁寧に何度も説明して、それでも「またかいな」と言いたくなるような世代の人達に、オプションを上手く説明できますか?もっと言えば、カタカナやアルファベット3文字で言い表すような新手の金融商品を説明して、ご理解頂けますか?

それを敢えて「やれ」という組織や上司もいるかも知れない。もしそうならば、自分のお爺様やお婆様の顔を思い出して、根気強く丁寧に対応して頂きたい。それが強いてはご自身の身を守ることにも繋がるのだから。

ということで、次回以降は「お客様を知る」という点について、また何回か話を綴ってみたい。